第五話『早すぎたのにゃん』
第五話『早すぎたのにゃん』
《にゃもんで頭が真っ白にゃん》
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「——なぁんで、いっつもいっつも、
とどのつまりが、
『食いもん』な話になるのわん?
なぁんで『キレイ』な話で、
とどまってはいられないのわん?
んれが、
『ネコを親友に持ったもんのたどる道。
運命なの』
とでもいいたいのわん?
……おおっ、とぉ。
危うく、こっちも、
『我を忘れる』ところだったのわん。
もっともぉっと大事な話が、
……ええとぉ……なんだっけ?
確かぁ、
お花見がどうのこうの、
ってぇ……んれだぁっ!
お花見、お花見なのわぁん。
お花見のお花に、
重大事件がボッ発なのわぁん——
ところが……ところが……ぐすん。
あまりの光景に、
『頭、真っ白もん』なのわん。
現実がアタシに、
こうもつらく当たってくるなんて、
……ぐすん。
夢の夢にも思わなかったのわぁん」
「ミーにゃんの気持ちは痛いほど、
よぉっく判るのにゃん。
目の前に拡がる樹々の群れ。
その枝についてる一つ一つが、どれも」
『つぼみ』
「ばっか、にゃもんにゃあ」
「なぁんでぇ!
どうしてなのわぁん!
あぁんなにも時間をかけて、
苦労に苦労を重ねて、
やっとこさ、
たどり着いた、っていうのにぃ!」
「時期が早かったのにゃん」
「んだから、時間をかけて」
「それでもまにゃ早かったのにゃん。
この分にゃとぉ……そうにゃにゃあ。
満開までは、
『あと一週間』ってとこかにゃん」
「このアタシが見込み違いをするなんてぇ。
くっそぉ。
とぉんだ恥さらしなのわん。
このままではいられないのわん。
よぉし。
汚名を挽回しなきゃあ。
イオラの森のお姫さまの、
意地に賭けても誓うのわん。
一週間後にもまた」
『リベンジ』
「再挑戦なのわぁん!
……ねっ、ミアン」
「いっち抜けた。
あとはひとりでやってにゃん」
「ええぇっ!
ミアンが抜けたら、
誰がアタシの名代なんかに、
なってくれるというのわん?」
「あんた自身にゃ」
「んなアホなぁ!」
「アホじゃにゃいのにゃん。
にゃってそうにゃろ?
名代にゃんぞおっ立てるよりも、
ミーにゃん自身がやったほうが、
すぅっきりのきり、にゃもん。
さぁてと。
ウチはそろそろ帰るとするのにゃん。
にゃあ、ミーにゃん。
行きは、
ミーにゃんが『完全霊体化』で、
ウチは『まんま』にゃったのにゃけれども、
戻りは逆にしようにゃん」
「ええとぉ、逆ってことは……うわん!
アタシに、あの地獄のような難所を、
突破させるつもりなのわん?
冗談じゃない。どこの誰があんな」
「にゃったら今回の件も、
イオラにゃんには、
ナイショにしてあげるのにゃん」
「うっ」
「にゃあに。
翅を持ってるのにゃもん。
にゃんとかにゃるにゃろう。
んにゃら、ミーにゃん。
ご健闘を祈るのにゃん」
のっしのっし。のっしのっし。
『ウチも満開のお花を見たかったのにゃあ』
のっしのっし。のっしのっし。
「んなアホなぁ!」
《やれやれ。骨折り損のくたびれもうけにゃった》