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俺は、この竜を売って金貨を手に入れて一旗揚げるんだ。こんな くすぶった生活はまっぴらだ。さっきは泣いてうるさいから 殴ったが、竜は丈夫だから大丈夫だ.そう思いながらカバンの上から塊を触った。塊がない!! 慌ててカバンの中をのぞくと何もない。竜がいない!! どこ行った。カバンの中から馬車の中隅々まで探した。
いない!焦った。子竜連れて帰らないと俺も俺の妻も殺される。10日ぐらい前に酒飲んで、博打やって、借金作って困っていた。妻が良い話を持ってきた。東の森に年寄りの竜が、卵を抱えている。その卵を運ぶのが仕事だ。金貨30枚だ。
妻には苦労を掛けている。運ぶだけならたいしたことないと妻にも言われすることにした。なんせ借金が金貨10枚、奴隷に売られる。借金返してもおつりが、たんまりだ。
王都から東のオスト領の東の森に、5人の男が待っていた。森に入ってしばらくした。
「ここで待ってろ」
魔法使いに言われた。そのうちさらに奥の方で火が立ち上る。「グオァアー グオーン」と突然の咆哮 腹の底から押し出すような声に腰が抜けた。その後は、光が煙が激しく立ち登りつづけた。人が肩で息をしながら走ってきた。服のあちこちが焼けていた。
俺は手渡されたカバンを持って森の出口に向かう。そのまま馬車に乗る。まずはオスト領を出なければならない。子竜は、魔法で寝かされているので静かなもんだった。受け渡しまで少し時間があるので 妻に珍しいものだから見せてやろうと王都に戻った。すぐ引き返せば、受け渡しには間に合う。大丈夫だ。王都についてすぐに妻の待つ家に走った。
「おい、見てみろこれが竜の子供だ。たいしたことないな。簡単に捕まえられたぞ」
「ダン、これ金貨30枚じゃ安いんじゃないの。闇で売れば金貨100枚以上じゃない」
「馬鹿言え。奴隷になるぞ」
「大丈夫よ。王都から逃げて地方に行けば、一生楽しく暮らせるわ」
妻は俺にささやいた。ふと思った。昔の伝手使えば金貨50枚。100枚になるかも…そう思った。妻と打合せして、夜のうちに王都を逃げ出した。妻はとりあえず実家に隠れることにした。家は引き払った。金が手に入ったら、妻に連絡して、よさげな所で落ち合うことにした。
昔の仲間は、南にいる。とりあえず南を目指して馬車に乗った。ゆっくり考えている暇はない。
子竜は、本来金貨30枚でオスト領から離れたセブン領のはずれの小さい村で、渡す予定だった。
南に向かった馬車に乗ったころから子竜が目覚め泣き出した。「キューン キューン」と泣くようになった。うるさいので、カバンの上から殴ったら泣き止んだ。その後もそんなこと繰り返していた。眠りの魔法が切れたようだ。腹もすいたかもしれないが、餌なんてわからない。竜は丈夫だ。しばらく食べなくても平気だろうとほうって置いた。
もうすぐ 野営のための下車という時に泣かなくなった子竜に気が付いた。慌ててカバンに手を突っ込んでも塊がない。どこ行った。盗まれたか。焦った。冷汗が体全体から出てきた。盗んだのは、この馬車隊の5台の中にいるはずだ。
「誰だ俺の竜を盗んだやつは!」
思わず大声で叫んでしまった。同乗者の置いてあるカバンを蹴って歩いた。鳴き声がしない。馬車も一台一台確認して回った。見つからない。先ほどの休憩の後確認した。いなくなったのは、そのあとだ。絶対犯人はこの中にいる。誰を見ても犯人に見えてくる。今度は手持ちのカバンを見せろと、隣の男のカバンに手を掛けた。その時誰かが自分をつかんだ。
「いい加減にしろ」
「うるさい。命がかかっているんだ」
苛立っていたので思わず殴ってしまった。昔は冒険者もしていたから、腕には多少自信があった。しかし、反対に殴り倒され縛られて、警備隊に突き出された。
「呆れたやつだ。竜を盗んできたとは、それも転売してもっと金儲けしようと、王都を夜逃げしてきたと。竜なんて、簡単に手に入るわけないだろう。酔っ払いか?どこまで本当か分からないが、この国の竜と言ったら東の森のオスト領だ。領主に問い合わせよう。それまで牢に入れておけ」
わめく男を牢にひきずっていった。こんなバカな話があるものかと思っていたら、オスト警護隊長モーリアンが突然現れた。
「連絡いただきありがとうございます。オスト領警備隊長モーリアンと言います。実は、我が領の守り竜の子竜が、先月攫われました。火竜を従えた魔法士に親竜が襲われ、そのすきに攫われたようです。東の森に守り竜がいないので、大型の魔獣ワインバーンやサラマンダーが暴れ始めています。討伐にも苦慮しています。早く子竜を森に戻したい」
本当の話だったのか。ワインバーンやサラマンダーなどとても相手にできない。慌てて牢からあの男を連れてきて警備団長モーリアンに引き渡した。モーリアンは、すぐに尋問に当たった。
「誰に頼まれた」
「知らない」
「だれに渡す予定だ」
「分からない。村の宿で渡すつもりだったが…」
「子竜は何処にいる」
「分からない」
「どこにやった」
「知らない。盗まれた」
「本当のことを言え」
