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わたしは声のする方に向かった。店の中の母を見つける。母は、いつもと変わらない。
「母様、誰かいた?お店にいたのね。お客様?」
「そうなの急なお客様。今夜仕事が終わったら、ララにお話ししようね?それでいいかな?」
優しい笑顔で、語りかける母にわたしはうなずいた。母の決意を感じた。
「ララも話したいことがある。夕飯の後でね」
私の中の小さなわだかまりも母様に話そうと思う。夕方お店を閉め、シチューとパンを食べた。はちみつ入りのミルクと紅茶を前にして母様は話を始めた。
「ララは私の娘。これだけは変わらないからね。7歳になったから教会に生誕の儀を、受けに行くことになる。生誕の儀はね。あなたが7歳になれたことを神に感謝を伝えることと、神からの贈り物を受け取るための儀式なの。
ララは赤ちゃんの時私のもとに神様が届けてくれたの。ララとは血はつながっていなくても私の娘には変わりないからね。教会で知る前に、私から伝えたかった」
母は目を伏せ涙が一筋流れていた。私は声が震えた。
「うん、知っていた。私ね、5歳の時ララに花冠もらったの。母様に「届けて」と言われた。届けに来たら母様泣いていたの。母様の手を握ったら、ララの中に入ってしまった。母様の事覚えていた。病気なことも覚えていた。よくわからないうちにララになっていた。前の私が誰なのか分からない。気持ち悪いよね。ごめんなさい」
「5歳のあの高熱のときララが生まれ変わったの。あなたはララ。私の娘なの」
母様は私の手を取り暖かく抱きしめた。二人して泣いてしまいました。ララの中の私の心は満たされた。私はララと本当の意味でひとつになった。
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