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ララは、森にネイルを連れ出した。魔物に荒らされた森、あちこちに踏みつぶされた魔物の死骸をネイルに見せた。驚きと恐怖の混じった目を見せるもすぐに 目をそらす。
「魔物だって、凶暴化しなかったらこんな討伐されなくて済んだの。そのために多くの冒険者や騎士が死傷したの。貴女は、このすべての事に責任を取らなければならないの。
あなたの作ったのは、毒薬なの‼わかってる⁉貴方は薬師になる前に人として間違っている。ダークは、甘い言葉であなたを誘った。でも誘いに乗るのも乗らないのもあなた自身の責任なの。
それにマソを集める薬が危険なこと、わからなかった?分かっていたよね。領主館に一緒に行って貰うわよ」
「何で 私は、・・・」
「私は、悪くないと言うの?あなたは、犯罪者なの。逃げられない。なぜ悪かったかわかるまで考える事ね。あなたを助けることはできない。王都の両親がこっちに向かっているけど貴女を助けるためではないわよ。あなたという娘を止められなかった責を負うために来るの。それだけのことをしたの」
「うぅぅ・・・なぜ・・・どうして あなたばかり」
「まだ言っているの! ダリアもジークもコールも私も努力をして、頑張って、勉強してきているの。貴女には、両親がいて、食べる苦労もなく、贅沢に暮らせて、薬師業を教えてくれる親もいて、何が不満なの?」
「誰も私を・・・」
「あなたは、誰かのために何になりたかったの?わたしは、薬師になりたいから、学院に行ったの。誰かのためではない。自分のため。自分のためだから頑張れたの。あなたは、自分のために何をした?何もしていないよね。誰かのための前に、自分のために努力しなかったら、誰かの役に立たない。
私たちは、まだ若いの。まだまだ勉強する必要があるのに、すべて投げ出してわけのわからない毒薬作って、多くの人や森に迷惑かけた。それでも私は悪くないと言えるの?よく考えて。人をうらやむ前にすることがあるでしょ」
ネイルは、スノウに来た両親に連れられ、領主館に出頭した。すぐさま取り調べが行われた。ネイルは、両親のやつれた様子に驚き、自分が牢に囚われて初めて罪人であることを実感した。
寒く硬い石の牢は暗くじめじめしている。暖かい布団はない。おいしいパンもない。風呂にも入れない。当たり前に享受していたものすべてを彼女は失った。
「俺は、悪くない。あの女が、1級の錬金薬師だと偉そうに言ったんだ。魔物に効く薬が作れると言うから。魔物を増やしてもらおうと思っただけだ。あの女が、毒薬を作ったんだ。俺じゃない。俺は失敗した物を森に捨てただけだ。
魔物を消す薬が、できていれば俺は、英雄になれたのに」
忌々しそうに 怒鳴りつける。
「お前の好い人ではなかったのか」
「馬鹿言うな。あんな小娘。あいつの名前さえ知らないのに。あいつが今回の魔物の凶暴化の主犯だ。かかわりたくないよ」
上の階から聞こえた声は、確かにダークの声だった。ここまで来てもダークを信じることでネイルは自分を保っていた。ネイルの入っている牢の前を通るときダークはネイルを一瞥した。ダークはネイルに罪を押し付けた。
「お前のせいだからな。俺に責任押し付けるなよ。錬金薬師様」
ララは、森とカエデ街や農地の回復を待って スノウ領主を訪問した。事前に書類で報告してあったが、ぜひララの口から聞きたいと要請があった。守り竜の事もあるので行くしかなかった。アイザックの領主館と違って、堅牢な石造りの砦の様な建物だった。
迎えてくれた騎士に案内された先には、スノウ領主ノルダインが出迎えてくれた。さすがに自ら魔物討伐に出向くだけあって 背の高くがっちりとした騎士様だった。ソファーに座るよう勧められた
「ララさん、覚えているかな?アイザックのお店に妻に頼まれて行ったことがあるんだ」
「覚えています。あの時は商品を購入していただきありがとうございます」
「魔物から街を守ってくれたこと感謝する」
「すべては、森を守ろうとする多くの人と教会、守り竜、森守りの妖精、精霊の協力。そしてアルメーラ様の導きがあったおかげです」
