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如何物喰い  作者: 蓮の華
導入
2/51

導入 壱

それなりに栄え、それなりに遊ぶところも充実している、少し入ればそれなりに大きい繁華街もある。

そんな町並みに俺が通う大学がある。

親に勧められそこまで深く考えずに決めた大学だが、二年弱通ってさほど悪くない大学だとは認識している。

数は少ないが友人にも恵まれ、リア充とは言わないが灰色とは感じない、それなりにキャンパスライフを謳歌している。


大学から徒歩で20分程度の所にあるアパート、二階建て築八年、最寄りの駅まで徒歩15分。古い訳じゃないが新しくもない、一階二階合わせて八部屋、1K、良い点を上げると風呂トイレ別、家賃が平均より僅かに安いくらいの良物件。

そこの二階の一室が俺の城だ。



さして急ではない階段を下り、今日も今日とて大学へと向かう。もはや暦の上では春だというのに気温は10度を越えることはなく、吐く息は白く染まる。新調したマフラーを口元まで引き上げ、身を竦めながら歩き出す。



強いて俺の城の悪い点を上げるとしたら、二年弱も住んでいるのに隣の住人が謎のままなのが不気味な程度だ。生活音は聞こえるのに、本人と顔を会わせたことが一度もない。

まぁ、五月蝿いとか壁ドンされたとか迷惑を被ったことがないのでさして気にはならないが。




今日は二コマ目からなのも相まって、歩きでも余裕で間に合う時間に家を出た。

すでに目覚めきった街は、寒いなかでも騒がしく日常が始まっている。実家の周りに比べたら大分騒がしい。ひっきりなしに車が行き交い、様々な店が、ビルが立ち並ぶ。




実家は隣の県だが、最寄りの駅から在来線で乗り換えがなければ一時間半程度。正直なところ、実家から通えないこともない上、今の今まで家事なんてやったこともない俺にとっては実家を出るのは気が進まなかったが、両親から大学生になったのだから、とこれ幸いと追い出されたのだ。



俺には両親と歳の三つ離れた妹がいるが、両親曰く


「うちは妹が継ぐから、早いところ婿入り先を見つけてくるといい」


とのこと。

我が親ながら冷たいことだ。


確かに妹は成績優秀眉目秀麗難攻不落絶対無敵七転八倒妹君だが、それにしても早々に長男を婿に出すのを決意するのは些か薄情というものではないだろうか?

確かに両親は両方ともどこか人間離れしているというか、なに考えているか分からんところがある。


「僕の職業かい?僕は正義の味方さ」


と、小学五年の時に宿題で出された、僕の両親の職業について調べてみよう、という課題に対しての父親の回答がこれだ。


「うふふ、私の職業?悪の幹部かしらね?」


とは母親の回答。


そしてそれを信じて素直に正義の味方と悪の幹部を調べて提出した純心だったあの頃の俺。


余りの悪ふざけ具合に、宿題を見た教師は俺だけ臨時で行われた家庭訪問でその宿題を両親へ見せたが、両親は揃って良くできてると俺を褒めた。その後、教師からは残念な子を見る目で見られて優しく励まされた。俺は悪くない。


まぁ高校の時に夏休みを利用して出勤する父の後を追い、お役所勤務なのを確かめたのだが。それから俺はようやく、君の親御さんって何してるの?って言葉のトラウマから脱出することが出来たのだ。無論家にいることの多い母親は普通に専業主婦だった。


まぁ親が公務員というのもあり、わりかし裕福な家庭で何かに困窮した思い出はない。望むだけ、とは言わないが最新のゲームも家にはあったし、自分の学費や生活費も親が払ってくれる、妹君も実家から少し離れた余り名の知れない私立の高校へ通っている。まぁ妹君の場合は特待生らしく、主にかかっているのは交通費だけらしいが。

学費も生活費も出してもらってる身としては、大学生になってからそこそこかかるようになった交遊費については、おんぶにだっこのまま追加請求するのも憚られ、生活費を僅かに削り、バイトをすることで賄っている。

