41
高級ポーションが作れるようになるのにそれほど時間がかからなかった。材料が良いおかげでランクが上がった。花の月の終わりにダリアが遊びに来た。初めてのお客様。一年ぶりのダリアは、きれいなお嬢様になっていた。でも見た目だけだった。
「ダリア、学生の頃のお転婆ぶりが嘘のようだね。とても綺麗になって、貴族のお嬢様になったみたい。」
「ララ、大変なの師匠が言葉遣いが悪い!マナーがなっていない!優雅に調剤しなさい!って。見習いの時と違って厳しい。家にいる時より上品になった。両親なんて師匠に感謝してるって言うの。そうそう、薬師1級、ララ合格おめでとう。私とコールは今年再試験、ジークはさすが前回受かった。
私は筆記試験は大丈夫なんだけど実技があと少し。学生の時みたいにララ、手取足取り教えて。もう試験落ちたくない」
立て板に水が如くしゃべり続けるが、さすがに切羽詰まったダリアはララに正面から頭下げてくる。
「ジークの双子のネイル覚えている?あの子今年もう一度学院に入ったの。頭良かったものね。もう一度挑戦するみたい。ジークの成長が悔しかったみたい。スカーレットは王都派遣。バリバリ頑張っている。男に負けないって言ってたわ」
ダリアにお茶とお菓子をすすめるジュモーとモッジ。目を見張る。
「可愛い!二人ともお持ち帰りしたい!」
ジュモーとモッジはびっくりして逃げだしてお部屋に閉じこもった。
「駄目。そんなこと言うから怖がって逃げ出したじゃない。知人から預かっている子なの。店番や家の中の事手伝ってくれている。今は家族だね」
コウモリのセバスチャンを見て
「可愛い男の子。貴族の子供?」
「ううん違う。知り合いの子供でお店の勉強に来ている」
「わっ!かわいい猫。犬は白と黒と茶色、3匹も飼っているの?ララって動物好きだったんだ」
もうどうにでもなれ。
「うん、動物も子供も大好き。動物は怪我を治したら居ついちゃった。番犬になったり癒してくれる。一人だと夜寂しいでしょ」
蜘蛛とスライムと女神はお家に隠れていてもらうことにした。
「ララご飯美味しいよね。お菓子も最高!」
「お風呂に入れた薬のせいね。お肌すべすべ。師匠のお土産にしたい」
など騒ぐだけ騒いで、疲れたのかそうそう寝てしまった。
リビングには、妖精が集まっている。ゆったりティータイム。
「騒がしい娘じゃな。邪気はないが」
「あっ、ツリーハウス。何も言ってなかったな。隠さないと不審がるかも」
「隠匿の魔法かけてあるからあの子には見えない」
女神はやることが早い。
『俺、家に隠れたらあの娘から逃げられるかな?」
「ベガ(蜘蛛)やゼリー(スライム)みたいに静かにできればね。吠えたりしっぽ振ったらダメ。ゴロゴロ寝音立てるのもダメ。ポポもメメも無理でしょ。もう会ったんだから、あきらめて付き合って」
「睡魔かけた」
『じゃ ずっとかけて』
無理な話3日間みんなで頑張ることにした。
翌日はダリアの調剤実習。ダリアは基本繊細な仕事に向かない。学生の時も丁寧にやれば合格するのに、自分なりの工夫(手抜き)をする。だから失敗するか効果が低い。調剤を繰り返すとレベルが上がるのが普通。ダリアは繰り返してもレベルの成長がない。ランクC は作れるのにその上に行けない。
「ダリア、普段の調剤をやって見せて」
「任せて、私手順は早いのよ」
ダリアは作業を始める。忠告したいが我慢して最後まで作業を見た。そして私の作業を見てもらった。
「ダリア、何処が違うかわかる?なぜ良い結果が出ないか解った?」
「何が悪いの? 作り方ララと一緒でしょ。ララの方が時間かかりすぎ。それじゃ沢山作れない」
「ダリア鑑定機にかけるよ。ダリアのはC 私のはAです」
「どうして!どこが違うの? おかしいよ」
ダリアに各種薬草の取り扱いから刻み方、潰し方、火の温度、滑らかさ、理由も付けて一つ一つ説明した。今度は見守りながら調剤をしてもらう。間違ったとこで声をかける。それを繰り返して1日は終わった。
次の日も初級ポージョン作成。午後には10回中1回、ランクA。経過を事細かに書いた。メモを見ながら繰り返す。軟膏も同じように繰り返し作成する。5回中3回はランクAが出た。
時間切れ。帰る日になった。観光する時間もなかったと泣いたが、試験合格が優先。店の商品をセットにして持たせた。必ずメモの通りに手抜きせず、調剤すれば合格できると励まして見送った。