スノウ領主は、ララの不思議な力のおかげで、森も街もそしてスノウ領も守れたことに深く感謝した。ララの考えや行動を伝達してくれたのは、ララの母ソフィーであった。聖水を集めてくれた大神殿の大司教ベネクト。ララが女神の愛し子であることを知った。大司教ベネクトからララの指示を受け入れるようお言葉を貰っていた。
一時は、ララを自分の娘ではないかと思ったことがあった。ララは、この国を見守るアルメーラ様の愛し子であった。ララを失う原因となった叔父の隠し子が起こした事件は、王都にも報告がいった。もちろん、ララが女神の愛し子である事は、伏せられた。
魔物の成り立ちはまだ解明されてはいない。マソは、森にも人にもなくてはならない。魔物がいることで得られるものも多い。人の悪意は、魔物より恐ろしい。自分は、ララの生まれ故郷と領民を守るために領主として頑張っていこうと思っている。
抱きしめる事の出来ない娘をいとおしく思う。これが落ち着いたら、亡き妻マリアンヌの墓に報告に行こう。
「ララ、毒薬を街の近くの森に撒いたから、魔物の凶暴化がすぐにわかって良かったよな」
「メメの言いたいことはわかるけど、迷惑な話だよね。守り竜が手伝ってくれなかったら数か月はかかった。森の回復は、何十年もかかったと思うよ」
「ポポ達が協力しても?」
「森があっての妖精や精霊だからね。きっと アルメーラ様が助けてくれたんだよ」
「そうよね メメやポポ達が力貸してくれても今回の聖なる癒しは、多くの魔力を使ったと思うのに死ななかったものね」
「死にそうだった?」
「うん、森で倒れた時誰かに抱き留められた。魔力を貰ったの。ポポやメメでは、ないよね」
「俺たちではないね。まあ、ララは特別なんだよ」
「なんかいい加減ね。どうでもいいか?そろそろアイザックに戻ろうか」
ララは、母と共に森の家に転移した。マーガレット様に会うために。マーガレット様のお墓の前で母は、静かに私に語り掛けた。
「ララ、あなたはスノウ領主様の亡くなったと思われてる娘かもしれない。ノルダイン様が王都から戻られた時お店にいらしたの。アイザックでララにあった領主様は、亡くなったマリアンヌ様にそっくりなあなたに会って、とても驚いていたわ。調べてみれば、ララは森で拾われた子供。もしかしたら 娘が生きているのではないかと思ったそうよ。
でもね、私は領主様に『ララは、私の娘です』と言ったの。あなたが森の家に来た時体が弱く、今にも女神のもとに召されるかと思った。とても心配していたの。こんなに可愛い子供を森に置き去りにすることが、理解できなかった。
泣きながら私の手を握るあなたは、生きたいと言っているようだった。私の事は、師匠から聞いているね?わたしには、失われた記憶があるの。きっと大切なことが含まれていたと思う。師匠は、私を大切にしてくれた。でもね、どんな記憶があるのか怖かったの。だからすべてに目をつぶって、静かに生きてきた。
心が満たされることが無かったわ。ララに会えた時ぽっかり空いた心の穴に あなたがすっぽり入ってくれたの。あなたは、私の大切な娘になった。あなたに会った瞬間、愛しいと思ったわ。生死をさまよった5歳を乗り越えたあなたは、目を見張るほど元気になっていった。
魔法があると知って夢中になり、薬師になると言って師匠のところに向かった。一人の薬師となって人を助け、この国の森を守る愛し子になるなんて、驚いているのよ」
「わたしは、お母さんに会うためにここに来たんだと思う。お母さんがいなかったら生きてはいなかった。お母さんの風魔法に目を見張ったわ。わたしも魔法を使いたい。少しでも風が起こせたとき、とてもうれしかった。魔法使いになるのが夢だった。
お母さんの作る薬で元気になる人を見て、薬師を目指したの。お母さんの後姿を見て育ったの。私の生きる目標になった。私は、多くの仲間に出会えて幸せです。森の仲間が幸せであるために、わたしが出来る事をこれからも頑張ります」
「私は、ララの母になって、初めてこの世界で生きていこうと思えたの」
母に抱かれたスマホの写真をララは思い出した。私たちは、この世界に生まれる前から親子だった。母とゆっくりしたのち、ララは皆と一緒にアイザックに戻った。
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