豪遊とはいかないが、普通に金をかけて遊ぶくらい出来る手持ちに不満はない。




愉快な家族だが恵まれた方の環境、なに不自由もない人生を送ってきた俺、仏間拓也(ふつま たくや)の日常は今日も始まる。











騒がしい街並みを抜けて大学へ辿り着く。

時間的には大分余裕がある、まだ一コマ目も終わっていない。

少し時間を潰そうかと、部室か食堂にでも向かおうかと思ってた時に向こうから手を振り近付いてくる男。


「おーい!拓也」


「おー。どした、なんかあったか?」


真っ黒黒髪短髪、高身長の縁なしメガネのよく似合うインテリ、典型的な“黙っていれば”それなりにイケメンの友人。円城英之助(えんじょう えいのすけ)だ。

英之助がテンション高めに近づいてきたと思ったら嬉々として握りしめていたものを差し出してくる。


「これは中々良いものだぞ!」


「うん?…?石?」


握り拳くらいの石を急に差し出されたので思わず受けとる、しみじみ見ても石、角度を変えて見ても石、確かに面白い形はしてはいるが、どう見ても石だ。


「河童の尻子玉だ!さっきそこのトイレの近くで見つけた」


「そぉーーい!!!」


遠くの茂みに落ちて行方不明になる石。


「何をする!河童だぞ!おそらく尻子玉っぽい石!!トイレの近くに落ちていたのだから間違いない!」


「そのトイレが問題なんだよっ!」


このイカれた友人は、俗にいうオカルトオタクなのだ。琴線に触れた物をオカルティックに解釈してみたり、東に妖しい遺物があれば鑑賞しに、西に心霊スポットがあれば探検しに、悪魔召喚から地域伝承、ホラーゲームまで、古今東西オカルト寄りな事が大好物なのだ。オカルトが絡むと変なテンションになる以外はよい友達だ。


「まぁいい、拓也、次の講義をとっていたよな?まだ少し時間もあるし部室に寄っていかないか?」


「はぁ…、いいよ、講義まで寒さを凌ぎたかったし…」


探す様子もなくあっさりと石に対する興味をなくした英之助にため息が出る。


「…あれ?そういや英之助って今日は午後からの講義だけじゃなかったか?」


「ああ、しかし早めに起きてしまってな、部室の蔵書を漁ろうかとな」


「そら勤勉なこって…」


英之助とは長い付き合いだ、やるゲームのジャンルが限定的だがゲーム友達ということもあり、中学で一緒のクラスになってから今まで付き合いがある。


コイツは本気で目指せば有名国立大だろうと合格できるくらい頭がいい。

しかし残念なイケメンである英之助は、高校は単に一番近く手頃な偏差値だから。そしてこの大学には、現代怪奇研究部、所謂オカ研がある、という理由だけでここへ入学を決めたのだ。


まぁ環境が変わり人間関係がほぼリセットされた中で、最初から友人が1人いるだけでボッチ回避のために友人作りに奔走しなくて済んだのは行幸だった。


「今日はまたバイトか?」


「ん?あぁ、明日休みだし、六時からラストまで」


「そうか…残念だ」


「ちなみにバイトがなくても休日潰してオカルトツアーには同行しないぞ」


「…なぜ分かった」


「分からいでか」


コイツから予定の確認されたら大体はオカルト絡みだ。

先日は飲みに誘われたと思ったら、心霊バーとかいう飲み食いしてる時に驚かされる、お前それもはや心霊(物理)じゃねぇかっていう頭おかしい店だったし、その前に昼飯に誘われた時は儀式カフェとかいうやたらリアルな臓物とか魔方陣が所狭しと並べられた中で食事するとかいう頭おかしい店に連れていかれた。まぁ分かってても暇なら付いていってしまう俺も俺だが。

