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【完結】魔法が使えるようです  作者: ちゅらちゅら
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26  アイザック元領主との出会い  

 錬金薬は効能が高まるために普通の薬品より高値。それでも自分の魔力を使うので決して採算がいいわけではない。


 より良き薬を、新薬を、個人依頼の薬を作るには錬金の技術が必要になる。製薬Cを継続的に作れれば、薬師2級が取れる。錬金で C の製品を作れば卒業。卒業しても登録自体は薬師である。錬金術でその薬の効果を上げるか。薬師の技量にかかる。調剤した薬品の質で勝負なのは変わらない。


 製薬技術が上がっている4人には今以上の力をつけてほしい。見習い研修の評価は、ネイルを除いて優秀であった。


 自分の力量を評価できることはなかなか難しい。今年度の学生は能力が高い。それ故に街の薬師の技量の違いに悩んだものもいる。

 錬金の技術を身に着けられる者は少ない。繊細な魔力操作が必要だ。今年は稀にみる豊作だ。ララという存在が彼らに良い導きを与えてる。錬金講義の最後には、皆がCの薬品の調剤に成功した。ララは ランクA であった。



 学園長はララを呼び出した。マーガレット様とララの繋がりが知りたかった。ララの優秀な成績が、それに影響を与えていると考えた。


「こんにちは、急な呼び出しで驚いたね。ちょっと確認したいことがあって。失礼だがララさんはマーガレット様の血のつながった孫?ひ孫?・・・ではないんだよね」


「マーガレット様とは血がつながっていません。マーガレット様は魔力量が多すぎて、子供はできなかったと伺っています」


「それではどんな伝手で、教えを請うようになったのかね?話せるようなら教えてほしい」


「私は、マーガレット様の弟子だったソフィーの養い子です。母の様な薬師になりたいと相談したら マーガレット様が引き受けてくれたのです。師匠が有名な人とは知りませんでした」


「マーガレット様が国の仕事を辞めて、結婚して地方に出たことは知っていた。何人か弟子を持ったが難しかったようだ。神に貰った才能は引き継げなかったようだ。・・・母親がマーガレット様の弟子ということだね」


「母はマーガレット様の伝手で、辺境のノウス領の深緑の大森林の近くでお店を開いています。母と師匠の事はよく知りません。でも娘のようだと言ってました。よく転移して会いに来てくれていました」


「ほーーなるほど。隠された弟子だったんだ。マーガレット様の弟子だと声高に騒ぐ者はいるが・・・ところで、君は養い子というが・・・」


「赤ちゃんの時に森で拾われました。 魔力の器にひびが入っていて魔力漏れがあって危ない状態だったそうです。母がそのまま世話をしてくれたのです。マーガレット様も治療を手伝ってくれたらしいです。熱ばかり出していたので覚えていません。5歳頃魔力漏れも収まって徐々に快方に向かい、今は体は小さいけど元気です」


「魔力の器からの魔力漏れで、よく生きれたね。君の母は優秀な錬金薬師だね」

マーガレット様にはまだまだ秘密があるようだ。


「話が変わるが、会ってもらいたい人がいる。悪い人ではない。 君が亡くなった娘によく似ていると聞いて、会ってみたいそうだ。会うだけでいい」

彼女を驚かせてしまったが、仕方ない。


「ごめんなさいね。急に会いたいなんて言って驚いたでしょ。」「わたしは、アイザック領主クロフィードと妻のフイアットです。君が妻にによく似ているという話を聞いてね。会ってみたかったのだ。


 私はもうすぐ息子に代を譲り隠居する。やっと時間が作れてゆっくりしようと思っているんだ。実は私達には娘がいたんだ。事故で亡くなってしまった。娘のマリアンヌは妻のフイアットによく似た栗色の目と髪を持つかわいい子だった。君のように」

「ごめんなさい。死んだ娘に似てるなんて言われて気分良くないわよね。年寄りの我儘だと思って、 一緒にお茶でも飲んでくれないかしら?」

上品な老婦人は嬉しそうにララに話しかけている。それを見守る夫は、少し涙ぐんでいた。長い間気鬱の妻の久しぶりの笑顔のせいだろう。楽しい時間はすぐに過ぎララは寮に帰っていった。


