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『ララ、魔力に聖魔法と回復魔法半々細くゆっくり乗せて流すと修復できるぞ。漏れは一か所だし子供だから大丈夫だよ』メメの声だ。ワンピースのポケットからひょっこり顔出し。
「猫ちゃん。どうしてポケットにいるの?」
レスターク様とセバスさんが覗き込んだ。隠しようがない
「あとで説明します。先に治療します
ベルちゃん。今から温かい魔力流すから」
ベルの両手を握り、目を閉じ魔力を流す。右足の付け根に向けて破壊された魔力回路に回復魔法を添えて流す。
魔力の道の傷ついた所に、魔力の細い筒を通して魔力回路を修復する。魔力の漏れが少なくなったところで、乱れた魔力で汚染された体に、薄く広く聖魔力を這わせる。
修復されたばかりの魔力回路は脆弱だから、内服と食事と安静が必要。完治するまで魔法の使用は禁止。魔力ポージョンは急激に魔力が流れるので辞めて、初級回復薬に少し魔力を練りこめる。体力も回復が早い。
「終わりました。頑張ったね疲れたでしょ。このままお休みしてね」
「猫ちゃん触りたい」
「メメどうしますか」
『わしはララに憑いているから・・・ちょっとだけだぞ。どうせ説明するのに時間がかかるだろ。帰る時迎えに来てくれ』メメはもそもそとポケットから出た。手にはクッキーの袋を持っている。
「ベル。クッキー分けてやるが全部はダメだ。このクッキーは特別製だ。あとで食べろ。俺はぬいぐるみじゃないから、俺を抱きしめるな。撫でるくらいは許してやる」
そう言ってベルのベッドに飛び乗った。
もうどうにでもなれだ。
後ろの二人は固まっている。ベルはおとなしく自分の体を動かしてベッドの横に隙間を作りメメを招き入れた。灰色の艶々した毛は触り心地が良い。毎日クリーンかけているのできれいである。
セバスさんが先に回復した。説明のため部屋を移る。
「ララ。ベルは治ったのか?
あの猫はしゃべったような…どうなっている?」
何が起きたか分からない。不審そうに聞いてきた。
「結論から言うと。ベルさんの魔力漏れの傷は修復できました。魔力の漏れは右足の付け根です。わずかずつ漏れていたので、作られる魔力より漏れる魔力がわずかに多かった。魔力漏れと気づくのは難しかったと思います。
徐々に魔力枯渇に進んでいた。また体の中に漏れた魔力が淀み体力を奪っていったんだと思います。修復が終わりましたが、まだ回路は脆弱なので内服と食事と安静が必要です。完治するまで魔法の使用は禁止。魔力ポーションは急激に魔力が流れるので内服中止。初級回復薬に少し魔力を練りこめば体力も魔力も回復が早いと思います。ベルさんと相性の良い魔力だと体に負担なく吸収されると思います」
「それと…先ほどの猫ですが。ここだけの話にしてください。怪我をしたケットシーを保護したら憑かれました。そのまま我が家に同居しています。悪い子ではないですが、悪意を向けられると呪われます。取り扱い注意です。呪われても死ぬことはありません」
部屋の中は静まり変える。誰も返事をしない。
「もう帰ってもよろしいですか」
「ああ、ありがとう。お礼は後日。セバス自宅に送ってくれ。俺が親に説明しておく」
ララはメメを迎えにベルの寝室に向かった。
クッキーの袋を取り出し、ベルに渡した。恨めしそうなメメを無視して抱きかかえ連れて帰った。ララが部屋を出てすぐにベルの両親が飛び込んできた。ララの説明をレスタークは両親に繰り返した。その後娘に会いに行く。顔色の良くなった娘を両親は抱きしめた。
