61 スノウ領の魔物の凶暴化
納品を兼ねて、薬剤ギルドを訪問した。
「ララ様できましたら、ポーションを多めに納品していただけませんか」
「冒険者ギルドの分もありますが、この倍は、納品できます」
「納品していただけるだけで助かります。北の辺境で、魔物が増加していてポーションが足りないのです」
「えっ,北の辺境。ノウス領ですか」
「よく知っていますね。もともと魔物が多い所なんです。今回は、魔物が強くなり数も増えていて、ポーションが幾らあっても足りない様です」
「ポポ、北の森で、なにか変わったことなかった?」
「魔物が、増えている。よくある事らしいよ」
「ポーションが、足りないみたいなの 母が、心配だわ」
母は、大丈夫だろうか?そういえば、最近手紙を書いていなかった。
「ララ、心配なら行ってみようか。いつでも転移できるよ」
「ポポ、ノウスの森に転移して。なんか胸騒ぎがするの」
「いいけど 薬草やポーション、傷薬、食料準備していった方がいいね」
それから夜も寝ずにポーションや傷薬、解毒薬を作った。家のみんなが、手伝ってくれた。ギルド納品と自分の分を作る。不在中の手配をセバスに頼んで、ポポとメメとゼリーとで、ノウスの森の母の森の家に転移した。
森の家とマーガレット様たちのお墓のある庭野周辺は、かろうじて結界魔法で守られていた。その他の木々は、踏み倒され 緑豊かなもとの姿は、何処にもなかった。あちこちに魔物の姿があった。その魔物の下には、食い散らされた魔物がいた。
「お母さん・・・・」
すぐに母のところに転移した。街は、静かで人が出歩いていない。母の店は、閉まっている。呼び鈴鳴らしても母は、出てこない。ギルドに行こうとした時、前方から母が走ってきた。
「ララ、なんで来たの」
疲れが見える母は、そう言いながら私を抱きしめた。店に入ってから、街や森のことを話してくれた。
3ヶ月前頃から少しずつ森が騒がしくなった。最初は、冒険者が森がおかしいと騒ぎ出す。怪我人が増えた。見る間に 魔物が増えたことでスノウ領主が、討伐に出た。芳しくない。
魔物が普段より強くなっている。死傷者が多く大騒ぎになっている。森に調査隊を送っている。まだ結果がでない。このままなら街が、魔物に飲まれる。領主より街を一旦離れるようにとお触れが出た。そのせいで街が閑散としている。
「ララ、すぐに帰りなさい」
ララは、東、西、南の森の出来事を母に話した。北にも何か魔物が活性化する訳があるはず。ポポやメメがいるので、無理せずに 調べさせて欲しいと説得した。母は、冒険者ギルドにポーションを卸している。薬草が底をついたところだった。森の家に行こうと戻ってきたところだった。森の家の周りに薬草が無いことを話した。ララは、調剤室の倉庫に持ち込んだ薬草を収めた。
「アイザックのお店の子たちが、手分けして森から薬草集めてくれる。いくらでも用意できるから安心して使って。ポーション以外にも傷薬に保存食も用意した。お母さんが様子見ながら納品して」
「ララ、あなたは立派な薬師になったのね。ありがとう。これらは使わせていただくわ。無理しないで。ここも森の家も自由に使って」
母は、休むことなく調剤を始めた。
「ポポ、メメ、森の家に戻ろう。街より森のほうが情報が集まると思うの」
「ララ、今回はこの街だけでなくいずれは、スノウ領、そして国まで揺るがすことになるかもしれない。早く森に戻ろう」
ララは森の家の周りを、ポポは新緑の森全体を、メメは妖精や動物から情報を集めた。ララがいるだけで、魔物は、森の家から少しずつ離れていった。魔物道を見つけた。
「ララ、この魔物道の奥に人が倒れている。死んでいるかもしれない」
「メメ、転移できる?家に運ぼう。このままでは、魔物に踏み殺される」
転移先にうつ伏せに倒れた人がいた。メメと共に森の家に転移して、ベッドに寝かせる。浅いながらも息は、していた。泥だらけの体にクリーンを掛けた。そこには行方不明のネイルがいた。
「ララ、1か月前頃から少しずつ魔物が増えてきた。魔物の中に知能を持つものが生まれた。知能を持つものが、格下を従えて、森を荒らした。まだ森の中で住んでいる。深緑の森を背にしたカエデ街があぶない」
「ごめんなさい。こんなことになるなんて思わなかった」
ポポと話している最中に突然、ネイルが叫んだ。
「何か知っているの?話して!」
「わたしが…‥うぅ・・」
