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【完結】魔法が使えるようです  作者: ちゅらちゅら
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スミス先生、学園長、ネイルとジークの考え

 ドキドキしながララは教務室に行く。ドアを開けると青い髪のノッポの頭が、こちらを向き手招きする。他の教師に頭を下げ手招きされた個室に先生と入っていった。


この部屋は生徒相談の部屋で マジックルームになっている。学園長に見えるようになっている。

 生徒と個室で相談は生徒の安心感のため 第三者の目があることは、生徒・先生を守る為である。結婚してもいい年頃の生徒を預かる配慮である。さらに貴族対応で記録も残される。生徒は安心して相談できる。


ララの場合は呼び出しである。緊張で右手右足が同時に出てしまう。神経質な不機嫌顔がトレードマークなスミスにとっては、ララに誤解されても仕方ない。



 スミスは教師になって5年目である。薬師1級と錬金術士の資格もちだ。最初の調剤エロア軟膏は失敗することは織り込み済み。調剤の難しさを実感させるための授業であった。


特にステップ進級している生徒には、奢りや過信が生まれる。その前に失敗させる。これからの実習や見習研修の為に気持ちを引き締めるためだ。それなのになぜ完璧以上の結果が出せた?確かに魔法基礎講座は優秀な成績だった。教師の間でも話題になった。


だが家庭教師を付けている者ならできる範囲である。だから貴族籍のある者や裕福な者はステップ進級していることが多い。専門コースに進んで躓く。


 ララは学園に通う必要があるのか? ここで学ぶことがあるのか?入学申請には、5年の見習い期間がある。卒業前の見習い研修免除扱いになっている。学園長の確認サインも入っていた。そんなこと今までなかった。それだけでもララは特殊だ。 


「詰問するわけではない。ただ初めてのエロア軟膏でc+ができることが少ない。君は手順をすべて暗記していたね。薬草の選別や洗い方・刻み方すり潰し方、良く解っていたように思う」


「師匠のところで何度もエロア軟膏は作っていました。ただ、用意された薬草は収穫されてから時間がたっていたのでその中でも良いのを選び、汚れを落とし洗浄に使った残りの水分を拭き取り使用しました。その後は教科書通りだと思います」


彼女にしたら特別な手順ではないのだろう。何を問われているかよくわかっていない様子だ。当たり前の手順なんだろう。


「君の推薦者はカレン薬師だけど5年お世話になった師匠は誰かな?できたら名前教えてくれるかな」 

ララは、師匠の名前を出してよいか戸惑った。


「地方の薬師なので名前言っても知らないのでは?」

「これだけの指導ができる人が地方にいることが驚きだよ」

先生は折れない。仕方がない。


「師匠は半年前に亡くなっています。名前はマーガレット様です」

「マーガレットとは国家薬師だったマーガレット様ですか?いやもうとっくに亡くなっているはずだ。同姓同名か?」

先生が思案顔しているところに ベルがなり部屋の戸が開いた。


「スミス先生、学園長がお呼びです。お話中ごめんなさいね」

そんなわけでお話は途中で終わった。ララは、軟膏は購買で売却してもらう手続きをして寮に帰った。


 スミス先生と学生の面談を聞いていた学園長は、マーガレット様のことを詳しく知らないララにはスミス先生との会話は、ララに負担になると考え面談を中断した。そしてスミス先生を呼びつけた。学園長はマーガレット様のことをを、友人のカレンから聞いていたのだ。 


 国家薬師だったマーガレット様は、50年間、国で働いた。結婚して地方に住み薬店を経営していた。魔力量が多いことから薬学以外に魔法全般に造詣が深い。


 結婚後表舞台に出ることはなかった。書かれた論文や著書は多く現在でも専門書として使われている。彼女の著書を読んだことのない薬師や魔法師はいないと思う。


 今の若い者は、魔法書、薬草学、薬師書、錬金薬書の著者として、知られているぐらいだろう。わしらの年代では、雲の上の人だった。才能豊かで、知的な美人だった。作れない薬はないほどだ。王女の病を治し、疫病の薬を作った。魔法カバンを作成し、転移が出来た。攻撃魔法以外の魔法各方面に多大な影響を与えた。


 今回の入学の書類を見て懐かしくなりカレンに連絡入れてた。カレンからも話があるという。あの学生がマーガレット様の最後の弟子であり、孫のように可愛がっていたと伝えられた。


