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大司教に案内され、大聖堂の礼拝堂をぬけ静かな廊下歩いた。応接室に案内された。ソファーに座るようにと言われ腰掛ける。大司教は、ベルを鳴らしてお茶を頼んだ。しばらくしてお茶が運ばれたのち人払いをした。大司教と二人になったとたん、カバンからころりとゼリーが飛び出た。
「あっ、ゼリー!すいません。この子は、魔物ですけど悪い子ではありません」
「おお、可愛いスライムだね。君を守っているようだね。スライム君、ララさんに悪いことはしないから心配しないでください」
驚かずに微笑みながらゼリーに声を掛けてくれた。穏やかな人で良かった。
「ララ勝手に行くなよ。俺を置いていくなよ」
メメが現れた。またまたララの心臓が止まりそうだ。
「ほっほっ、今度はケットシーかい。さすがに愛し子だね。妖精に好かれやすいんだね。こちらでお茶でも飲みませんか」
「すいません。お菓子出しても良いですか?お菓子食べていたら二人静かなので」
二人に何か食べさせておかないと話が進まない。
「おお、いいとも私もいただいても良いかな」
背負いカバンからクッキーと一口ケーキを取り出す。ゼリーとメメと大司教に分けて出した。
「これ美味しんだぞ。なんせちょっぴり幸せになる付与と、こっちは健康になる付与が付いているんだ」
なぜかメメが胸張ってる。ゼリーまでいつもより跳ねている。
「二人とも静かに。申し訳ありません」
冷汗が出てしまう。
「どれどれ、おお、美味しいのう。そなたたちが言うとおりだな。誰が作ったのだ」
「ララが教えて家事妖精のジュモーとモッジが作った。ララが作ったものは良い付与が付くんだ。本人気が付いていないけど…」
「メメしゃべりすぎ!静かにして!お茶飲みに来たわけじゃないよ」
メメを捕まえて抱きかかえた。ゼリーも触手を伸ばしてメメの口を押えた。
「ララさんが、来るのはアルメーラ様からお言葉がありましたから、わかっていました。愛し子が、男か女か、大人か子供かわからず。またいつ頃見えるのか分からなかったので困っていたんです。今日 礼拝堂に祝福の光が下りていくのが見えて来訪がわかりました。ところで魔を払いたい物とは?」
ララはカバンから二本の黒のポーションを取り出した。
「こ・これを 何処で!」
大司教は、顔色を変えた。ララは、ブラウニー領の西の端の街で起きたことを説明した。妖精を捕らえ、娘の生き血をあさり、薬師が作った若返りの禁呪薬を作る過程でできたものだと。小瓶から瘴気が湧いているので メメが、人に渡さず大司教に届けた方が安全だと言ってお届けに上がったと伝えた。
「なるほど、200年前に起きたことが、今回に関わっているようだ。教会の者も関わりがあった事件だった。人の欲は限りない、たとえ聖職者でも魔に飲まれることがある。これは私が、お預かりして魔を祓います。時を置かず他の者を入れず今から始めましょう」
懐から聖布を出し小瓶を包み歩き始めた。
「一緒に来ますか」
「もし良かったら」
「あなたが居た方がよいかも知れませんね。では行きましょう」
足早に部屋を出た。
礼拝堂からその奥の祭壇の扉を開けた。そこには幾人かの女神や男神の像が立ち並んでいた。その前の机に聖布に包まれた小瓶を並べた。その瞬間に稲妻が落ちた。地鳴りのような音が響いた。
「お怒りになられている。許しを請う祈りを捧げます」
大司教は床に膝をつき祈り始めた。稲光と地響きが続く中祈り続く。気が付いたら稲光は収まり大司教の周りにはキラキラと光の粒が下りてきていた。黒い小瓶は消えていた。ララは、その間メメとゼリーを抱きしめていた。
「愛し子よ。あなたのおかげで、神の力で黒い小瓶はこの世からなくなりました。あなたがいてくれてよかった。ありがとう」
大司教は、立ち上がれなかった。ララは、大司教に駆け寄り体を起こそうと近づく。
「いやいや、大丈夫だ。これしき少し休めば動けるようになる」
言葉と裏腹に 体の力は抜けていくよう床にたおれこむ。ララは、部屋を出た。先程の助祭を探そうと扉を開けた。扉を開けた先の礼拝堂には、多くの聖職者が祈りをささげていた。誰に言うわけでなく。
「大司教様が、動けない。助けてください」
数人が、奥の部屋に向かってくれた。大司教に声を掛け 抱え起こし礼拝堂に移動し椅子に座らせた。
「すぐに水を」
肩で息しながら朦朧とする大司教を見ていると、自然とララは、両手を握り癒やしの魔力をかけた。意識を取り戻しや大司教は水を一息で飲みほした。
「騒ぐでない。人が神を怒らせし所業をしたのだ。今は、神に祈りをささげるしかないのだ。今から10日間昼夜祈りを行う
「大祈祷の準備に入る」
その一言で集まった人たちは、散っていった。
「大司教、準備が整うまでお休みに」
「そうさせてもらおう 着替えもせねばならぬ。お嬢さんお世話になった。気をつけておかえりなさい」
体を支えられながら大司教は礼拝堂を出ていった。付き添った聖職者は、何か聞きたそうだったが大司教がさせなかった。大聖堂では、神々からの怒りに騒然となった。過去に神からの怒りを落とされたのを知っている者はいない。書物でしか知られていなかった。神からのお言葉を受けられるのは、大司教様だけだ。すべての聖職者が、初めての経験であった。
王都の大聖堂で10日間の大神祈が始まることが知らされ、伝わったところから大神祈に参加していった。数日でフランク国のすべての教会で祈りの時を過ごした。
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