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【完結】魔法が使えるようです  作者: ちゅらちゅら
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明るい森、フォレストルミノに初めての薬草採取

 アイザックに移って1週間がたった。花の月の中になった。薬師1級試験の調剤実施試験に向けて試作をする。フォレストルミノ(明るい森)で採取された薬草を使って調剤をしたいと思った。手持ちの薬草もなくなりそうだ。薬の納品を兼ねてギルドに薬草の購入に向かった。


「こんにちは。サマンサさん。お薬納品に来ました。あとアオ草とノビ草、シャボンの実、ロウの巣ありますか」

いつも笑顔のサマンサさんはほっとできる受付嬢だ。


「こんにちは、薬の納品ね。薬品はピーターソンに渡しておくわ。支払いは待ってて。薬草の売店は右隣にある。ロッジおじいが居るか声かけてみて。帰りに薬の代金の受け取りしていってね」

言われるままに右隣のドアを開けると丸坊主のロッジおじいが暇そうにしていた。売店が忙しいのは早朝と夕方だから昼後はお昼寝タイムらしい。


「あの・・・アオ草とノビ草、シャボンの実とロウの巣ありますか」

「あるよ。こっちの棚に種類ごとかごに入っている。必要な分だけ取ってくれ」

棚の方に向かおうとすると、突然若い冒険者のパーティーの一人に声かけられた。


「あのー、アオ草とノビ草今日収穫したのあるけど買ってくれない」

「見せてごらん。ちゃんと収穫されてるか確認しないと、ギルド内では売れねえぞ」

「わかってるよ。良かったら、おじんと一緒に見てよ」

テーブルに出された草・・・・・酷い酷すぎる。


「これノビ草もアオ草も雑草も交じってる。ノビ草は根元を切れるナイフで収穫。アオ草は内側の柔らかい葉だけ採取する。こんな風にむしり取ったのは使えない」

「その通り。初心者講習受けてないのか?稼ぎたかったら勉強しろ」

「えーー半日かかって取ってきたのに。お嬢さん買ってよ」

「ごめんなさい。私は薬を作るのに必要だから棚のかごの方を選ぶわ」


 若い冒険者たちは、どうにか売れないか押し売りしてきた。ロッジおじいに怒られてた。そのすきに売店から必要なものを購入しでギルドカードで支払いした。サマンサさんの所に戻りギルドカードに薬の売り上げを入金してもらった。


「今回も良い出来だって。ピーターソンが喜んでた。ピーターソンがお茶しない?と言ってたけど、どうする?」

「あの人なんだか私の事色々調べてるみたい。薬師ギルドまできた。だからお断り。それより私森の薬草が欲しい。自分で森に薬草を採りに行きたいんです。護衛依頼ってどうしたらいいですか?今週中に行きたいんですけど」


「ララちゃんあなたが一人で行くのは危険だわ。欲しい薬草の依頼出すだけではだめなの」

「これからここで調剤するならフォレストルミノ(森)の様子が知りたいです。それに今度薬師1級の試験を受けるので無理ですか」

「ララちゃん一人で行こうとしてるでしょ」

その時隣から声がかかった。


「よう、嬢ちゃんおじいが連れってやるよ。明日はどうだ」

「ロッジおじい。どういう風の吹き回し?冒険者の世話なんてめんどくさいって言ってたのに」

 不愛想な顔を売店のドアから出して投げやり風に言った。

「やる気のあるやつには教えるよ」

「ありがとうございます。お願いします。依頼書すぐ書きます」

「その方がいいね。詳しいことは話しておくわ」


 ララは6の鐘の鳴る前に東門に来た。昨夜朝が早いのでサンドイッチを作った。温かい紅茶も用意した。日帰りだけど何があるかわからない。保存食・薬に回復薬・毒消し・魔物除け玉・攻撃用のパチンコ玉(土魔法で鋭利な尖頭の礫)を背負いカバンに入れてきた。師匠の古い魔法カバンを背負いようにリメイクした。


「待ったかな?今日は森の浅い所を薬草中心に見てまわろう」

「おはようございます。この森は初めてです。よろしくお願いします」

「歩きながら話そう。薬の出来はとてもいいそうだね。どうして森に?」

「薬草は育った場所で結構違いがある。同じアオ草でも採取方法や保管方法・取れた場所で薬草自体に含まれるマナの違い・かけ合わせる物も色々あるから、この目で確かめたい。まだ駆け出しの薬師ですから色々気になってしまうのです。わたしは子供の頃体が弱く外に出ることがなかったから森を良く知らない。本の知識しかないのです」