ダリアの滞在で妖精たちにも迷惑かけた。
沢山の果物からドライフルーツやジャム、フルーツタルトにジュースにフルーツアイスを作った。妖精たちは大喜び。スライム君は虹色に光って喜びを伝えてくれた。ベガは仲間にも分けてあげたいと、森に持ち帰っていった。風の妖精に火の妖精、土の妖精、水の妖精、まだ妖精になれない赤ちゃんまでが集まってきた。どうも女神が鳥で転移するのに楽だからと家と森をつないだ。
大量に作ったフルーツ色々は店に出さずにみんなで食べて終わってしまった。フィアおばさまとリゼルさんには取り置きしたものを持って行ってもらった。それでも保管庫のフルーツは減らない。妖精達が美味しかったからと、補充していった。
モッジとジュモーに作り方を伝授した。女神までが料理に参加して厨房は大騒ぎになった。ララが順調に高級ポーションを作れるようになった頃、 ダリアから薬師1級取れたと連絡がきた。
王都の薬剤ギルド長会議に薬師ギルド会長レスタークは参加した。いつもと変わらぬ報告打合せで会議を終えたのち1本のポーションを詳細鑑定に持って行った。その後第3学園の学園長を訪れた。
しばらくして講義の終わったスミス先生を含めて会談に入った。
「私は薬剤ギルドの会長をしているレスタークです。アイザックでここの卒業生のララさんにお世話になりました。彼女は優秀ですね。学園での様子を伺いたいのです。彼女がマーガレット様の最後の弟子である事は存じています。」
慎重に言葉を選び話しだした。
「優秀の一言です。特に繊細な魔力操作は今まで見たことがないくらいです。調剤技術もほぼ完成されていました」
「学生の頃から優秀だったのですね。マーガレット様の弟子と認められた者はいません。弟子は何人か取ったようだが、厳しいし指導に耐えられず辞めたものが多いと聞いています」
「本人は楽しかったと、言ってました。基本は母親が指導した。北辺境のスノウにいるそうです」
「母親もマーガレット様の弟子の様です。名前は聞いたことないのですが優秀な方の様です」
「ララは拾い子だそうです。養い親ですね」
「血は繋がっていない。実はこのポーションは、ララが私の身内のために作ったものです。ギルド本館の詳細鑑定をしてきました。彼女の魔力を極薄く練りこんだ初級の回復薬です。
他の薬師が作った物だとベルは受け付けなかった。ララさんのポーションは問題なく飲むことが出来る。回復力も高かったのです」
「失礼ですが病名は?」
「魔力暴走による魔力回路の破綻。魔力漏れだった。彼女が診断した。このポーションには付与魔法が追加されていた。普通の鑑定機では感知されないレベルで、彼女の魔力も普通の鑑定機では測定されません。普通に見たらただの初級ポージョンなのです。付与内容は『限定回復効果倍増』です。それにララの魔力は魔力抵抗ゼロなのです」
静まり返った中でスミスは声を発した。
「そんなことありますか?ララの魔力は誰にでも違和感なく受け入れられるということですか?血の濃い親・兄弟ならあり得ても…あっ、1年の魔力操作の指導の時魔力の流し方を教えるのに、自分の魔力を流し込んでいた。誰も違和感がなかった。てっきり流す量が少ないせいと思っていた。たが、魔力抵抗ゼロなら無抵抗で魔力を与えられる」
「学生の頃から彼女は特別な才能があったのか。彼も詳しくは知らなかったようだ」
学園長が話し始めた。
「だから、見習い研修の免除を希望したのかもしれない。ララは気が付かず付与したり魔力を使う。マーガレット様は心配した。彼女の才能が悪用されるのを」
「マーガレット様も国家薬師の時はつらい仕事もあったから…」
「あの時代は仕方なかった。彼女は何でもできてしまったかね。」
「噂では親を人質にされたともいわれていた」
「だから退職したらすぐ姿消したのか」
「私は薬師として自分では作れないこのポーションに魅入られた。なぜ作れるのか知りたかったのです。ですが、彼女を追い詰めたり利用しようとは思っていません、このことは秘密にしてください」
そう言ってレスタークは、ポーションを持ってきたときと同じく大切に包んで魔法カバンに仕舞って帰っていった。
誤字脱字報告ありがとうございます。