勿論両店とも近日中に潰れて普通の飲食店になっていた。


「そんなことでは現代怪奇研究部の次代を担うには力不足だぞ」


「担うつもりもないし、担いたいとも思わねぇよ…」


そう、俺も残念ながらこのオカ研、もとい、現代怪奇研究部の部員の1人なのだ。


仰々しい名前とは裏腹に、部室はどちらかというと図書室のように清潔でそれなりに広い。蔵書は魔術書みたいな怪しい本は少なく、歴史書や民俗、風俗の研究書ばかりだ。まぁこのイカれた友人が嬉々として魔術書を集めて寄贈し徐々にオカ研らしく染め始めているのだが。


そしてオカ研にしては破格であろう部員数は32名。

ただし、予想はつくとは思うがそのうち29名は幽霊部員。しかもろくに勧誘もしていないのに何年経っても毎年32人の在籍があるという、オカルトらしいと言っちゃらしい逸話がある。この在籍人数も相まってか、大学からは幾ばくかの部費が出ているのも驚きだ。サークルなんかは部室もないのもザラなのに、たかがオカ研に大層なことだ。


まぁ、そんな地味に優遇されている現代怪奇研究部だが、幽霊部員は幽霊らしくさっぱりも部には顔を出さない、徹底した幽霊部員ばかり。部室に顔を出すのは部長と俺ら二人だけ。


最初は大学生らしく噂に聞く飲みサーとかに入ろうかとドキドキして見学に行ったら、入会しているのは基本チャラく、どうにもこうにも馬が合わなさそうな連中ばっかりで早々に断念した。

しかし、ある程度大学生らしい生活に憧れてた俺は、腐れ縁のある英之助に誘われて現代怪奇研究部なんていう部に所属しているのだが。


「なぁ、最近は部長と一緒になんか活動しているのか?」


「む?名無部長とか?」


名無麻依(ななし まい)


現代怪奇研究部の部長にして女性ながら生粋のオカルトマニア。

これまた黒髪を短く揃え、目元を隠すように伸ばした前髪。小柄な体格の一年先輩。専門?は妖怪や土着信仰、オールマイティーな英之助に比べると狭く深い守備範囲だ。


「名無先輩の話は僕も知らない事が多く為にはなるが、基本足で稼ぐ僕とは余り相性が悪くてな、冬休みに三人で行った遠征が最後だな」


冬の千葉遠征。…冬…自殺の名所…うっ…頭が…。


「ばばばばかいうなよ、立派な観光地だから!!荒れた太平洋を望む雄大な景色だから!!!」


「ん?急にどうした。いやぁ、あの時に食べた金目鯛の煮付けは絶品だった」


まぁ旅費を稼ぐのに四苦八苦したが、確かにそれなりに楽しい旅行、もとい、遠征ではあった。漁港が近いだけあって魚料理は旨かった。

二人に連れ出され寒空の中フィールドワークに余念はなかったが。ホテルでのんびりと過ごしたかった俺としては遺憾だ。まぁこの辺りに比べると温暖な気候だったし、雪降らないし、ハイキング気分で臨めばありっちゃありだが、夜中は勘弁。


「百キロババアが出なかったのが残念だったがな」


「そんなに容易く発見されるならもはや事故の名産地だっつーの…」


ちなみに移動は新幹線とレンタカーを借りての俺の運転だった。二人して免許持ってないんだもん…。そしてやたら同じところをぐるぐる回らされた。そんなに期待してもすれ違うのは普通のお婆さんばかりだった。まぁ、時間が夜中でなければ普通だったかな…。





