55 王都のひと時 そして帰路
ララは大司教様の言葉がここに残るなと指示してるように思えた。ゼリーもいつのまにかポケットに隠れていたのでバタバタしているうちに大神殿を離れた。
「恐ろしい怒りだった。怖かったな」
と言いながらメメがポケットから出てきた。
「あとは大神殿、いや国中の教会が祈りを捧げるだろう。ララは良くやったよ」
珍しくメメが、褒めてくれた。
「ふーん。とりあえず魔は祓われたようだし宿に帰ろう」
さあ宿へと思ったが帰り道がわからない。来るときは教会の一番高い鐘楼を目印にしたが、「俺が案内するよ」とメメは、ララに飛びついて肩に乗り道案内を始めた。行きは気が張っていたが、帰りは店をのぞいたり、メメたちが屋台で立ち止まったりしている。なかなか宿につかない。日が沈みかけて宿についた。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。遅かったわね。昼間の稲光すごかったわね。大丈夫だった?」
「はい大丈夫でした。無事大聖堂に行けましたし大司教にも会えました」
「えっ、大司教に会えたの? 強運の持ち主ね。まあ、あなたはアルメーラ様の導きがあるわね。今日はゆっくりして明日は王都観光でもしたらどうかしら」
女将はにこやかに微笑んだ。
「まだ何も決めていないけど」
「いいんじゃないか?問題も解決したからゆっくりしたら」
「メメはまだお仕事残っているの?」
「そんなことは・・」
「そうなの。まだ残ってるの。もう少し泊まっていってね」
女将は私の肩のメメをさらっていった。一体何の仕事だかわからないが、メメは女将に弱みを握られているのか。それとも何かの恩があるのか。ララはゼリーと王都にいることにした。
翌日、大聖堂の鐘楼が鳴り響いた。
「あら珍しいわね。この時期大祈祷はないはずだけど、昨日の稲光のせいね」
女将が話してくれた。期間は普通の祈祷はその日一日で終わるらしいが今回は数日続くようだと言っていた。すべての教会が参加するそうだ。
ララはせっかく王都に出てきたのでダリアを訪ねることにした。その後は王都の宿に泊まってもいいかなと考えた。学生の実習見習いの時にダリアに連れて行ってもらったので、店の場所はわかっていた。突然の訪問に驚きながらも、ダリアは店主から休みをもらい王都散策につき合ってくれた。さすがに王都は人も店も物も多い。学生時代の頃と違ってダリアは慣れたもので、人を縫ってすいすい歩いて行く。
「昨日の稲光凄かったわね。雨降るのかと思ったらあれは神の鉄槌なんですって。初めてだわ。神様っているのね。神様なんて試験の合格の時しか祈ったことなかったわ」
おしゃべりしながらお茶を飲み食事をした。その日はダリアのとこに泊まることになった。薬師1級ぎりぎり受かったけど薬のランクが安定しない。中級ポージョンが上手くいかない。最近太ってきた。実家が結婚しろとうるさい。ダリアの愚痴を聞きながら寝入った。
次の日、ダリヤはもともとお休みなのでそのまま彼女とまったり過ごすことにした。昼食は外でと言われちょっとおしゃれなお食事処に。しばらくするとジークにコール、スミス先生が来た。
驚いて声を上げてしまった。懐かしい顔ぶれだ。
「ダリア!?」
「以前ララのところに行った話をしたら、会いたいねって話になったの」
「ララさん、お久しぶり。アイザックで頑張っているようだね」
「先生、お久しぶりです。アイザックでよい人に恵まれお店を開くことができました」
「そうなの。行った時びっくりしたわ。店舗付き住宅なの。今は買い取ってるのよね」
横からコールが話し出す。
「えっ、もうお店買い取った?俺なんてやっと1級取れて、ジークのとこで薬師顔できるようになったばかり」
「俺だって同じだよ。ネイルがもう一度学院に挑戦するんで実家に残るか思案中なんだ。まだまだ1級合格者と言えるほどの仕事できてないし。先は長いよな。コール、お互いまだまだこれからだな」
ジークはコールの肩をたたいた。昨夜はダリアで今日はコールとジークだ。愚痴は続く。
「君たち、薬師の道は長いのです。そう簡単にゴールなど見つかりません。いずれは道が開けます。精進しなさい」
スミス先生の言葉で落ち着いた。それからはどうして王都に来たのか、昨日の稲光のことなど昼食を食べながら話をした。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。メメの待つ宿に着いたのは、遅い時間だった。