 私の娘はアイザック領主クロフィードの長女として大事に育ててきた。 国主催の夜会でノウス辺境伯の跡取りに見初められ嫁いでいった。幸せに暮らしていたが、夫が不在中に賊に襲われ亡くなった。突然の知らせに驚き、問い合わせの人を送った。辺境は遠く時間がかかり詳しいことは解らなかった。元辺境伯からのお詫びの手紙とわずかばかりの遺品が届いた。


 国お膝元のアイザック領を預かる侯爵として、領を長期留守にもできない。直接辺境伯に苦情を言うこともできず、悶々とした日々を過ごした。数年後、辺境伯は再婚した。我々とは無関係になった。娘のことを忘れたわけではないが、忙しさにかまけて今になってしまった。代替わりに伴い転居の準備をしているとき、娘に付けたメイドのマーサが辺境伯を辞めて、こちらに戻ってきたと挨拶に来た。 


 娘は辺境に嫁いでとても幸せにしていた。ただ、辺境だけに夫が留守にすることが多い。魔物の討伐や隣国との小競り合い。仕方がない事だ。なかなか子供が出来ず、第2夫人をとの声が上がった時に妊娠がわかりその声もなくなった。旦那様も大喜びで生まれるのを楽しみにしていた。


 魔物討伐に出かけたがなかなか帰れず2か月ほど会えない期間が出来た。やっと旦那様が帰ると連絡が入り、奥様が待ち焦がれている時エントランスから賊が入り奥様の部屋に入り込み襲われた。受けた傷は酷く、傍にいたメイドもろとも殺害されてしまった。


 まるで目的を果たしたかのように、賊はすぐに逃走した。その直後、旦那様が帰宅し大騒ぎになった。賊の討伐隊を組んで捜索。怒りに任せて犯人を切り殺した。あの後、私たち使用人は尋問を受け問題なしと部屋に戻された。奥様とお子様の亡骸は見ることはありませんでした。


 旦那様は大旦那様が領主代行するほど落ち込みました。お嬢様とお子様に会えるのを楽しみにしていたのです。しばらく部屋から出てこられませんでした。半年ほどたって部屋から出てきた時は、あの優しい旦那様はいませんでした。すぐに魔物討伐に赴き、帰宅されませんでした。


 アイザックから付き添った護衛やメイドは、辺境ではあるがこのまま残ってほしいと言われた。帰るにはあまりに遠く。費用も掛かるのでありがたくそのまま残って仕事をつづけた。その後いつまでも未婚ではいけないと。以前の婚約者候補だった今の奥様と結婚されました。わたしは年も取りましたので、動けるうちにアイザックに戻ることにしましたと話してくれた。


 娘が子供を産んでいるなど知らなかった。なかなか妊娠できず、妊娠しても流れてしまったと辛そうな手紙が来たこともあった。滋養に良い薬や食べ物を送った。辛かったら帰っておいでと手紙をしたためたこともあった。今思えば、辺境伯の屋敷をエントランスから賊が襲うとはありえない。護衛がいないことはないのに。娘の部屋だけ目指したとはどういうことだ。辺境伯からも子供のことは手紙には書かれていなかった。月日がたった今ではどうすることもできない。


 手紙をよこした先代領主は亡くなっている。妻はマーサの話を聞いて泣き崩れた。もしかしたら殺されたのではと心労が重なっていった。そんな時取引のあるアダム商会の商会長がララさんの事を教えてくれた。領主としての責務が終える今なら、時間も行動も自由になる。妻を連れて王都でしばらく暮らそう。ララさんに会ってみよう。妻の心が癒せるなら。今更娘のことはどうすることもできない。


 妻の方を見ると幼い娘マリアンヌがいた。妻は思わず抱きしめそうになるのをどうにか堪えていた。他人の空似とはよく言ったもんだ。お転婆だった娘より落ち着いた雰囲気の娘だった。亡くなった孫と同じ年であるのも何かの縁かもしれない。成績も優秀で薬師1級も卒業と同時に取れる。さらに錬金薬の腕もある。妻の話し相手になってくれるだろうか?出来る事ならアイザックに来てくれないだろうか?

いつの間にか私も、ララに娘を重ねた。

誤字脱字報告ありがとうございます

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