12 ララの弟子入り
ララと師匠の生活
ララは森のお家から,マーガレット様と手をつなぎ、子犬のポポと一緒に転移した。森のお家と同じくらいの大きさの赤い三角屋根のレンガ造りのお家。周りは同じようなお家が沢山並んでいた。ララが住んでいた街より大きな街のようだ。
ほかの家の周りは、かわいい花が咲いた花壇があったり、小道が作られたりとかわいく庭が作られている。マーガレット様の家の庭?花壇らしきものはあるが、花の代わりに、しっかり根を生やした雑草が生い茂っていた。マーガレット様が大きな木のドアを開けると、ふわりと埃が舞った。母様が言ったとおりだった。マーガレット様は、丸い眼鏡をエプロンで磨いている。中の部屋に入る。
「ようこそ、ここがララの第2のお家。2階の南にあなたの部屋を用意しました。ソフィーが使っていた部屋よ
荷物を置いておいで。お茶でも入れようかね。お茶あるかしら……」
マーガレット様は台所に向かった。
私はポポと一緒に、2階に駆け上がった。黄色い花飾りのついたドアを開ける。薄黄色のカーテンがふわりと揺れる。花柄のベットカバーは母の手作りだった。本棚、クローゼット、色ガラスで作られた魔石ランプと勉強机。小さな丸いテーブルと椅子が窓際にある。その横にポポのベッドが並んでいた。
急いで荷物を片付け家から持ってきたお茶とクッキーを持って1階に降りていった。師匠は台所で、一人うろうろしていた。
「私がやります。座っていてください」
散らかっているのは、後で片付ける。今はお茶を入れて、クッキーを出そう。まずはお湯を沸かして、テーブルの上を片付ける。ララは改めて挨拶をした。最初が肝心と意気込んでしまった。
「師匠、今日からよろしくお願いします。ポポも受け入れてくれて、嬉しいです」
「こちらこそ、よろしくね。台所の奥に私の調剤室があるの。そこにベッドもあるから、寝起きも仕事も同じ部屋。ほとんどはそこに居るから、何かあったらそこのドアをノックして声かけてね。まずは、この生活に慣れないとね。あとで、街に買い物に行きましょう。今日食べるものないからね」
師匠はお茶とクッキー持って、調剤室に入っていった。母様の言った通りだった。とりあえず、生活できるように周りを整えないと何も始まらない。持ってきたエプロンを付けて、腕まくり。掃除道具を探し始めた。
「ポポ、埃まみれになるから2階にいていいよ。お外に出ても、お庭から出ないでね。迷子になったら困るからね」
ポポは解ったと言いたげに「わん」とほえて、庭に駆けていった。 雑巾は家から持ってきた。師匠のとこにあるかわからないと母様が言ったから。何枚も縫って持ってきた。外の井戸の横のバケツに水を汲む。落ちているものは、ごみと分かっているものと、確認の必要なものとに分ける。分別箱を作った。
窓を全開にする。風をくるくると回し埃を集め窓の外に吹き出す。以前より風は上手に回り、効率的になった。部屋の中の埃がなくなる。空気が爽やかになった。次に雑巾で床や棚、テーブルと椅子を拭き清める。台所は磨かないといけない。トイレには清浄の魔法が設置されていて掃除は不要だった。
料理に必要な鍋やフライパン、ナイフにまな板、あったけど随分使ってないようだ。食器も全部洗い直しが必要。やることが沢山である。洗濯物は、お風呂場のかごに入っていた。通いのお手伝いさんを頼むこともあったようだ。桶に石鹸とぬるま湯を出して、洗濯物をぐるぐる回す。水を入れ替え2回。最後に脱水。今から干せば乾きそうなので力が入る。
くるくると動き回るララを調剤室からマーガレットは見ていた。この家に迎えるにあたり、何度か森の家でララと話をした。守り犬の妖精と庭を散歩したり、薬草の世話を一緒にしたりして過ごした。
母のソフィーと二人暮らし。それでも、私となじむのは早かった。
昔、ソフィーが同じように掃除していた。ソフィーの方が静かだった。最後の弟子が出て行ったからずっと一人暮らし。もう、年だからと弟子は取らず静かに暮らすつもりであった。ララのおかげで、楽しい日が迎えられそうだ。
マーガレットは、大切なソフィーの願いを、ララの願いを、出来れば叶えてあげたい。最後の時間をララと過ごそうと思った。洗濯物を干しているララに声をかけた。かわいい孫を連れて、買い物に出かけましょう。
「買い物に行くよ」
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