第伍幕:極寒の地
かくして、いきなり世界遺産級の山を登ることになった。
のはいいが一合目から寒い!
名前から察するとさぞ熱いんだろうと思ったけど違った。
「山の天気は変わりやすい」
_そういうのじゃないと思うなぁ。
クリューも羊の鍛冶屋さんも何で涼しい顔なの!
二合、三合、四合、山頂付近とそれぞれ環境が変わるのだとか。
それぞれに隠された輝石を見つけて山頂にいく必要があるのだ。
私は早くも走馬灯が見えはじめていた。
羊の鍛冶屋さんは小さな体には不釣り合いなほどの大きな斧を振り回し、クリューは護身用だろうか二丁拳銃(?)、恐らく魔弾を撃ち出すタイプのもの。宙にプカプカ浮いている。
何かの魔法かな?
私はお店の残り物。紋章つきのロングソード。
鍛冶屋さんの帽子は闘いの中でよりワイルドになっているように見えた。
_その姿はもうバッファロー。
私を差し置いてバッタバッタと斬り倒し、後ろに転がってきた死体を避けながらクリューが残ったヤツに二丁拳銃で止め、それでも残ったヤツを私が相手をする。という布陣だった。
因みにクリューはまだタブレットを見たままだ。
魔素はこの山に入った途端、濃くなったのかさっきよりサクサク動いているように見えた。
よそ見しながら戦っててこんなに強いとかどゆこと?
_もう二人で魔王倒せば?
「それは無理」
え?
思ってたことがバレた。
「ここの連中は弱いからね。
だからこんなことができるんだよ」
いつの間に戻ってきたんだバッ、、、羊。
そういや、一合目でこれだから街の方は、、、
「街は街、ウチはウチ」
マジで?
街は街の人達で護れるらしい。
自警団でもいるのかな?
「いないよ?」
「ウチ若ぇのが何とかしてるよ大体」
まぁ、色々あるんだろう。
_もう突っ込まない。
「ところでどうだいレベルの方は?」
聞かれてもわからない私が首を捻ると、
「後ろ向きナ」と言われる。
羊はメェメェ文句を言いながら私の首筋辺りを見て微妙な顔をしたまま
「6レベルか」と呟いた。
こぼれ球処理しかしていなかったからそんなもんだろうと思っていたら、
「よし、レアメタルも採りたいし少し回り道しよう」
奇しくもそれは三合目付近。
丁度回り道しなくちゃと計画していた場所だった。
何故、本道から外れて登らなきゃいけないかというと、まっすぐ祭壇に上がっても意味がないからだ。
輝石が揃わないままいっても遺跡は動かない。
二合目付近でそのことに気づいたらしいクリューが、私達を一旦止めてミーティングを行った。
この時初めて三人でタブレットを見ることになった。
そしてあることに私だけ気づく。
_バッテリーが減ってない!?
むしろ回復していた。
タブレットが魔素を電波と認識したのはわかった。
_まさか。
呼吸してるの!?
放熱しながら足りない電気を補給して、、、いやいやいやそんな高性能じゃないでしょ?
_あるとしたら?
太陽電池?くらいかな。
太陽くらいはここにもある、、はず。
昼も夜もある。
強い魔素によって夜が長い日くらいはあるが、大体元世と変わらなかった。
環境が似通っているおかげで私も普通に生活ができていた。
トラップがあるところやアイテムのあるところなどにクリューはアイコンを作ってくれていた。
わかりやすく作られたマップを元にクリューが解説していく。
_スゴいなぁ。
身ぶり手振りも加えて、ものスゴくわかりやすかった。
前に通っていた塾の先生によく似た教え方で、じっくり染み込むように入ってきた。
_質問する必要もなかった。
クリューのおかげで打ち合わせはすぐに終わって今に至る。
三合目付近、羊の鍛冶屋さんの台詞をきっかけに回り道することになった。
_要するに回り道は決まってたんだよね。
今思いついたみたいに羊の鍛冶屋さんは言うけど。
羊の鍛冶屋さんは素知らぬ顔で大斧を担ぎ先頭を歩き、、
「メェ?」
_わざとなのか?
可愛いからまぁいっか。
瞬間、クリューの方から殺気を感じた気がした。
今さらかもしれませんが解説を。
一合目「水」二合目「火」三合目「闇」四合目「森」五合目「光」
一応属性が設定されていました。
あまり目立たないので、わかりにくかったかもしれませんが。
失礼しました。