「泣いている暇はない!何をしたの!」
ララはネイルの頬を殴った。ネイルは目を丸くして驚いていた。
「なにしたの!王都からスノウに何しに来たの‼」
ネイルは、泣きながらララに問われながら話をした。もう一度学園に入っても 薬師の試験に受からず、研修も前回同様上手くいかなかった。父親に無理に薬師にならなくて良いと言われた。誰の忠告も聞くことが出来なかった。
そんな時、ネイルの腕を高く買ってくれる人が現れた。研究施設と薬草を準備できるので、マソの薬を作ってもらえないかと相談された。落ち込んでいたネイルを励ましてくれた。
父も、学園も、君を理解できないだ。ネイルは、優秀だと言ってくれた。何度も会ううちにネイルは、彼に恋をした。彼の役に立ちたい。私を理解できるのは、彼しかいないと思ったら王都を飛び出していた。
彼の名は、ダークといって、スノウの領主の息子で、魔物を減らすためにマソを集める薬が作りたいと言われた。カエデ街の隣のグリン街に家も用意してくれた。この薬ができれば、彼が領主になっても魔物討伐に出なくて良くなり、君と穏やかな生活が送れると言われた。ネイルが領主夫人になれると思った。
ダークの欲しい薬は、マソを集める。魔力の少ないネイルでは、薬は作れなかった。薬を作る過程で、マソが溜まる水を多量に作ってしまった。この水を森に撒けば、森の木々が水を吸って、木々自体にマソが溜まる。森の空気中にマソは、少なくなる。空気中のマソが減れば魔物が減る。ダークの理想どおりだと思った。
ダークは、ネイルの作った水を薬と思い森に撒いた。
「ネイル、素晴らしい水薬だよ。もっと沢山作ってくれないかい」
そう言ってネイルを抱きしめてくれた。
しかし、ネイルは二度と同じ水を作ることが出来なかった。森に異変が起きた。マソを多量に含んだ植物を食べた小動物をさらに大きな動物が食べて、それを魔物が食べる。本来の食物連鎖の中にマソが加えられたことで、魔物が増えさらに格上の魔物を生み出した。
森全体のマソが、植物に集められた。マソを含む農地からマソが消えていく。マソのなくなった農地は、作物が育たなくなり荒れ地となる。森さえ魔物に踏みつけられ、木々が倒され森でなくなっていった。
ダークは、ネイルの作った水薬が、魔物を凶暴化させたことに喜んだ。次は、魔物からマソを取り除くことで、魔物が弱体化すること計画していた。これで自分は、英雄になれると思っていた。
ダークは、今のスノウ前領主の弟の愛人の子供だった。父から本来は自分が領主になるはずなのに、粗暴な兄が乗っ取った。お前こそ次の領主になれる器だと いつも褒めてくれた。父は、謀反を起して死刑になった。ダークはすぐに逃げ出した。ろくな学のないダークは、ちゃんとした仕事に就けなかった。
父のおかげでそれなりに豊かに暮らしていたダークには、今の生活はつら過ぎた。坂道を転がるように悪い道に手を出していった。
ダークは、父に似て優し気な顔立ちで 女をだますのに長けていた。そんな暮らしをしているとき、酒場で話を聞いた。
「スノウ領主は、魔物にひるむことなく立ち向かう英雄のようだ」
「北の辺境は、魔物を制すれば領主になれる」
「魔物はどうして魔物になるか、それがわかれば俺も領主になれる」
「魔物はマソを吸収した動物が、狂暴化してなるの。そんなこともわからないの」
ダークは酔っぱらっている冒険者の騒ぎを耳にした。魔物を増やしてそれを俺がやっつければ俺が領主だ。酒場には、珍しい女がしたり顔ではなしている。この時この女が自分を導く女神にみえた。
「ねえ、君すごいね!魔物が作れる?逆に魔物からマソを取ったら普通の動物になるの?」
「理論的にはできるけど、難しいわよ。腕のいい薬師か錬金術師が必要ね」
「君は、薬師?」
「そうよ。学園卒業して王都で有名な薬屋の錬金薬師よ」
少し褒めたら女は色々話し始めた。
「すごいね!こんなにきれいなのに頭もいいなんて。酒場に居てはいけないよ」
「なかなか理解されないの。女だからって仕事させてもらえないの」
「僕なら君をそんなとこに置かないよ。僕の辺境に来てくれないかい。辺境には、優秀な薬師は少ない。いずれ領主になる僕に付いて来てほしい」
ネイルにとってもダークは、女神の導きだと思った。
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