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友達大好きフレンダちゃん(だいたいリィズ)

人質をとってまで、婚約破棄したかったんですか?残念です。やり返させてもらいますね

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2021/04/02



 訪れたその社交会には、多くの人がいた。


 けれど、参加者達はおしゃべりに興じるでも、美味しい料理に舌鼓をうつでもない。


 集まった大勢の人達は、とある光景を見つめている。


 大勢の貴族令嬢や紳士が注目しているのは私達。


 視線の中心にいる私は、向かい合っている男性を睨みつけていた。


「何だ。何か文句でもあるのか?」

「いいえ、別に」


 対面に立つ男性は、私の婚約者だ。


 丁寧に整えられた髪に、上質な服、宝石を使った胸元のブローチは、大貴族である彼の身分を示している。


 私にとって彼は、自慢の婚約者、だった。


 今までは。


 けれど、もうそうではなくなった。過去系なのだ。


 私と彼との間に結ばれた婚約を、白紙に戻したから。


 彼は、心の底から私をあざ笑っているかのような表情を浮かべる。


 口元に弧を描き、見下すような視線をおまけして。


「フレンダは君にイジメられていると言った。証拠も揃っている。これでお前は破滅だな」


 彼はとある女性の名前を口に出した。


 フレンダ。

 その人物が、彼にとっての次の女なのだろう。


 私との婚約を解消してまで、一緒になりたいと思った女。


 どうそそのかされたのか知らないが、愛のために誰かとの約束をやぶっていいという事にはならない。


 ましてや、人質をとって婚約破棄を了承させるなど。






 彼は、私の妹を誘拐し、どこかへ軟禁している。


 それで、婚約破棄に了承するという条件で、妹を解放してやると言ってきていた。


 断れないと分かっているのだろう。

 彼は余裕の態度を崩さない。


「お前との結婚の約束はなかった事にする。いいな?」


 私は唇をかみながら、相手からの言葉に無言で頷いた。


 口を開いたら、「この卑怯者!」と相手を罵倒してしまいそうだったからだ。


 しかし、これで妹は解放してもらえるはず。


 私の事を「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と呼んで、後ろからついてきた可愛い妹。


「私の姉様はしっかり者の自慢の家族なんです」と言って、ふわりと笑う家族思いの妹。


「姉様、私気になる人がいるんです。こんな事、姉様にしか相談できなくて」とはにかみ、いつでも私を頼ってくれる妹。


 婚約破棄に了承すれば、大切な妹が、もう怖い思いをする事はないのだ。


 けれど、ほっとしたのもつかの間。


 周りにいる人達に聞こえないようにか、彼が顔をよせてきた。


 耳元でささやかれるのは、悪辣な企み。


「ああ、そうそう。君の妹を閉じ込めていた部屋からは解放するけど、敷地から解放するとは言ってないから」

「は?」


 私は思わず間抜けな声で問いかえしていた。


 約束が違う。


 そう怒鳴り返そうとしたのをかろうじてこらえた。


「君に傷つけられたフレンダは、心を病んでしまったようだ。慰謝料を払うのが当然だろう? それが払われるまでは解放できない」


 そんな事、やってもない事だというのに。


 私はフレンダなる者の存在すら知らないのだから、嫌がらせをしたり悪口を言う事なんでできやしない。


 それなのになぜ、そんなお金を払わなければならないのか。


 かみしめた唇から血が零れ落ちそうになったが、周りの人間に悟られてはならない。


 溢れてやまない血を、そのまま飲み下した。


 これが私の血ではなく、彼の血だったらどれほど良かったことか。


 目の前の強欲男の喉笛を食いちぎる光景を想像して、沸き立つ怒りを必死にこらえる。


 このままずっと、彼に搾取され続けなければいけないのか。


 憤怒の感情に胸を焦げ付かせていると、その場に顔見知りの騎士がやってきた。


 ザックスだ。


 小さい頃からの知り合いで、何でも相談できる男性。


 彼は私に微笑んで、ハンカチを手渡してきた。


「あなたの可憐な唇が傷ついたら悲しむ男がいるのですよ。どうかそれ以上はおやめください」

「ありがとう」


 彼の様子を見て、私は悟った。

 どうやら、あらかじめ頼んでいた事を無事にこなしてくれたようだ。


 実は、今日この場に来る前に、騎士である彼に妹の事をうちあけていたのだ。

 それで、動いてくれたのだろう。


 彼の後を追うように、他の騎士もその場にやってくる。







 俺は失敗したのか?


 目の前には大勢の騎士。


 俺は取り囲まれていた。


 あの女が、フレンダがこの話を持ちかけてきたときは、絶対成功すると思ったのに。


 この元婚約者の女に、騎士の知り合いがいるなんて聞いてないぞ。


 フレンダの言う通りにすれば、多額のお金が入るし、つまらない女と一緒になる事もない、そう思っていたのに。


 騎士の一人が俺に話しかけてきた。


「貴様には誘拐・監禁の容疑がかかっている。詳しい話を聞かせてもらおうか」

「くっ、離せっ、誰にそんな口を聞いているっ!」


 俺はすぐにその場から逃げようとしたが、騎士達に取り押さえられてしまった。


 床に押さえつけられて、屈辱的な姿勢をとらされる。


 視線をあげると、そこに元婚約者の女がいた。


「人質をとってまで、婚約破棄したかったんですか?残念です。やり返させてもらいますね」


 彼女は告げる。


「とりあえず何らかの罰が下るのは確実でしょうけれどまず、私の、いいえ妹の心を傷つけた分の慰謝料をぶんどらせていただきますわ」


 そして、胸元のブローチをむしり取っていった。


 俺は彼女にとびかかろうとしたが、騎士に取り押さえられていたので、動く事がままならない。


 その後、牢獄に入れられたが、俺をかばってくれる奴は誰一人もいなかった。


 フレンダという女は、綺麗さっぱり存在が消えていたらしい。



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