敷地をしばらく歩くと我らが現代怪奇研究部の部室を擁する棟に着く。

建物に入ると、暖かい空気が寒さに強張っていた体を緩く解す。


「失礼します」


「こんちゃーっす」


部室の扉をくぐるとそこには誰もいなかった。


「あれ、先輩講義だったか?」


大体は一番奥の席で書物を読み漁ってるか何か書き物をしている先輩の姿がない。


「まぁ鍵は開いてたし、飲み物でも買いに行ったのではないか?」


それもそうかとどっかりとパイプ椅子に座り込み、愛用しているリュックを机に投げ出す。


染み入る暖かい空気にふーっと息をつくと


「何か飲むか?」


「おー、コーヒー、ミルクマシマシで」


英之助がインスタントコーヒーを手慣れた様子で淹れていく。インスタントのくせに淹れている姿は変に様になってて燕尾服でも着てたら執事喫茶でも働けるだろう。


「ほら、溢すなよ」


カチャンと出されるミルク増しコーヒー。


「さんくす」


ズズッと啜ると体の中からじわっと温まる感覚に思わずふーっと息つく。


英之助の方はブラックコーヒーを同じように啜り、伏し目がちにコーヒーに視線を落としているがメガネがめっちゃ曇ってる。仕方ないね。あるあるだね。


「そういえば、春季休暇はどうするんだ?」


「んー、まぁ冬に実家には帰ったし、帰省はいいかなぁって。どうせ帰ろうと思えばいつでも帰れるし。多分バイト漬けかな?いつものに加えて短期でも探そうかなと。遠征費で結構貯蓄減ったし、どうせ夏にもやるんだろ?遠征」


我ながら遺憾だなんだと言ってても、参加する気満々な俺もきっとコイツらにかなり毒されてるんだろうなぁ。


「無論。自由に動けるのは来年度位だろうからな」


来年度が過ぎれば俺も四年…。四年となれば…。


「だよなぁ…就活イヤだな…」


先のこととは分かっているが憂鬱だ、メディアでもなんだかんだと取り上げられている就活戦線だが、実際自分が参戦するとなると他人事とはいかない。


「拓也も要領がいいのだからすぐに決まるだろう」


「そうは言ってもな…」


決まる決まらないの問題ではなく、単に面倒だと思う気持ちとか、ちゃんとした所に就職出来るのかとか、ここのところ話題のブラック企業にあたらないかとか、色々な不安が混じって非常に億劫なのだ。


「英之助は?院に進まないのか?」


「社会人になったほうが何かと融通が効きそうだからな、特に金銭面が」


「あぁ…趣味的にな…」


本当にオカルトに生きてるなぁ…。ある意味尊敬するわ、羨ましくはないけど。


「あれ?そういや部長は就活どうしてんの?それこそもう動いてる時期じゃない?」


2ヶ月もすれば新年度、早いところでは説明会に参加しているのも珍しくはない。

四年になる部長は夏の遠征とかいってる場合じゃないんじゃないか?


「ん、それが名無先輩はもう決まっているらしい」


「マジ?いくらなんでも早すぎない?」


「詳しく聞いたわけではないが、なんでもツテがあってほぼ内定らしい」


ツテ…ツテかぁ…。知り合いの会社にでも入るのだろうか。


「羨ましい…」


「まぁそう言うな、今から来年の事を言っても仕方あるまい」


それはそうなんだが、小市民である自分には羨ましい以外の感想が出てこない。

なんせ実家へは戻れない…まぁ頼めば追い出されるって事はないにせよ、実家は妹君が継ぐと明言されているあたり、肩身が狭い。


「なんにせよ、やることやるしかないか…」


「その通りだ」


真理だね…やることやらなきゃならないのが一般人の辛いところ…覚悟できてねぇ…。



グダグダと話をしていると一コマ目終了のチャイムが鳴る。


「おっと…時間だ。…結局部長は来なかったな」


「そのようだな、僕は暫く此処にいるから気にせず行ってくるといい。鍵もスペアがあるからな。あぁ、片付けておくからカップはそのままでいい」


「さんくす、んじゃな」


ぐいっと残りのコーヒーを飲み干し、リュックを背負い現代怪奇研究部を後にする。








それなりに午前最後の講義をやり過ごし、ぐっと背を伸ばして、いくら寝てても講義中のみ襲ってくる眠気を振り払う。

購買に行って部室で食うか、食堂に行くか迷っていた時に


「お!仏間ちゃーん!!」


やたらチャラっとした口調に力が抜けるのを感じながら声の元に視線を投げる。


「おっつかれー、これから食堂??それともオカ研???」


「いや……迷ってたところ」


明るい茶髪に浅黒い肌。童顔で人好きのする愛嬌がある顔。アクセサリーを過剰搭載したTHEチャラ男といった風情のこの男。


「んじゃ食堂いっしょいこうよー!俺のフレンズみんなして今日は自主休講なんだよねぇー!」


わーサボりまくりなフレンズなんだねー。

なんでかそこそこ俺にこうして絡んでくるのは左藤光二(さとう こうじ)

