24
ララ学生生活を楽しむ 護身講義受ける苦戦する
ララは次々課題をクリアしていった。ネイルとジークも軟膏は合格した。
ダリアとセレーネ、コールは時間がかかったが、座学は合格できた。これから調剤に取り掛かる。
貴族のお嬢さんであったダリアとセレーネは、薬草を見たことも触ったこともない。水洗いすることや刻む等の行為をしたことがなかった。卒業資格を取るに、下働きのメイドがする様なことをしなければならないのが不満であった。
それでもダリアは、ララに指導受けながら取り組んだ。何度も失敗しながら調剤を繰り返した。指は薬草で緑に染まる。黒焦げの鍋を何度も洗う。作業服はシミだらけになった。それでもダリアは諦めなかった。
だがセネーレは下女の仕事など許せなかった。魔法操作も、座学もトップクラスだと自負していた。庶民や下級貴族に負けないだけの教育を受けてきていたからだ。
「さすがに庶民は、こういう下働きの仕事は慣れているわね。私の分はあなたが下準備すればよくてよ。皆さんの物も庶民にやってもらえば早いのに」
幼く見えるララに下準備をさせようとする。ララは口答えできなかった。このようなお嬢様に会ったことがないからだ。ダリアは貴族でも気さくで、失敗しながらも見習い資格を取るために頑張っている。
「自分でできない奴は薬師にはなれない!薬草触れないならやめろ!」
スミス先生は言い放った。
「調剤実習さえ合格すれば、見習い研修は実家だから今を乗り越えればいい」
ネイルとジークは父親の所で、コールは父の息のかかった薬師に見習い研修行くことにしていた。
「こんな事やってられない!錬金講習を受ければ、効能の高い薬は作れる!今の実習は無意味だ!」
何度目かの失敗にネイルとセネーレは言い放った。
「確かに魔力を込めて錬金調剤をすれば、効能の高い製品は作れる。だが、E判定しかもらえない製品がAやB になるわけではない。E以下なら元々薬としての価値はない。錬金調剤しても薬にはならない。
自分の頭と手を使って、身に着けていくしかないんだ。薬師としての技術があってその上に魔力操作を加えることで錬金薬となる。理解できないんなら無理することはない。辞めてもらって構わない」
翌日、セレーネは貴族科に移った。貴族科はどの魔法学園にもある 何らかの事情で専門コースに進めなかった、進まなかった者が卒業資格を取るために残された方法。
学院の卒業資格は結婚にも就職に有利に働くからだ。跡継ぎでない男子にとって、専門職につけなくても卒業資格があるだけで就職や結婚に有利に働く。成績が良ければ猶更だ。庶民は授業料払い戻しをして退学していく。
魔法学園に入学できる人は少ない。さらに卒業資格を手に取れるものはその半数になる年もある。国に仕える優秀な人材が手に入るからこそ国も力を入れている制度なのだ。貴族科は編入試験を受けて貴族学院に編入することもできる。
最終的に、ネイルとジークはすべての製品にⅮ判定を取れた。ダリアとコールは、1か月遅れてⅮ判定をもらい合格した。
ララはスミス先生の補助に入っていた。それ以外の空いた時間、別の講義を受けていた。護身を主にした体術・ナイフ捌き・魔法による防衛と攻撃を学んだ。戦いが専門の騎士科とは違うが、薬草採取や商売での移動がある。盗賊や魔物に教われることもある。体の小さいララは、自分の身を守る術を身に付けたかった。
カレンさんと出かけたときは護衛を雇っていた。学園では目に見えた暴力はない。口さがない人はいた。身を縮め震えているだけではだめだ。暴力を肯定するわけではないが、身を守るための技術は必要だと思った。
体を鍛えるために、毎朝寮の周りを走る・・・気持ちだけでまずは歩く。慣れたら時々走る。先ずは体力をつける。先生から子供と大人程の体格差があるので体術での防衛は、難しいと言われた。得意の魔法を磨く方が良いかもしれない。
得意の風魔法で風の刃を自由に動かして、刀のように目標物を切る。地面に穴を掘る。落とし穴だ。ぬかるみを作って足止めをする。火魔法で線状放出して高温で焼く。目や足、武器を持つ手を狙う。最後は動く簡易結界を張って逃げる。
すべて基本逃げる。長い時間魔法が使えない。とりあえず逃げるための技術を磨くしかない。それでも何もしないよりは良い。
護身術は女子に人気が高い。私の成績は伸び悩む。なんせ逃げの一手だから。体力はないし。でも特別講義なので成績が悪くても卒業に問題ない。
この学園は本来の学習さえ進級できれば、オプションのコースが幾つかある。上流階級との付き合いに困らないためのマナー・ダンス・服装等の講義。商売を行う上での会計事務や商業ギルドの研修。街の治安騎士への参加などなかなかユニークである。
ララは風の刃以外に攻撃魔法を一つ身に着けた。火魔法を線状に向けて放出すると結構威力がある。 息をつめ的に向け矢を射るように。よく見たら的に小さな貫通穴が出来ていた。火・水もそして土魔法で作った石礫でも同様の成果が得られた。威力は強くはないが使いどころが広い。さらにわずかな魔力でいい。連続攻撃が出来る。ララにとって最高の攻撃手段だと思った。
さらに、店の利益計算や薬屋の経営方法などを学ぶ。休みの日はスカーレットの護衛で、ダリアやジーク、コールと近くの森に薬草採取に出かけた。実際使っている薬草を収穫することは、薬草の事を多く知る機会になった。
「ララちゃん。なぜそんなに収穫できるの?見つからない」
「けっ!おかしいだろう。ジークは俺より多いのは仕方ないけど、ララはエルフ(森の住民)かよ」
「コール!その薬草は根っこが必要。薬草によって葉や根や全草だったり、使うとこが違うって習ったよね。新鮮な薬草はそれだけで効能の高い薬が作れるからしっかり目を凝らして」
ララは真剣に薬草を探しているうちに、薬草がわずかに光ることに気が付いた。光り方で薬草に含まれるマナ量の違いまで分かるようになっていった。収穫量が多いのはそのせいだ。
みんなで収穫してララのマジックポーチに保管する。それを使って調剤することで調剤レベルが上がっていった。材料の質の大切さを学ぶこととなった。お昼は野菜やハムをはさんだパンとお茶を飲む。ピクニック?のようだった。
ダリアとネイル、ジーク、コールは、無事に皆資格を取り6ヵ月の見習い研修に出かけた。ダリアは スミス先生の知り合いの元貴族の女性薬師の所に。ネイルはそのまま父親の所で。ジークはスミス先生に相談して実家ではない薬師の所。コールは実家と取引のある薬師の所にそれぞれ泊まり込みでである。
誤字脱字報告ありがとうございます