64 最終話
ネイルのおこした魔物の凶暴化は、スノウ領内で収めることが出来た。ダークとネイルは、欲にまみれて、森を犯した。
ワインダー男爵も私利私欲で、黒のポーションを作ろうとして森が枯れた。守り竜を玩具のように欲しがったから、子竜が攫われ、森を失うところだった。人は、腹いせに魔物を殺して森を穢した。
人は誰でも幸せになりたい。良い暮らしがしたい。美味しいものが食べたい。素敵な家に住みたい。きれいな服を着たい。もっと知識を得たい。偉くなりたい・・・人の欲は数えきれないほどある。だけど誰もが道を違える訳ではない。
森に捨てられたララを森守りが母に託してくれた。5歳のあの日、ララとがわたしが入れ替わった。そして母に出会えた。
わたしががこの世界に、なぜ来たのかわからない。気まぐれに違う世界に落とされた者、落ち人。
母に会うためかもしれない。ララのさだめを引き継ぐためなのかもしれない。母も師匠も落ち人だった。神の気まぐれかもしれない。きっと魔力が多かったり、前世の知識が残った落ち人への特典。私の特典は母に出会えたこと。
魔力がある分、他の人より長生きだろう。ポポやメメに比べれば短い人生だ。森の恵みに生かされ、森の仲間に見守られながら一生を終えることになる。だからこそ、私が生きている間は、わたしが森を守る手伝いをしていこう。
スノウの母のもとから、アイザックに帰ってきたララは、休む間もなくギルドのポーション作りに
追われた。アイザック元領主夫妻に呼び出された。大分心配をかけた。今回の事を報告した。よく無事で帰ってきてくれたとフィアット様に泣きつかれた。スノウ領主より報告がいっていたらしい。ここにもララを温かく迎えてくれる人達がいた。
領主マクシムから攫われた子竜の奪還のララの功績が伝わり、感謝の書状と報奨金が贈られた。大司教ベネクト様からは、遊びにおいでとメメ経由でお誘いがあった。あれ以来メメは、ベネクト様の所にも遊びに出かけているようだ。本当に気まぐれな猫のメメだ。
守り竜には、お菓子と果物とポーションをもって、ララはお礼に向かった。守り竜の力が無ければ、今回の事は長引いただろう。スノウ領主からもマクシム領主に感謝の書状が届いている。
フランク国の四方の大森林を守る領主は、アルメーラ様の愛し子が、今世に生まれたことを知った。森に生かされ森に守られる四方の領主は、愛し子が穏やかに長く今世に居ることを願った。
領主からの報告で、国王も愛し子の存在を知ることになった。王家の囲い込みに対し、大神殿の大司教ベネクト様は、苦言を呈した。愛し子の本意でないことを強いれば、以前のようにアルメーラ様を含む多くの神々の怒りを買うことになると伝えた。
黒のポーションの時の神の怒りは、王家にも落ちた。王家は、その時の恐ろしさを忘れてはいない。愛し子に何もしないことがフランク国の平穏だと理解した。
ララは、自分のあずかり知らぬところで、色々な事が起きていた。周りが解決してくれていたことに気が付いていない。
それより、冒険者ギルドのサマンサさんとポーション担当のピーターソンさんの結婚話。あんなにララにアプローチしていたのに 変わり身の早さに驚いていた。どうも、ピーターソンのララへのアプローチが上手くいかず、落ち込む彼の相談相手にサマンサさんがなっていた。サマンサさんは、ララの防波堤になっているつもりだった。
サマンサさんの包容力に彼は気が付き、愛が芽生えたらしい。サマンサさんは、独身を謳歌していたので、気にも留めていなかった。サマンサさんは、愚痴を聞いていただけだった。気が付いたらピーターソンさんの押しの一手に絡めとられてしまったようだ。今では、サマンサさんも満更ではない。
サマンサさんは、この街に来て最初にお世話になった人だった。ことあるごとにララを応援してくれていた。サマンサさんには、幸せになってほしいと願って、ベガと相談しながらウエディングドレスを作った。ベガの作ったシルクの薄紫の布は、サマンサさんの亡くなったお母様の瞳と同じ。彼女が一番好きな色だった。出来上がったドレスを見て、とても喜んでくれた。
ララが魔力枯渇から助けた公爵家のベルは、飛び級で学園を卒業した。スミス先生の紹介状を持って、ララのもとに押しかけ弟子となるために突撃してきた。公爵家当主は、あの時死んでいたと思えば、健康で生き生きとした娘を貴族の駒とする事を良しとしなかった。
自分を助けた薬師のようになりたいと意気込んでいる娘の後押しを進んでしてきていた。
最初は、妖精や魔物、精霊の多いい我が家にベルを迎えるのをララは、渋っていた。
「ララ、ベルは僕たちが見えるみたいだよ。全然怖がらないし」
メメが言い出した。そういえば、治療の時メメを怖がりもしないどころか、抱きしめようとしていた。
ちゃっかり者だが、素直で真面目なベルは、セバスにメメ、ポポを味方にして、お店のリゼルさんと仲良しになって、味方を増やしていった。まだ、弟子を迎えるほどではないとララは断った。
「店番に雇ってください」
必死にすがるベルがかわいそうと、メメやポポ、セバス、女神・・・にララが責められた。とうとう、ともに薬師として学ぶ仲間として暮らすことにした。
公爵家からは、受け入れに感謝するとわざわざ当主自ら挨拶にみえた。豪華な馬車で来たから、街中大騒ぎになって、アイザック領主が対応することになってしまった。
ピーターソンさんとサマンサさんの結婚式は、すがすがしい青空のもと街の教会で執り行われた。薄紫のドレスは、サマンサさんを優しく包む。涙を浮かべる花嫁をピーターソンさんがその上から抱きしめていた。いつもは、落ち着きのない彼だが、なかなかの紳士ぶりだった。多くの冒険者に慕われている二人に、大熊の肉が贈られたのには驚いた。
ララは、ベルとジュモーとモッジで、スポンジケーキにキイチゴの実と生クリームで飾り付けをしたケーキを作った。さらに、妖精の華と言われる鈴の形をした白い小花でブーケを作って贈った。
これを見た街の女の子は、初めて見る花嫁のブーケとウエディングケーキにあこがれを抱いた。彼女たちの結婚の頃には、街では定番になっていった。
ララは、夢を見た。5歳の時別れた幼いララが、桜の花の咲く街で優しい両親に手を引かれ赤いランドルセルを背負って歩いていた。小学校の入学式の帰りだろうか、淡いピンクのワンピースに紺色のジャケットがとても可愛い。
彼女が急に両親の手をほどいて、笑顔で空に向かって手を振った。わたしが見えたのかしら。わたしは彼女にを振りかえした。
「ララ、今日はお寝坊だね。みんな待ってるよ」
ポポの呼び声で目を覚ます。メメが、お布団の中でぐずぐずしている。今見た夢は、奇跡の様な出会いと別れをした友の幸せな姿だった。それぞれが、生まれた世界から、新しい世界へ旅立ち新しい命を得て生きていく。
ララの周りは、少しづつ変わってもメメもポポも変わることなくララの側に居てくれる。これからもララは、森を見守っていくだろう。そして、一生懸命生きていいく。
背伸びをして、みんなの待つ食卓にメメを抱き上げ向かう。新しい一日が始まる。
お付き合いいたき、ありがとうございます。
誤字脱字報告、感謝しています。
視点の変更が頻回で読みずらかったと思います。
修正できない箇所も多く申し訳ありません。
皆様のご指導に感謝します。
2024年5月




