58 守り竜の思い
我は、この森を守って1000年になる。まだ村と森しかなかった頃に、ちょっと休もうかと思って暮らしていくうちに1000年も暮らしてしまった。村には、人も少なく竜がいたからといって大騒ぎすることもなかった。
長い時森にいたのでいつの間にか守り竜と呼ばれるようになっていった。我は木竜、そこにいるだけで森は活性化して木々はよく生え、木の実は実り、植物もよく育つ。大型魔獣はわれを恐れてここには入ってこない。小物たちには楽園。時とともに木々の向こうに人が集まり街ができた。我の方が早くから住んでいるので関係ない。森に危害を加える奴は、ひと吠えでいなくなる。そして、我に代替わりを育てる時が来た。
子竜が卵からかえるのを待っていた。この卵は我のつがいが残してくれた卵だ。つがいは、卵を産んだあと森から出ていった。我は、森の守り竜だからここから出ていけない。つがいが帰ってくるのを待っていたが、なかなか帰ってこない。100年たった。そろそろ卵を孵して代替わりする。出ていったつがいでも探そうかと思っていた。一つの卵に魔力を注ぐには、時間がかかる。まして片親の魔力だけでは、さらに時間がかかった。
突然魔法使いが4人が攻撃を仕掛けてきた。ちょうど子竜が卵からかえったばかりだった。子竜を守るために、自由には戦えず苦戦しているところに火竜を操る者が現れた。ここは森だから火をはかせてはいけない。体の向きを変えたとき足の付け根に剣を突き刺された。
火竜を叩きつぶした時には子竜はいなくなっていた。怒りが理性を超えた。気が付いたら、魔法師たちを踏みつぶし、森の木々は、燃え、焼け焦げていた。いくら子竜を呼んでも反応がない。体を動かせば血がだらだらと流れている。体を少しづつ動かして森奥の洞窟にたどり着いた。
自分がいなくなれば森が荒れる。子竜が、街に出れば討伐対象だ。子竜を探すめどもない。子竜が呼び声に反応してくれれば転移できる。それまで体力を温存するしかなかった。
一人魔法使いを逃がした。われの呪いを受けよ!人として生きては、いけない。このまま我が死ねば、この森は魔物の巣窟になる。子竜よ。我の呼び声にこたえてくれ。転移する力が残っているうちに。
いくら呼び掛けても子竜の返事がない。幾日たっただろう。朦朧としていた。子竜が、人間に抱かれて戻ってきた。体を動かせなかった我を治療をしてくれた。あの人間の魔力は心地よい。力が湧きあがる。解毒され、深かった傷も見る間に治っていった。
不思議な人間だった。小さいのに内に秘めている力は大きい。キラキラと光る癒しの魔法は噂に聞く聖女のようであった。子竜も懐いている。あのケットシーはあの子の導き手か。聖獣を従えた女神の愛し子。アルメーラ様の導きで子竜は良き出会いをしたようだ。
ララたちは、竜の治療を終えて、転移して自宅に帰った。
「メメ、子竜をおいてくるの早くない。心配だよ」
と不満顔になってしまった。追い立てるように転移したのだから。
「ララ、子竜ははいずれ東の森の守り竜になる。ララの側ににいれば確かに安心だし安全だ。だが、人の暮らしになれたら子竜は森で暮らせなくなる。東の森を守れなくなる。子竜には、定めの仕事があるんだ。守り竜から叡智の継承が出来なければ東の森が荒れる。大事なことなのだ」
「ふーん、だから名前も付けなかったのね」
「そうじゃ、名づけられれば情がわき、子竜も離れがたくなる。あの子は、守り竜になるために生まれたのだから」
だから、メメが子竜のほとんどの世話を焼いていた。ララは遠ざけられているような気がしてた。
「分かった。でもたまに行くのは良いですか」
「それはかまわん。子竜も急に突き放されても寂しいだろう。守り竜の体調も気にかかる」
翌日、竜たちのポーションと食糧庫に入っている果物をたくさん持って転移した。
東の森は、昨日と違って竜の呼び声がなく穏やかな森になっていた。ウサギやリスや穴掘りモグラが木々の間から木漏れ日の中顔を見せている。色々な鳥の声も聞こえてきていた。
「さすがに守竜の復活だね」
「これほどに守り竜は、森に影響を与えるんだね」
「そうだよ。大森林の中には森の守りが必ずいる。南には泉の女神が、西には気が弱いがアルマンがいる。そして東は竜がいる」
「お母さんのいる北は?」
「北はポポの親が森守りをしている。いずれはポポがその仕事を受け継ぐことになるだろう」
「ポポは北に帰るの?」
「まだまだ先だよ。やっと国の4つの守りに出会えて挨拶したばかりだ」
「いつまでララに甘えているんだ。さっさと仕事覚えろ」
メメとポポは言い合いながら洞窟に向かった
洞窟前で 子竜が待っていた。
「よく来た子竜が恋しがってな・・」
「子竜、ちゃんとポーション飲ませてくれたのね。森が元気になってるわ。偉い偉い」
と抱き上げた。
「果物持ってきたわ。マナだけで大丈夫だろうけど、少しでも早く元気にならないと。子竜、貴方も強くならないとだめよ。でも危ないときは洞窟に逃げるのよ。前みたいに捕まったらダメよ」
「大丈夫じゃ。近距離なら転移できるよう教えた。まだ力が弱いから逃げることが出来ればあとは我が自由に動ける。十分守れるから」
「これは、結界石!この洞窟に常時結界かけておけば子竜守れるから持ってきた。この赤い果物は、妖精の実。青いのが精霊の実。魔力と体力の回復力がすごいそうよ」
「これは体を守る力を増やす実だ。まだまだ小竜を育て上げるのに時間がかかろう。疲れた時や傷ついた時に、おぬしが食べるがよい。子竜は食べてはだめだ」
子竜は、他の実を食べ始める。
「この森にはないものだな」
「南の大森林の奥に隠れてなっているの。この硬い皮を割って食べてね。このまま100年位は、腐らないから保存もこのままで大丈夫」
「ありがとう。我は何を返したらよいかな…そなたを守ることが出来よう」
そう言って守り竜は新緑の鱗を差し出した。
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