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薬師試験は筆記と実技です
アイザック領で年間に合格者は2~3人です
アーロンは緑の街の薬屋に勤めている。ドーマと一緒。アーロンもドーマも2級は15歳の時に取れた。10歳から弟子見習いになり、よき先輩に恵まれ順調な修行生活だった。 1級も簡単に取れるとふんでいた。16歳、筆記試験で落ちる。17歳、筆記試験だけ受かる。18歳、今回は最後の挑戦。受験料はお店に借入金をしている。ドーマがいなかったらここまで頑張れなかった。
ドーマは実地はどうにかなんだが、筆記試験がもう少し足りない。1級の試験に受かれば給料が上がる。部屋も個室になりお休みの日が貰える。その後どうするかはおいおい考える。まずは借入金の返済だ。
アーロンとドーマ二人とも合格できた。アーロンは筆記43点、実地軟膏B、ポーションB。ドーマは筆記40点、実地軟膏B、ポーションB。5年ほど真面目に勤めればお金は返し終わる。それなりに大きな薬屋だが1級の免許を持った者は少ない。1級合格者自体が少ないのだ。
借入金が払い終わるころには結婚して、他の薬店に移ったり実家に帰ったりする。二人が受からないと1級薬師がいなくなるところだった。店主の期待が大きかったのだ。
「手順が少し雑なところがある。店の癖かもしれないが薬の効能にばらつきが出やすい。気を付けるとよい3年越しで合格おめでとう。これからも精進しなさい」
二人は1級の入ったギルドカードを大切に持って帰った。
青い目のアルスターは、地方の実家が薬屋。1級を取るためにホルストアインジャンに学びに来ていた。豊かな森のあるこの街は薬草が豊かで、優秀な薬屋が多い。筆記48点、実地軟膏B、ポーションB ほっと息を吐いた。
「合格おめでとう。筆記も調剤も安定している。良き師匠に出会えたことに感謝してください。これからも精進しなさい。1級のギルドカードです」
アルスターは嬉しかった。自分は恵まれていると思う。子供の頃からお店の手伝いをして、早くから兄弟子にいろいろ教わることが出来た。師匠と実家に連絡しないと。ふと、もう一人の女の子のことが気になったがすぐに忘れた。
ララは合格。筆記50点満点、実地軟膏A+、ポーションA+だった。白髪のひげを蓄えた老人がララの前にきた。
「素晴らしい成績での合格おめでとう。君は学園卒業ということは錬金薬もできるのかい?」
「できますが魔力量が多くないので制限があります」
「君の師匠は誰かな?聞いてよいか?手際がいいこと、薬草の選別も素晴らしい。器材の取り扱い、実地試験の後調剤台が綺麗に片付けられていたのは君だけだった。ここまで指導できる人は少ない。そして身に着く人も少ない」
ララは思案した。
「あなたは薬師ギルドの偉い方ですか?」
「あっ、申し訳ない。薬師ギルドの会長しているレスタークという者じゃ。優秀な受験者が居ると聞いて見に来ていたんだ」
「ここだけの話にしてくださいますか」
「わかっておる。技術や知識は師匠から弟子にと引き継がれるものじゃからな」
「今は亡き薬師マーガレット様です」
すごく驚いた顔をした。
「おお、あの方か。道理で手際が良い。厳しかったろう。なかなか弟子がいつかず途中辞めてしまった者が多かったと聞く。彼女の作る物は最高級じゃ。依頼品が多くて世間に出まわるものが少ない。亡くなったのか。仕方ないのう年には勝てないからな。良き師匠と良き弟子だ。弟子というのは、秘密にしておく。知ればレシピを欲しがる者もいるだろう。あの人の才能は、薬学だけじゃないから、いろいろ詮索されるだろう。秘密じゃ。秘密じゃ」
しみじみ一人語りしていた。
「会長、よろしいですか?ギルドを閉めますよ」
「悪いことした。時間を取らせた。気を付けてお帰り」
薬師カードを受け取り1日がかりの試験が終わった。
自宅に帰る。ほっと一息そのままお布団に飛び込んだ。緊張していた。そのまま寝てもいい。明日は試験の練習用に作った薬とポーションをギルドに納品に行こう。朝日に起こされて目が覚めた。ギルドカードに魔力を込めて1級の文字を確認。思わずにやにやした。
独り暮らしを心配していた母とカレンさんに報告しよう。ギルドのサマンサさんやロッジおじんとのことも書かないと。裏庭に畑を作ろう。井戸もすぐ側にあるし自分の食べる位のものはできそうだ。夏の日差しが強くなる前に、ハーブも植えよう。試験が終わったので色々始めようとワクワクしてきた。
冒険者ギルドに納品に行くとサマンサさんの隣のピーターソンさんに声をかけられた。
「合格おめでとう。良かったね」
「ありがとうございます。これからもお願いします」
カバンから中級回復薬と傷軟膏と火傷軟膏・毒消し薬を納品した ピーターソンはそれらを持って鑑定しに2階に上がっていった。
「ララちゃんこの間貰った蜂蜜とても美味しかった。ハンドクリームも良く手に馴染んでよかった。どこかのお店に卸さない?売れると思う」とささやかれた。
「実は今、店舗付きの借家に住んでいます。薬師1級取れたのでお店始めようかと考えています。この街薬屋多いですよね。雑貨を兼ねた薬屋にしようかと思ってます。ハンドクリームや入浴剤とか髪専用の洗浄液など女性に特化したものなんかどうですか?」
「いいんじゃない。前から思っていたけど。髪の毛艶々サラサラなのはそれ使っているの?女性の冒険者も多いし、いくつになっても綺麗でいたいものよ。薬はギルドで他のものはお店で・・・いいかも。がんばってみたら」
「試作品出来たら評価してくれますか?」
「任せておきなさい。ついでに宣伝も任せなさい」
まだ先のことだが少しずつ考えていこう。
ロッジおじんが顔をだした。
「ララちゃん1級おめでとう。立派な薬師様だね」
「ありがとうございます。ロッジおじんの都合の良い時にまた森に行きたいんだけど‥」
「おお。任せとけ。明後日は晴れる。8の鐘東門でいいか」
「お願いします。お弁当は作っていきますから」
「あら。いいわね。お弁当付き」
サマンサさんの声を消すように、ピーターソンさんが、ガタガタガタと階段駆け降りるついでに踏み外した。
「うるさいピーターソン!落ち着きなさい」
「だって薬ランク上がってる。この短い間に上がるなんて。もともと ランク高いのに」
「この間ロッジおじんと森で採った薬草を使ったからかな?ロッジおじん何でも知っているし、薬草の場所的確で良いものが採れた。だから薬の出来もよくなった?」
生で採った薬草も乾燥の仕方や洗い方、保管方法で薬の出来に大きな違いがある。薬草って奥が深い。冒険者カードに納品代金入金してもらい、食料品を買って帰った。いつもの1・5倍の収益。嬉しくなってしまう。明日はお礼に焼肉入りおにぎりにしようかな?ごはん苦手だと困るから肉はさみパンも作っていこう。
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