13
師匠に手渡された白い布かばんを斜め掛けにして、ポポも一緒に買い物に出かけた。師匠は少し足が悪い。年齢によるものだと言っていた。二人と一匹は ゆっくり、石畳を下りながら、この街の話をララは師匠から聞いた。
ここはフランク国の南に位置する、地方都市リトニー。地方都市では大きな街。国の南に位置しているので、気候は温暖で住みやすく多くの人が暮らしている。土地は豊かで国の食糧庫の一つ。しばらく歩くと、賑やかな声が聞こえてきた。
「モリー、こんにちは。今度から、ララが買い物に来るから、よろしくね。ララここは、とても新鮮でおいしい野菜や果物があるの。重いときは配達もしてくれるのよ」
恰幅のよい、しっかり者のモリーは、師匠がララを紹介するととても驚いていた。家事見習いにしても、小さいからだろう。あとから聞いた話では師匠は、師のおばあちゃんは、家に閉じこもり、ほとんど店に来ることはなかった。モリーの名前を知っているとは思わなかった。どれだけ街に馴染んでいないんだ。生きてこれたことが不思議。
「こんにちは。私は、モリー。野菜と果物ならいつでも声かけて。家には、ジャックとモモという、10歳の双子がいるの。仲良くしてあげてね」
モリーさんは優しいお母さんだ。
「マーガレット様、ララさんは?」
「娘のような弟子の子供でね。私の孫といってもいいかな?一応弟子だな」
ララはぺこりと頭を下げる。知らない人と話すのは苦手。
「こんにちは。ララです。よろしくお願いします。じゃがいもと人参、玉ねぎ
リンゴ下さい」
ララは、言い切った。初めてのお使い。お金は師匠が払って、荷物は私の布かばんに入れた。
そのあとも、店ごとに同じ会話をしながら、私の紹介は終わった。特に必要な肉屋、雑貨屋、服屋、を回り必要なものを買って、肩掛けかばんに入れていく。いくらでも入って、重くない。師匠からの贈り物だった。
家に帰ろうとしたとき、ポポがすぐ先のお花屋さんに走っていった。追いかけていくと、かわいい色とりどりの小花の苗が売っていた。ポポは、クンクンと匂いを嗅いでは私の方を見る。雑草の生い茂ったに庭を思い出す。レンガと花の苗を購入した。
さすがに土汚れになるので、配達してもらうことにした。帰ったら、洗濯物をたたんで、夕飯の支度して、明日は 庭の手入れかな……。考えながら来た石畳を師匠とポポと並んで帰った。
商店街で ちょっとした騒ぎになったらしい。引きこもりの薬師さんが、少女弟子を連れてきた。今まででも、お弟子さんはいたが、わざわざ紹介しに来たことはないからだ。
「モリー、かわいい子だったね。ジャックやモモちゃんと同じくらいかね。これからの買い物は、あの子が来るんだろうね。薬師さん、嬉しそうだった」
「そうなの、時々頼まれて、果物や総菜を届けたことあったけど、ちゃんと買い物に来るなんて凄く久しぶり。庭なんて雑草だらけで、心配になって、ベルを鳴らしたことがあるの」
「私も。雑貨屋のエリーも心配していたのよ。傷薬とか卸してもらっているけど、お弟子さんがいなくなってからは彼女か、薬を受け取りにいってた。お薬はきっちり作ってくれるけど、元気がないようだったて言っていたわ。
明るい弟子が出来て良かった」
「年齢も年齢だし、足も弱ってきている。心配していた。子供のころからお世話になっていたので、気になっていた」
師匠は街の人達に好かれていたようだ。本人は気にしていないけど。ララは 街のみんなに、暖かく受け入れられた。商店街の子供たちとも顔見知りになった。
誤字脱字報告ありがとうございます