いくら問い詰めても、男は分からないばかりで話にならない。ともかく こいつを連れて帰ることにした。帰領したのち詳しく調べよう。夜逃げした妻は実家にいたので、女も捕まえた。妻は、酒場で知らない男に金貨1枚貰って、金になる話を夫に伝えただけだ。自分は何もしていない。相手も知らないと言った。
モーリアンは、そのまま二人をオスト領に引き連れた。牢に入れ事細かに尋問を繰り返した。竜の運び屋のダンと同乗していた者たちに確認したが、竜がいたことは知らなかった。男が急に泥棒と騒ぎ荷物を蹴ったり、カバンを無理やり開けようと騒ぎ立てたので、突き出した。子竜の存在は、確認できなかった。
東の森で5人と待ち合わせしたこと 森奥ですごい音がして燃えている様子があったこと。竜を連れてきたのは魔法使いで、服が焼けていたことが分かった。受け渡しの宿で服の焼け焦げた男が、人を探していた。これらを考えると子竜は、領外に持ち出されてることは、確かだった。
ララたちは、子竜を抱いて 森から森にポポとメメと一緒に転移した。東の森に入ると力のない声が聞こえる。「ギユーンー ギユーン」腕の中の子竜がもぞもぞ動き出した。「ギュン ギューン ギユーン」繰り返し泣いた。まだ飛べないのに バタバタと羽を動かす。メメとポポを先頭に森の奥に奥に進んで行く。
さらに奥にある洞窟から力ない声が漏れ聞こえてきた。ララは、子竜を抱いたままライトを小さく灯し、ゆっくり入っていった。じっとりと血の匂いがする。何かを引きずった跡が、所々の血だまりとともに奥に向かっていた。鳴き声は、次第に大きくなってきていた。さらに歩く。大きく広がった空間に出た。大きな石があった。その石から鳴き声が聞こえた。
よく見たら青黒いドラゴンがうずくまっていた。ドラゴンは、鱗が所々剥げ、焼け焦げていた。脚の下には、大きな血だまりが出来ていた。
「ポポ、メメ、どこかに大きな傷がある。血だまりが大きい。早く治療しないと失血死しちゃう」
気が付いた守り竜が、動こうとする。ぼたりと血が流れ落ちる。
「動くな!子竜はここにいる」
「動かないで。子竜は元気よ。今はあなたの傷を治さないと」
ララの叫びに動きを止めた。メメは守り竜の見えるとこに子竜を連れていった。ポポは傷の場所を見つけ ララとともに治療にあたる。竜の鱗は、硬いし魔法攻撃に強いので焼け跡は後にして、まずは左脚の内側の大きな傷。血が固まり難くする毒が、塗られているためダラダラと血が流れていた。
守り竜に体の向きを変えてもらう。傷を魔力水で洗いポーションをたっぷりかける。そして毒消しと
傷用の軟膏を合わせてたっぷり塗る。
「守り竜だいぶ血が流れた。不味いけど血を増やすポーションを飲んでもらうよ」
「不味いのか」
「おっ 喋れる?」
「めったに話したことないが、喋れるぞ。俺ぐらい長生きなら転移もできるぞ」
「その大きさで転移できる所がないでしょ」
「そういえば500年ほど転移していないな」
「ともかく毒消しと造血と回復薬スペシャルコースでとりあえず5本づつ。メメ、子竜を下ろして。これとっとと飲ませて」
「おお 分かった。ララの指令だ。不味くても飲み込めよ。子竜が見てるからな」
どんどんポーションを飲ませていく。
「うっ、不味い」
「我慢して 良くなったら美味しいもの上げるから」
竜がポーションを飲んでいる中ララは、足の傷に回復魔法をかける。竜の体は、少しづつ淡い緑の光に包まれていく。しばらく経つと傷は閉じ、出血は収まった。
「体が楽になってきた。年だから回復に時間がかかるだろうが、子竜に引き継ぐ時間は十分ある」
「まだ失った血も体力も戻っていないからしばらく静かにしていて」
「子竜を助けてくれてありがとう。この子はこの森の次代。失ったら森が、なくなるとこだった。それに俺も狂ってしまったかもしれない」
とララの頭の上から声がしてきた。
「この洞窟があなたのお家なの」
「そうじゃ。なかなか良いだろう。子竜もここなら魔物にも襲われない。もう少し大きくなれば魔物など敵ではないが、今はまだ赤子だからな」
「それじゃ血だまりなんか掃除しないと」
「大丈夫じゃ。そなたが回復してくれたから、この部屋位われの魔法で・・」
見る間に血だまりがなくなり先ほどまでこもっていた血の匂いも消えていた。
「この子が戻ってきた。我は万の力を得たようなものだ」
竜の顔色はわからないが、無理をしているようで心配になる。
「ここにまた来てもよいかしら?子竜も心配だし、元気の出る食料を持ってくるわ」
子竜が、急にララにつかまり鳴き出す。
「子竜、ここに居るのは、大切なことなの。守り竜から仕事を引き継ぐために教わることがある。それにお前は、体が大きくなる。町には住めない」
「キューキュー」
「鳴くでない!お前は、守り竜になるために生まれたのだ。お前が、森を守ることは、ララを守ることになる。時々遊びに来る。ララは、泣き虫は嫌いだと思うぞ」
メメが子竜を諭す。さすがに、叡智を受け取る竜。理解したらしい。ララから離れた。
「明日必ずここに来るわ。待っていてね。ポーション壺に出しておくから、守り竜に飲ませてね。あなたしかできないのよ。お願いね」
「ギュン」と小竜は返事をした。ララたちは家に転移した。
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