 カレンへのマーガレット様からの手紙には、ララは薬師1級の試験も合格できる才能が有る。複数の属性が使えるが魔力の器が育っていないので力が弱い。風魔法を優先して育てたが回復魔法も使える。


 教会からの勧誘があったため、親元を離れ自分の所に弟子入りさせ転居させた。子供の頃病弱で5歳の時には死にかけたので、教会などに縛られず暮らさせたい。親の願いだ。


 調剤や家事才能があるが、世間を知らず育ってしまったのでカレンに導いてほしい。出来るなら学園に入って、同じ年ごろの子供と触れ合ってほしい。師匠というより孫を思う祖母のようだ。


 ララはマーガレット様の業績は知らない。母の師匠としか思っていない。余分な情報が彼女の成長を妨げる、または彼女の人生に影を落とすかもしれない。ララに師匠の名は告げる時には慎重になれ。  

今は健康で明るい15歳の小さな才能豊かな女の子である。暖かく見守って導いてほしいと書かれていた。


 スミス先生には話しておいたほうが良いだろう。彼の疑問も解けるだろう。神経質で細かい彼だが理解できれば異質なララを受け入れやすいだろう。




  ネイルは休みのたび自宅に帰っていた。母は二人そろっての帰宅に喜びいそいそとご馳走を作った。父の所を訪れた。 

「父さん、これ私たちが学園で作った軟膏見てくれない」

「座学が終わって実地に入ったのか。どれ見せてごらん」

ふたを開け、匂いを嗅ぎ、色を見て、肌につけてみた。その後鑑定機にかけた。 E判定が出た。


「やっぱり」

ジークが落胆した。

「今までなら上手にできていると褒めた。今は薬学を学ぶ者だ。はっきり言う。不出来だ。まず軟膏が滑らかでない。薬草の刻み方・摺り潰し方が悪い。濾し方が悪い。練が弱い。軟膏が緩い。商品にはできないどころか基本が出来ていない。


 座学で習ったことをちゃんとやったのか?教本通りやったら数回練習すればD判定は行く。教本を読み直しなさい」


 ネイルには納得できなかった。自分には調剤の技術は身についている自負があった。この家を継いで薬師になるのはジークでなく自分だとも思っている。

 それなのに素人の女に負ける。許せない。優しい父に酷評されるなど理解できなかった。腹の底から不満があふれる。

 

「わたしは、今までお父さんにも、お弟子さんにも、お母さんにも褒められていた。上手にできているって言われたのに急に下手になるわけない!」


 ネイルは自分は最終調剤さえできれば父の仕事を継げる。薬師を取れば誰にも文句をいわせない。


「ネイル何を言っている。遊びと仕事は違う。お前はこの店の娘だ。誰が遊びで作った薬を正当に評価すると思う。おまえたちは薬師の勉強をするために学園に行っているんだ。現実を知りなさい」

そう言って父は仕事部屋から二人を追い出した。


 ジークは父の言っていることが少しわかった。ネイルは女の子だから誰からもちやほやされた。自分は男だから跡取りだからと、姉より躾は厳しかったと思う。


 父の弟子の兄さんたちも自分には、いろいろ細かいこと言われた。ネイルには何も言わなかった。俺たちは、甘やかされていたんだ。二人は翌朝、兄さん達の仕事をもう一度見る事にした。 


 翌朝、兄弟子が調剤の準備に取り掛かっていた。薬草を選別する者・洗う者・計測する者・必要な薬品を調剤する者、最後に薬師資格者が確認して調剤を始める。


 ジークはそれを食い入るように見る。次から次へと作業は進んでいく。最後に父の所で確認を得て、販売できる商品になる。初めて見る風景だった。いや毎回見ていたが見ていなかった。気が付かなかった。普段自分達が調剤だと思っていた行為は、遊びの延長だったことを知らされた。


ジークは店を継ごうとは思っていない。ネイルの性格からもめ事は避けたい。でも今は、そんなこと関係ない。本当の調剤を身に着けたい。朝から晩まで下働きから叩き上げた兄さん達と違う。学園に通わせてもらえることに感謝しないといけないと思った。


ネイルとジークはそれぞれの思いを胸に学園に戻った。

誤字脱字報告ありがとうございます

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