持ちネタは、ただの佐藤じゃないよ、左の左藤。


こいつと出会ったのは、例の飲みサー見学の時。

初対面の時はこんなチャラくなく普通だったが、年を重ねるごとにこんなんになった。現代っ子らしくゲームもそこそこ、当時俺がトロコンに精を出していた啓蒙高まるゲームが切っ掛けだった。攻略を教えたり、ビルド教えあったり、どうしてもクリア出来ないときにはオンラインで助け合ったり。


最近は合コンに遊びにと忙しいらしくログインしていることは少なく、ゲームとは疎遠のようだが会えばこうして気安く絡んでくる。

時折こうして飯食ったり、代返頼まれたりと便利な友達以下くらいの認識なのだろう。

それでも俺が左藤と友人以下の関係を続けているのはそれなりに自分にも益があるからであり、打算で一緒にいるのは同じだ。


「いやー、ほんと寒くてイヤになっちゃうよねぇー」


何が楽しいのかニコニコとダウンジャケットのポケットに手を突っ込む左藤。


「ドカ雪にならないだけマシでしょ…」


「電車止まると困っちゃうからねぇー」


薄っぺらい会話をしながら食堂で日替わり定食を頼む。


先日の合コンがどうだったとか、一年にマジマブい女がいるとか、日雇いのバイト先にいる女がどうとか。

八割は女の話でげんなりとするが、コミュスキル高いからか相槌を打つのには困らないくらいには面白い。


俺より遥かに広い交遊関係があり、先輩から下知されてるであろう単位攻略術、講師別攻略術など、大学生活において楽に生きる必須のスキルを得ることが出来ている。


「そういや仏間ちゃん知ってる?」


バカ話を唐突に切ったと思えば、ニコニコ顔を潜め、マジ顔にして俺に問う。


「いやなんの話よ」


「最近、この辺りに通り魔が出るって話」


急に出た物騒な話で、定食を食べていた手を止める。


「なんでも、その通り魔は夜な夜な老若男女関係なしに首を絞めて殺しちゃうって話だよ」


よく都市伝説にはありそうな話だが、実際にいるとしたらバイト帰りで遅くなり勝ちな俺としては身の危険を感じる。


「いやそれだったらニュースとかになってるんじゃね?」


朝のニュースはそれなりに見てるがこの辺りでそんな事件があるとは聞いたことがない。


「そこなんだよ!その通り魔は襲った相手をバリバリと食っちゃうんだって!だから殺人事件じゃなくて行方不明になるんだって!!」


テンション高めに言う左藤に、急にオカルティックになった話の顛末にここでもオカルトかとため息をつく。


「いやそんな全部食べるとか人間にゃ無理だろ…、大食いチャンピオンでも人一人まるごととか全部食べられんでしょ」


更には人間の噛筋力で骨が噛み砕けるとは思わん、ステロイド超人じゃあるまいし。


「なんだー!夢がないなー!仏間ちゃんは!!」


夢がないんじゃなくて、左藤に常識が足らないのだと思う。


「でも最近結構噂になってて、怖がる女の子が多くてねー、その話すると家まで送るのがやり易くて!」


いつものニコニコ顔でわりかしゲスい発想に肩の力が抜ける。


「…それは良かったな」


「今度また合コンあるからまた上手くいくといいなぁー」


またってなんだよ…またって。

これ以上は深く突っ込まず、この友人以下の話に適当に相槌打ちながら昼休憩をやり過ごすのであった。

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