その後、レスターク様から錬金初級ポーションの依頼が来た。他の人の錬金ポーションでは、ベルが気分が悪くなり食欲がなくなる。レスターク様が毎週取りに来ることになった。ベルの様子で内服の調節を相談したいと、月の日の午前中に取りに来る。店舗で病状を聞いてポーションを手渡す。
その時お茶を飲んでお菓子を食べる。メメが出てきてポポが追いかけてきてコロが付いてくる。大騒ぎだ。ベルは順調に回復し月の月終わりには完治した。良き新年を迎えられそうだ。
新年明け、店前に久しぶりにレスターク様の馬車が止まった。勢いよくドアが開く。
「ララさん。元気になりました。メメ会いたかった!」
あの時の儚げな女の子は何処いった。真っ赤なワンピースを着たベルは元気溌剌だった。可愛いジュモーとモッジのメイド姿に興奮。子犬のポポを追いかける。メメは高い所でお昼寝。我関せず。コロは顔を出したがすぐ部屋に逃げた。元気になってよかった。
「ララ先生。わたし、薬師になります」
「えー、ベル貴族でしょ。大丈夫なの?」
これしか言えない。貴族の事はわからない。触らぬ貴族に祟りなし。帰りに店の商品をたくさん買って帰っていった。
ポポたちが夜の散歩から帰ってきたら、コウモリを連れてきた。黒い魔力に覆われている。慌てて聖魔力でコウモリをゆっくり包む。ボワッと金色に光り黒い魔力は消えた。新しい毛布に寝かせた。森の奥の泉のそばで倒れていたらしい。
「こ奴、瘴気にやられておった。このままだと魔物になるから連れてきた」
気軽に言った。次の夜、黒いスライムを連れてきた。
「瘴気にやられた魔物になるから連れてきた」
次の日
「瘴気にやられた蜘蛛連れてきた。魔物になると厄介だから」
立て続けである。お世話はジュモーとモッジも手伝ってくれている。メメは連れてくるだけ。元気になったら森に返せばいいと言う。瘴気の黒い霧のせい。森がなんかおかしい。
冒険者ギルドに薬の納品に行く。ロビーで冒険者たちが騒がしい。小物の魔物が強くなっている。怪我をする冒険者が増えた。
「毎晩ポポ達が瘴気にやられた小動物を連れてくる」
ロッジおじんに話をした。ロッジおじんはギルドマスターと話をすると言って2階に上がっていった。
翌日には調査隊が組まれた。ロッジおじんも一緒に森に入っていった。森の奥の湧水近くが動物の死骸で汚染されていた。冒険者が狩った魔物を必要なとこだけ取って湧水の近くに放置した。
森の泉は森の守り神が住んでいる。本来狩った魔物は穴を掘って埋めるのが決まりだ。アンテッドになることだってある。森の奥に行けるくらいなら高ランクの冒険者だろうにどうしてこんな事したんだろう?
一度汚染された土地は、教会で浄化してもらわないといけない。冒険者ギルドから領主に報告を上げた。領主から正式に教会に浄化の依頼を出した。
その夜、またポポ達が瘴気で覆われた灰色の小鳥を連れてきた。
『瘴気で弱ってる女神死んじゃう。女神死んだら森が死んじゃう』
ポポが焦って吠えてきた。
女神はわからないけど、白い鳥の瘴気を聖魔力を込めてを払う。小さな傷が多数あるので錬金ポージョンをふりかける。冷えた体をララのお布団で温めながら夜通し見守った。
明け方小鳥は気が付いた。鳥なので木の実と甘い果物を磨り潰し、ポージョンと混ぜて口元に運んだ。小さい口なので少しずつしか入らない。それでも栄養にはなっているようだ。食べてはすぐに寝てしう。
ポポは寝ずにずっとそばに付き添っていた。その間メメとコロは森の見回りに出かけていた。1週間ほどかけて徐々に回復するも、飛ぶ力はなかった。ツリーハウスの白い屋根の家に住むことになった。
誤字脱字報告ありがとうございます。




