21 初めての友達とお出かけ
後半担任教師の視点、商会長の視点
他のクラスより基礎講座を早く合格したので、ララのクラスは、自由参加で街に出かけた。初めてのお出かけドキドキする。わずかな小遣いの者も多い。カフェで魔法基礎講座合格ケーキを食べることにした。女子中心と思ったら男子も多く参加した。カフェ集合まではそれぞれ市場を見に回った。
武器屋・洋服屋・雑貨屋・本屋、気ままに仲良しと散策した。これから先同じ講義を受けない人もいる。クラスのお楽しみ会はある意味お別れ会でもある。ララと騎士科に進むスカーレットは、地元で店をよく知っていた。ダリアに連れられあちこち店を見た。最後に作業服や訓練服・日用雑貨は購入しようと思っていた。レースのついたドレスやフリルスカートなどが並んでいるおしゃれな洋品店にダリアが入っていった。
「大丈夫。学園指定の服も奥にあるから心配しないで」
ダリアの家のご贔屓なのかすたすた入っていった。ララとスカーレットは慌てて追いかけた。年頃の女の子三人の来店に一気にお店の中が賑わった。お店の人はいろいろ洋服を薦めてくれたが、ララは購入したのは調剤用の作業服2セットずつ。スカーレットは訓練用の丈夫な上下の服とブーツを購入した。 おしゃれにお金は出せない二人だった。
次は、大きな商店に向かった。洗濯石鹸や化粧品、手荒れ用のクリームに文具まで扱っている。冒険者用のコーナーには、回復薬や野営食なども並んでいた。ララにとっては見ているだけでも楽しい。
ダリアとスカーレットの買い物を待っていると、中年の男性に声をかけられた。突然の声掛けにララは驚いた。
「もしかして、アイザック様のご親戚の方ではないですか?」
「違います。この子は平民なの。アイザック様とは関係ないです。ね!ララ」
ダリアが答えてくれた。
「申し訳ございません。あまりに奥様に似ていたので、失礼しました。私はアダム商会の商会長をしているマルセルと申します。どうぞゆっくりご覧になって下さい」
丁寧に頭を下げた。世の中には似た人が、3人は居るらしいから他人の空似だろう。
ダリアとスカーレットは細々したものを選んた。ララは薬草などの汚れが良く落ち作業着用の石鹸を購入した。帰り際にお店の人から、かわいいポプリが入っていた小袋を渡された。三人で顔を見合わせ、お礼を言ってカフェに向かった。
カフェにはクラスのほとんどの学生が集まった。紅茶、または大人ぶった男子がコーヒーを頼んだ。ケーキを色々頼んで、仲間同士シェアして食べた。ララにとっては、初めての友達とのお出かけだった。クラスメイトとの楽しい語らいはとても楽しい物だった。
ダリアは進路をいろいろ迷ったが、ララと一緒に錬金薬科の道に進むことにした。スカーレットは魔法剣士を目指して騎士科に進む。
錬金薬科には1年生で6名が進んだ。ララとダリアの他に、双子のネイルとジーク、青い髪の男の子コール、1年生のあこがれのお嬢様セレーネである。残り1年で薬師の2級の資格を取り、2年後半で錬金薬師の勉強をする。調剤の学習を学院で受けたのち、半年間指定薬師のところで見習い研修を受けて 最終試験で卒業が決まる。
双子のネイルとジークは、両親が薬師で店舗経営をしている。魔力があるので錬金薬師を目指している。コールはお店に出入りしている錬金薬師に興味を持ち、魔力持ちのおかげで進学することが出来た。セレーネは隣の領主のお嬢さん。疫病の時に助けてくれた薬師にあこがれて進学したらしい。ダリアは自立のために薬師を選んだ。個性的な生徒の担任は、引き続きスミス先生が面倒を見ることになった。
私は魔法第3学園の薬学の教師である。一応貴族だが次男のため長男のスペア扱いで、王都に残っている。武の家系だが自分には向いていない。体の線も細いし力も弱い。魔導士になるほどの魔力はない。無難な教師か文官になろうと思っていたところを先輩に誘われた。魔法学園に勤めることになった。今は、薬学の教師として働いている。子供の頃から植物が好きで図鑑が友達であったせいか、薬草にずいぶん詳しくなっていた。それに合わせて薬師の資格を取り、錬金術にも手を出した。
今年の一年生の中でララという生徒は特異であった。見た目はおっとりとした体の小さい15歳である。この学園で15歳と言ったら遅い方の入学である。体が弱く進学を考えていなかったらしい。 弟子入りしていた薬師が亡くなったことで、進学を決めたらしい。
それより魔力の器が小さいのに魔力量がそれに見合わないほど多い。さらにそれを完璧に制御している。生活魔法の域を超えた属性魔法が使え、回復魔法まで使える。各講義の先生も驚いていた。奢ることもなく同級性への指導も的確。クラスの成績の底上げをしてくれる。
薬師の子供や薬師の弟子だった子供は、ある程度知識がある。商人や貴族の子は、まるっきり素人。在学中の薬師2級合格は難しいだろう。薬師2級合格が卒業資格ではないが卒業後弟子入りしながら資格を取れるだけの力がなければ卒業できない。今年は何人残れるか思案してしまう。
私はアダム商会の商会長マルセル。王都支店に顔を出していた時に、アイザックの領主様の奥様によく似た女の子にあった。奥様というよりお嬢様のマリアンヌ様だ。つい声を掛けてしまった。
庶民だと言っていたが、他人の空似と言えないほどよく似ていた。話してみれば第3学園の優秀な生徒のようだ。丁度王都に出てきているアイザック様の所に明日伺う予定だ。機会があったらお話ししてみよう。
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