「ララ、そろそろ帰ろう。ポポたちが待っているよ。ギルドも困っていると思う」
メメは随分しおらしいことを言っている。
「そうだね。王都は人が多くて疲れるね」
ゼリーが丸印を出した。女将に宿を立つことを告げて休んだ。翌朝名残惜しそうに、女将はメメを見ながら見送ってくれた。王都からアイザックは平地移動に合わせ小さな村も入れたら人が途絶えることは少ない。街の中には護衛隊があるところもあるので比較的安心な馬車旅だ。
「あそこの女将淋しいんだよ。森に帰ればよいのに未練があるんだ」
「よほど良い人に巡り合ったんだね」
「久しぶりに女将に会ったらあちこち行かされて疲れたよ。ララの膝で寝かせてもらう」
と言って、馬車に乗ったとたんメメは寝入ってしまった。ララも慌ただしかった王都滞在に疲れていた。
ガタンという振動で目が覚めた。メメと二人でよく寝ていたようだ。王都から家に帰るのに5日間かかる。今日は宿に泊まりお風呂に入り食事をして翌朝馬車に乗る。それを繰り返す。お尻が痛くなってきた。休憩所で動物の泣く声がした。声は同行している別の馬車の旅人の方からだった。
旅人は無造作にカバンを殴っていた。
今夜だけは村に泊まれる。ララは馬車泊にした。メメは元気になりふらふらと出かけていた。馬車の中はララとゼリーだけ。村の宿に泊まれない男性たちは、外で火をおこし酒盛りしている。明日はアイザックなので気が緩んでいるようだ。護衛の者も気が抜けなかったから仕方ないかな。一応簡易結界を張って置いた。これでゼリーもゆっくりのびのびできる。
うとうとし始めた時、
「だれだ!俺のカバンからあれを盗んだのは!」
大きな怒鳴り声が聞こえた。驚いて馬車の窓からのぞく。3台奥の馬車の人達の酒盛りのところで騒いでいるようだ。
「姉ちゃん、酔っぱらいの騒ぎだ馬車に入ってカギ閉めておけ」
声がかかる。言われた通りに窓を閉め、鍵をかけた。大声が続いたが気にせずおにぎり食べることにした。そこにメメが転移してきた。その手には何かが乗っていた。
「ララ助けてやってくれ。まだ赤ちゃんなのに餌もあげずに、殴られて死にそうだ」
メメから受け取ると、それはトカゲのような動物だった。
「メメ、回復魔法かけていいかな」
「大丈夫」
「ポーション飲んでも平気」
「大丈夫」
体が小さいので優しく回復魔法をかけ、ポーションを少しづつ飲ませた。
「ぐるー」と小さな声をあげた。
「泣かないで。あの人に見つかるとまずいからね」「ぐる」と返事をして目を閉じた。
「この子が旅の間、あいつに泣くたび殴られていいた。弱って死にそうだから助けるしかなかったんだ。ララ迷惑かける」
「このまま連れて帰っても大丈夫かな。あの人には返したくないね」
ララの手のひらで寝ているトカゲをそっと布をかけた。
翌朝どんどんとドアを叩く音がした。昨夜の男のようだ。各馬車を見てまわっているようだ。
「開けろ!」
「何ですか」
「どけ!ここにドラゴンは居ないか?」
「ドラゴンなんて馬車に入りませんよ」
「馬鹿か!子供のドラゴンだ!降りろ!中を見せろ!」
ずかずか入ってきた。ララは素直に馬車から降りた。
「姉ちゃん災難だな。俺らと姉ちゃんは馬車から降りていないって言ったのに聞かないんだよ。他の馬車でももめていたよ。素直に見せた方がすぐ終わるよ」
「第一ドラゴンなんか持ってちゃダメだろう。捕まりものだ」
「だいぶ焦ってるから子供ドラゴンを貴族か金持ちに売る予定だったんじゃないか」
「ここにもいない。途中で逃げ出すわけないのに。早めに隷属の首輪かけておけばよかった。まだ小さいと体力落とすからと辞めていたのが…」
ぶつぶつ言いながら戻っていった。
「隷属の首輪?」
「姉ちゃんは知らないか。昔奴隷とかに付けていた首輪だ。雇い主に反抗しないようにする魔法の首輪だ。今は使われていないがな。あいつやばいやつだ」
「まだ出発まで時間あるからゆっくりしな」
「メメいいわよ」
「良かったな。これであいつから逃げられるぞ。とりあえずララの家で体を休めろ」
こてりとうなずいた。
「メメ、ここから家に転移できる?」
「出来るぞ」
「この子連れて先に帰って。私にはゼリーが居るから大丈夫。またいつあいつが、乗り込んでくるか分からない。それに同乗者に気づかれても困るから」
「そうだな。その方が安全かな。おい今から転移するからなララには夜には会えるから」
ドラゴンの子供とミミは転移していった。
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