第禄幕:固定ボスも実は、、、
ところで実はクリューの教えてくれた道筋にはトラップやアイテムでないアイコンもあった。
_もしかして。
ボスですか?
脇道にボスですか!?そうですか。
随分周到なボスですね。
一抹の不安を覚えながら私はこぼれ球処理をするのだった。
輝石の場所に近づいてきた頃、独特の匂いに迎えられた。
_香ばしい。
パキッ
木の爆ぜる音がそれに続く。
_誰かいる?
暗めの紫のアウター、黒髪、長身。
羊の向こうに見えた背中はまだ見たこともない人の姿だった。
_何してるの?
匂いから察するに肉を焼いているんだろう。
_何の?
嫌な予感しかしない。
_まさか。
ボスですか!?
固定ボス食うなよ。
「大丈夫うまいから」
そういう問題じゃないでしょ!
もぐもぐしながら彼は私達に近づいてきた。
「知らないの?食べ方が経験値入るって」
知らねぇよ!
「勿体ないなこんなにうまいのに」
もぐもぐ
香辛料をキツめにしてあるのか、肉からも彼からも独特の匂いが漂ってくる。
_できれば近寄って欲しくなかった。
大体私は匂いのキツい食べ物が苦手だった。
それより固定ボス。
羊が問い詰める。
「ここらに獣型のモンスターがいたはずなんだけど知らない?」
何その世間話。
「あぁそれコイツ」
犯人は肉を指さした。
_やっぱりかぁ。
そーじゃないかと思ったけどさ。
_あ、アイコン消えてる。
仮にも重要なボスなんだよ?
何か情報聞き出せたかもしんないのに。
「それなら聞いといた」
だから何で皆私の心読んでくんのよ!?
魔物よりこっちのが怖いよ!
「この先に行かせることはできないとか何とか」
は?先?
今気づいた。
立派な扉があった。
こんな山の中腹に大きな扉が。
かなりでかい。
見上げる程の扉は両開きで、不自然なほど豪奢な扉は何かを待ち構えるようで、
「いこっか?」
軽ッ!
声が太いからそれほどでもないけが、これが女子声だったら友達感覚だ。
しかもちょっと高そうなお店に連れて入るみたいな。
_その程度のこと!?
「汝、輝石を求め輝石に求められる者か」
!?誰!
「応えよ」
扉!?
「ここは勇者カナの応えるとこだよ?」
思わず呆ける私を羊は角でツンツンしてくる。
_羊モードだと声かわいいなぁ。
フワフワした角につつかれながら、
「はい!我が名は勇者カナ!輝石を求め輝石に求められる者なり!」
すると厳かに扉は
「承知した。では中に入り試練に立ち向かってもらう。
なお、ここから先は勇者のみとする」
_マジ?
レベルとか上がってないんですけど大丈夫ッすか?
戦闘ッすよね?
ちょッ「がんばれ」とかそんな他人事みたくクリュー!
「期待してるゼ」
急にイケメンボイスに変えて鍛冶屋さんまで!
いやぁ死ぬ助けて!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
バンッ
ほんの数歩進んだところで後ろさえ見えなくなった。
濃密な闇。
後ろどころか前さえ見えなくなる中、何故か私は落ち着いていた。
ピチャッ
「ッ」
真後ろに雫が落ちて少し、息を乱す。
次第に目が闇に慣れてきた頃、何かの輪郭が浮かんでは消える。
きっとゆらゆらしているのは、動きに合わせて光の加減が変わるからなのではと思いはするが、それ以上は想像できなかった。
そうして、漸く恐怖が追いついてくる。
_何かと目が合うのをこんなに怖いと思ったことはない。
これか本当の固定ボス。
遠目でこれだけの意力。
_勝てる気がしない。
初期ダン初期装備で死ぬのか私は。
せめて、自分の世界で死にたかったな。
「何をしているのですか?」
前方の龍がなかなか一歩を踏み出さない私に声をかけた。
いや、何ってこれ以上進んだらイベント入るでしょ?
したら私殺されるじゃん。
もう死亡フラグ成立してんですけど!?
「いくぜ!アイツが輝石持ってんだろ?」
突然後ろからも声をかけられ、私の心臓は間違いなく一回止まった。
黒髪?
「黒髪いうな!クロエって名前があんだから」
クロエか。メモメモ。
ってか勇者のみなんじゃ!
「俺も勇者だから」
襟元を見せるクロエの右の首筋には見慣れた、でも形の違う紋章があった。
_色も違う。
「お前んとことは違う国に跳ばされたんだよ」
どうやら彼も私と同じ出身地のようだった。
なぁんだ他にもいたんだ。
「まだいるぜ?
とりあえず今は目の前のヤツを倒そう」
レベルは?
「ヤツは20、俺は16。
輝石と肉はお前にやるよ。
入口のヤツでも4レベル以上あがったからな」
いや、でも龍の調理とかわかんないし。
「大丈夫だ。俺が教えてやるよ」
_倒せるつもりでいるんだ。
「さ、いくぞ」
_大剣使いなんだ。
今気づいた。
今さらかもしれませんが解説を。
一合目「水」二合目「火」三合目「闇」四合目「森」山頂「光」
一応属性が設定されていました。
あまり目立たないのでわかりにくかったかもしれませんが。
失礼しました。
なお、
「承知した。では中に入り試練に立ち向かってもらう。
なお、ここから先は勇者のみとする」
この言葉は羊とクリューには聞こえていません。