 ララはロッジおじいに見守られて安心して森の中を歩けた。話してくれたことは本では分からない事が多く有意義だった。ちょっと魔法使ったけどロッジおじんなら秘密にしてくれそう。蜂蜜を作ってお礼に届けよう。蜜蝋作でハンドクリーム作ってサマンサさんに手渡そう。いつも気にかけてくれるから 木の実入りのお菓子も追加しようか。帰る足取りは行く時よりも軽くなっていた。 



 17歳と言ったが見た目12・3歳にしか見えない女の子は採取に向かうために髪は一つに縛り帽子をかぶる。動きやすい長袖・長ズボン、靴は底のしっかりしたブーツ、一見男の子に見える。以前作ったこの森の採取物の地図が変わっていないか確認しながら歩く。

 森の様子の見分け方、疲れない歩き方、方角の見方、風の動き、天気の見方、この森の特徴などを話す。驚くほどに素直に聞いている。こんなに真剣に話を聞いた冒険者は初めてだ。2時間ほど歩いて少し開けたとこで休憩を取った。干し果物を出そうとしたら、清浄魔法で手を綺麗にする。カバンからコップを出して冷水‼を入れて手渡してくれた。暖かい陽気の中歩き続けたので冷たい水はのどを潤すのに十分だった。布の上にサンドイッチを出してきた。温かい紅茶まで出てきた。

 

 沢山入るカバンだなといえば、師匠からもらった魔法カバンを背負いように作り直したと。そういえば、歩きながら収穫した薬草や木の実・果物を小袋に入れてはカバンに仕舞っていた。余りに自然な動きで気にならなかった。魔法カバン‼どこの令嬢だ!この子は貴族か!?


 歩いていると虫が寄ってくる。風魔法で追い払う。火魔法も使えるらしい。風が得意なので種火ぐらいなら困らないと言っていた。途中角ウサギが向かってきた。俺が剣で立ち向かおうとしたら、彼女が指で石を弾き飛ばして仕留めてしまった。見せてもらった石は土魔法で作ったと。血抜きして持って帰るかと聞いたら、ムリですと涙目だった。


 蛇が顔を出した。「ギャッ」とはねたが毒消しの材料になると言ったら、毒袋をよけて仕留めてしまった。しっかり毒液を採取する。蜜蜂の群れに出会えば、怖いと言って風で飛ばしてしまった。巣に蜜が沢山あるとわかると 巣全体に魔法をかけて蜂の動きを抑えて巣ごと採取袋に入れていた。逞しいのか逞しくないのかわからない。 

 話してみるとずいぶん大人びた所もある。採取に夢中になると、崖から落ちそうになる。蛇に襲われそうになっても気が付かない。奥に入り込みそうになり止めることも多かった。変わったお嬢さんだ。


 威力は弱いと言っても多属性の魔法が使える。薬が作れる。魔法カバン持ち。だが貴族でない。危ない。宝箱が歩いているようなものだ。本人は気を付けているようだがぽろぽろ抜けてる。のんびりなお嬢さんだ。危機感低い。こんな子が一人で森など行ったらすぐ死んでしまうか大怪我する。冒険者でなく薬師でよかった。薬の出来もいいとサマンサが言っていた。悪い奴らに利用されなければいいがこれからも森には自分が付いていこうとロッジは思った。

 午後の日が落ち始める前に森を出て東門に向かった。採取地図を修正をして、新しい地図を彼女に手渡そう。森に行くときは、おじいに声かけろ他の冒険者に頼むなと言っておいた。 



 珍しいロッジおじいが自分から声かけるなんて。かれは、採取専門の冒険者だった。冒険者としての知識は幅広い。パーティーに一人欲しい人だ。彼がいるだけで、生存率も依頼達成率も跳ね上がる。特別依頼は彼を臨時で雇う。ただ彼自身は攻撃力が弱いからとパーティーを組むことはなくランクはCどまりだった。

 薬師や錬金術師には重宝された。生活に困ることもなかったと思う。人魚の鱗の採取依頼でついでに人魚の涙を採取して指輪を作りギルドの受付嬢にプロポーズしたのは有名な話だ。


 今は力で冒険者のランクを上げていく時代。頭を使わないとは言わないが、情報を集め・対策を立てる・万全な準備・ 歩き方・逃げ方・些細なことが生死を分ける。今の若い子は考える力が弱い。先急ぐ。ロッジがフェニックスの羽を取りに行って怪我をして冒険者を辞めた時、すぐにギルドに勧誘された。


 一時期初心者講習の講師をしたが、Cランクの講師というだけで真面に学ぼうとしない。すぐに辞めてしまった。その後は素材買取専門。知識も豊富で目利で失敗した買取はない。久々に見たおじいのわかりにくい笑顔がサマンサは嬉しかった。



誤字脱字報告ありがとうございます

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