20 学園生活
後半ダリア視点
ララは翌日にには、希望講義を提出した。ララは魔力の器が小さいせいで、魔力量に制限がある。魔力操作をしっかり身に着けて、魔力消費効率を上げなければならない。錬金には魔力を必要とするので、より上手くならなければならない。薬師だけなら魔力は必要ない。 効能の高い錬金薬を調剤するには魔力を練り込む必要がある。
入学3日目から魔法座学と合わせて実地講義が始まった。この世界で魔法自体使える人は多くはない。魔力があっても使うためには、誰かに教えを受けなければならない。自力では難しい。
庶民の魔力持ちが魔法を使いこなせないのは、魔法の師を得れないからだ。ララにはソフィーと師匠がいた。だが二人が特別であることをララは知らない。転移が出来たり、難度の高い薬や高級ポージョン、魔法カバンなど作っていたがそれは特別なことだった。
ララは師匠も母も当たり前のように仕事をしていたので、特別感がなかった。それに比べたらまだまだララは、全然追いつけない。頂が高すぎて諦めてた。自分の出来る事を着実に身に着けることにした。導き手が特異な存在であったためにララは普通ではなかった。ララは自分が皆と少し違っていることに気が付かなかった。
「おまえ!おかしいだろう!なんで、そんなに細く長く魔法を流していられるんだ!」
真っ赤な炎のような赤髪の男の子が、つっかかってきた。
「風の刃を自由自在に動かして!木の皮剥いて丸い球作ってるのよ!」
「生活魔法じゃねえ!水量も勢いも、火の玉何個出すつもり?おかしいだろう!」
1、魔力を速やかに体中に巡らす。2、魔力をからだの一部に集める (手・指・腕・足・全体)3、魔力を指先から魔石にゆっくり細く流し続ける (時間がかかるほど良い)4、魔力線で魔力版の溝を埋めていく。(くねくね曲がった溝はなかなか埋められない)5、魔力を的に向かって流し的を射る 6、的の中央に2㎝ほどの穴が開いている。的の距離は50㎝ 順番に魔力線を調節して流す。的は魔力をはじく魔力版なので魔力線が太ければ跳ね返る。
基本操作をマスターしないと次に進めない。各項目で合格すれば、次の課題に進む 並行して属性魔法の技術も上げていく。ララは順調に合格していった。長年魔法の基本だとやってきたことだった。
「こんな事やったことない。こんなに細かい技術必要か?」
「これから専門コースに行くのに、泣き言言うな。これは基本だ」
容赦ない言葉に項垂れる生徒多数である。
「信じられない!なぜ出来るのよ!私の方が魔力量あるのに。針穴を通すなんて、できるわけないじゃん!ララ、助けて。何かいい方法ある?」
「特別な方法なんてないよ。子供の頃から遊びのように穴通ししたり、魔石に魔力詰めたり、魔法陣をなぞったりしたのよ。遊ばなかった?」
「しない!絶対しない‼そんな疲れる遊びしないよ」
ララは野山を駆け巡れなかったから、家の中で遊ぶしかなかったのだ。
ララは早々に試験に合格した。空いた時間は同級生の指導に回ることになった。特に魔力量が多い者は、繊細な魔法制御が苦手であった。身体強化はできるが部分的な強化が出来ない。全身の身体強化では魔力と体力消耗が、激しく長期戦には向かない。なかには魔力の消耗が激しく、意識を失い、昏倒する者もでる。戦いに特化した魔法は、第1学園の魔導士が行うのが常である。
繊細な制御が出来ないと魔力の流しすぎで気分が悪くなる。魔力枯渇1歩手前。そのために、自己の魔力の管理は、魔法を使う者には最重要課題だ。魔法行使を伴う専門職は、時と場所によっては死を意味する。
ダリアは貧乏貴族3女。子供の頃から元気が余っていた。勉強より兄と遊ぶ方が楽しかった。刺繍なんてハンカチが血だらけになって、先生が匙を投げた。座学は寝ちゃうし、ダンスは足踏みすぎて先生が辞めていった。
上の姉たちは、普通にお嬢様してドレス着て社交していた。一度姉に連れられてフリフリのドレス着てお茶会に行った。お茶会なのにみんなお茶を飲まずお話ばかり。目の前のお菓子に手を出しら、姉に手を叩かれた。
つまらなくなって庭に出た。ピンクのカエルを見つけた。珍しいので、皆に見せようと捕まえていったら大騒ぎになった。その後帰宅して、姉は大泣き。私はドレスを泥んこ汚れで再起不能にした。べつに気にしなかったけど。
それから私は、必要最小限の勉強で済んだ。両親は私の将来を心配した。姉たちが無事貴族に嫁ぎ、兄が結婚して子供ができた。我が家は安泰。残った私は、独り立ちできる道を探すことになった。貴族令嬢にはなれないので、魔法で身を立てようと手頃なとこで第3学園を選んだ。魔法学園に入るだけの魔力と知識はぎりぎりあった。甘い考えで進学してみれば、クラスの皆の真剣さに、先生の厳しい指導に驚いた。
進路や目的が明瞭な生徒ばかり。その中に同じ15歳なのに体の小さな栗色の目をしたかわいい女の子がいた。ちょっとボーとした、緊張感があまりない私のような子だった。私は同じ錬金薬師目指していると最初に声かけてみた。どぎまぎしている様子が、妹が欲しかった私には可愛く思えた。母親が薬師1級を持っているらしく、本人もその道に進むらしい。
ぽよぽよした子かと思ったらとんでもない子だった。魔力は多くはないのに、2・3時間続けて魔力を流し続けられる。魔力線を1m離れた3ミリの穴に軽々通す。さらに針穴サイズまで。クラス中大騒ぎになった。先生もびっくりしていた。しばらくしたら先生の補助に回った。50㎝先の1㎝の穴に通せばよいのだが、そんな正確さ今まで必要なかったから、誰もできない。できる方がおかしいと騒いじゃった。
魔力線の穴通しは失敗すると、魔力線の太さに比例して跳ね返りがある。小さい火傷をしてしまう。さすがに細い魔力線を出そうと頑張っているので、大火傷はしないが指先は敏感で地味に痛い。痛みだけでなく、いつまでもピリピリとした違和感が残る。そのせいで集中力が切れる。穴に魔力線を通せなくなる。悪循環だ。無駄な回数の練習は疲労が増える。成果が見えない繰り返しは、学習意欲の低下を生む。多くの生徒が陥っている現象だ。
ところが、ララが指導側に加わったら、小さな火傷は彼女が治してくれた。回復魔法が使える。この程度の傷なら治癒できるらしい。それも火傷を冷水で冷やし、回復かけてくれるからピリピリ感も残らない。さらに傷跡が残らない。何度でも練習ができ効率が上がった。他のクラスでは、指の治療待ちがでる。ララをよそのクラスに引き抜かれては困るので、ララの回復魔法はクラスの秘密になった。
居残り練習の生徒のために自作のお菓子や、美味しいパンケーキを作ってきてくれる。あまりの美味しさに、男子女子ともに争奪戦が、ララの知らないところで起きていた。彼女を中心にいつの間にかクラスは纏まり、クラス一丸となって課題に取り組む。1年全体の中で我がクラスが基礎魔力の講義を最短で合格した。
誤字脱字報告ありがとうございます