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06

「俺が高校生の時の話しだ、学校帰りに俺はどうしてもトイレが我慢できなくなってなぁ……」


「いや、なんだよその出だし……」


「まぁ聞け! そして……俺はとうとう公衆トイレを見つけて入ったんだが……何の因果か、俺はこの異世界にやってきちまった」


 トイレから異世界ってどう言うことだよ……。

 まぁ、こんな異常事態だし、そう言われても信じるしか無いんだけど……。


「それで、なんやかんやあって魔族の王様と会って、戦争なんかやめろよって言ったらやめてくれた、以上」


「いやざっくりし過ぎだろ! もっと色々あったんじゃないのかよ!」


「いや、大体そんな感じだぞ? あ、そのとき捕まってたお母さんを助けたんだ」


「あの時のお父さんは格好良かったわ」


「今の話しのどこにカッコイイ要素があるんだ……」


 まぁ、本当にざっくりだけど少し分かってきた。

 親父は異世界に転移してきて、この世界の戦争を止めた。

 その功績が認められたのと、母さんを助けた事が切っ掛けで母さんと結婚したってことか?

 そして俺が生まれたのか……いやでも待てよ。

 

「だったらなんで親父と母さんはこの世界で生活してないんだ? 普通ならこの世界で生活するんじゃないのか? てか、良く元の世界に帰れたな……」

 

「それが今回の話しの肝だ」


「え?」


 親父はそれまでのヘラヘラした感じから一転、真面目な表情で話し始めた。

 

「本当なら、この世界で家族三人仲良く暮らせればよかったんだが……ある問題が出てきた……それは……」


 親父が話し掛けた瞬間、勢いよく部屋の大きな扉が開き、武装した兵士達が流れこんできた。


「な、なんじゃ貴様ら!」


「何事ですか!」


 兵士達は中に居た兵士や国王、そして親父と母さんに槍を突きつけた。

 一体何が起きているのか、俺にはさっぱりわからなかった。

 すると武装した兵士の背後から誰かがゆっくり歩いて王座の前にやってきた。


「お久しぶりですね……英雄ゴウ・ストレイヤー……いや、今は高山剛太郎と言うのが適当なのかな?」


「………ヘリオス……自分が何をしてるのか分かっているのか?」


「えぇ、分かっていますとも……駆除ですよ、この国に有害な害虫のね」


「……お前……やはり謀反を……しかもこのタイミングで……」


「ふふ、貴方がこの国に帰ってきたタイミングを私は待っていたんですよ………一番の天敵である貴方をね……そして……貴方の息子の命を……奪うことをね……」


 ヘリオスと呼ばれた男は親父と同い年位の金髪の男だった。

 豪華な装飾の甲冑を身に纏い、腰には剣を携えている。

 ヘリオスは親父にそう言うと、俺の方にゆっくり近づいてきた。


「私は貴方をこの二十数年間ずっと恨んできた……貴方が和平交渉などという話しを国王陛下に持ってくるから! 私は!!」


「ひっ!」


 ヘリオスはそう言いながら、俺の喉元に剣を突き立てる。

 俺がそれに驚いていると、目にもとまらぬ早さで、親父が俺とヘリオスの間に入った。


「悪いことをしたとは思ってるさ……でも……なんで謀反なんか起こす! 俺一人を狙えばいい話だろう!」


「分かっていませんねぇ~、私は栄光が欲しいわけでも、貴方を殺して憂さ晴らしをしたい訳でもない……この国の王になりたいのですよ!!」


 ヘリオスと親父はそんな話しをしながら、戦闘を始めた。

 ヘリオスが剣で親父に斬りかかり、親父はその剣を素手ではじき返す。

 しかも二人の戦闘速度は早く、目で追うことすら出来なかった。


「母さん!! 勇を連れて逃げろ!! ベリル! 国王と王妃を頼む!!」


「おう、任せろ!」


「わかったわ」


 クラミイの父親であるベリルさんは、国王と王妃の元に急ぎ、母さんも親父同様に目にもとまらぬ早さで俺の元にやってきた。


「勇、ここは危険だから早く外へ!」


「い、一体何が……」


「話しは後よ!」


「そうはいきませんよ!」


 俺と母さんが逃げようとすると、ヘリオスは手をかざした。

 ヘリオスが手をかざすと、部屋中に大きな魔方陣が広がり始めた。


「こ、これは……まさか!?」


「そうだ、そのまさかだ! 覚えているだろう? 禁断の魔法を!」


「まずい! 勇! メアリア!!」


「ふっ! 隙を見せたな!!」


「ぐあっ!」


「親父!!」


「貴方!」


 ヘリオスの話しを聞き、一瞬慌てた親父の背中をヘリオスは切りつけた。

 俺は一瞬、目の前で起こっている出来事が本当は夢じゃないのかと思ってしまった。

 親父が血を流して倒れているなんて、信じたくなかった。

 何が起こっているのか、俺はまったく分からなかった。

 しかし、これだけは分かった。

 親父が殺される。


「親父!!」


「うっ……うぅ……」


「ふははは!! 見ろ! 平和の英雄も禁断の魔法の前では無力だ! お前はまだ生かしておいてやる、その前に……お前の息子を目の前で殺してやろう……」


 ヘリオスはそう言いながら、俺の方を見てニヤリと不気味に笑い、剣を持ってゆっくり歩いてきた。

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