19 学園生活の始まり 友との出会い
ふっと目が覚めた。知らない天井… 見渡してみれば新しい自分の部屋だった。シンプルな部屋の中は昨夜と変わりはない。窓の横の小テーブルの上に小さなポポがいた。ポポを恋しがって寝たせいで幻を見ている? 小さなポポがとことこ歩いて私を見てる。
『いつもそばにいるから』
子供のような声が頭に響いた。ポポは不思議な犬。ララの言葉が分かる。母様が ポポは、森の守りの子供だと言っていた。ララは聖獣様に気に入られているのよと言っていた。
ポポは、小さくなってララの側にいる。勇気が湧いてきた。
白いブラウスに、新緑のブレザーとパンツ。鏡の中の女の子にとても似合っていた。15歳にしては小さい身長と細い体。目はくりっとして肌は白い。栗色の髪は肩までの長さ。美人ではない。健康なら他はいらない。
7の鐘に合わせ食堂で朝食をとる。筆記用具を入れたカバンを持って、本館1階の1クラスに向かった。教室の中には20名ほどの生徒が集まっていた。教室の中は緊張感が漂っている。自分の席について周りを見る。会話している人は少ない。女の子はほとんどがスカート。パンツ履いてるのはわたしを含めて二人。9の鐘とともに、背の高い青い髪の20代らしき先生が入ってきた。
「今日からこのクラスを受け持つ、スミスです。皆さんの学習の手助けをしていきます。薬学を専門にしています。では右の君から自己紹介をしていってください。名前はファーストネームだけでいいから。あと年齢、専門選択が決まっていたらそれも一緒に」
12歳から入学許可が下りているので、私より年下が多いと思っていたが、専門コースが目的なので年齢にばらつきがみられる。自己紹介が終る。
「入試合格の時点でクラスは成績分けしてあります。このクラスは成績優秀者のクラスです。専門選択もほとんど決まっているようだから、そのつもりで3年間頑張って欲しい」
「今日から一年は基本科目と魔法行使の技術の向上を図ります。その後専門的学習に進みます。どの方向に進路を決めようと、基礎となる魔力操作は基本になります。手を抜かぬようにしてください。魔力操作なんて簡単なんて思っていると試験に落ちますから。 逆に成績優秀ならステップという制度があります。
各科担任が試験をして合格であれば短期卒業が出来ます。逆に試験に繰り返し落ちれば、自ら退学していくことになります。留年という制度はありますが、学習の遅れでの留年は認められていません。また、ステップした残りの時間をほかの講義に振り分けて学ぶこともできます」
息をのむ音がした。さすがに専門職育成の学園。厳しい学生生活になりそうだ。ララは気を張り詰めた。講義内容の説明と講義選択の希望を明日までに提出することになった。受講時間によっては自由時間や休みの日が出来る。それについては自己責任。遊ぼうが仕事しようが自由である。3年間に資格なり技術を身に着けて、必要な試験に合格すれば卒業できる。今までと違った生活になりそうだ。
午後はお休み。一年目の受講科目を決めなければならない。先に、学生食堂で昼食をとる。教室か図書館を利用しようと歩き始めた。うしろから急に声を掛けてきた。
「初めまして、わたしダリア、15歳。あなた錬金薬師目指してるのよね。私と一緒。もし良かったら受講講座一緒に決めませんか?もちろん昼食が先だけど」
笑顔の可愛い緑の髪の女の子だった。頭一つ分私より大きい。そしてスカートでなくパンツをはいていた。腕を引かれるように食堂に連れられ、シチューとパンとサラダのセットを頼む。
「もっと、肉を食べないと大きくなれないよ。わたし大盛にするから、肉1枚上げるね。ここは、大盛でも料金変わらないの。男の子なんてみんな大盛」
元気溌剌としたダリアに振り回されるララ。美味しく食事を食べ、紅茶を飲んで教室に戻ることにした。おしゃべりしながらでは図書館は使えない。ダリアは、本人曰く貧乏貴族の3女、美貌はそこそこだが元気が良すぎる。両親は早めに結婚と思ったようだが、じゃじゃ馬娘に手を焼いた。自活できれば好きにしなさい。結婚資金を授業料に変えてもらったと、笑って話してくれた。
受講講義は、基礎講座は基本必要。魔力操作の時間を多くとる。魔法座学 属性講義は風。あとは自衛手段の講義を取らないと。体術?ナイフ? 剣?風魔法かな?ダリアは私と被る講義が多いせいか、ララ任せで他の女子と話し始めてしまった。気が付いたら6人ほどのグループになっていた。仲良くやっていけるだろうか?
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