第参幕:はじめの街は、、、
「えっとまずは」
広大な草原を見渡して私は一人言のように呟いた。
「こっち」
クリューが裾を引っ張ってきた。
_クリューの声結構キレイだよね。
久しぶりに仕事モードのクリューの声を聞くと透き通ったいい声だと思った。
ところで体格的にだいぶ差のあるクリューの背は私のお腹辺り、なので私の裾を遠慮がちに掴んで歩く。
_歩きにくい。
非常に歩きにくいので、
「ちょ、ちょっと待って」
たたらを踏みながら、
「良かったら地図とか読んで貰えるかな?
私こっちの地図って読めないし」
と困った顔をしてみせる。
_泣くかな?
事実こちらの地図記号は知らないものばかりで、
同じ記号があっても必ず「?」がついていた。
_そもそも何で地図記号表示されるんだろう?
クリューの瞳孔が一回開ききった。
「わかった!」
一瞬ムクれたように見えた顔がパッと咲いてクリューは嬉しそうにそう言った。
ウチから持ってきた私のタブレットの地図アプリを開く。
しばしの読み込みの後、辺りの地図がなぜか立体で表示された。
_このアプリそんな機能あったっけ?
_まぁいっか。
それよりどうやらこの世界の魔素を電波と認識しているようで、電波には<?>はつくもののしっかり4GLTEだった。
だが、Wi-Fiは無理なようだった。
「♪」と漫画なら表示されそうなクリューの表情は、とても満足そうだった。
そして明らかにスピードが上がった。
「いや、ちょっ」
置いてかれそうになった私は焦ってその後を追いかける。
タブレットを見ながら歩いているはずのクリューの速度はどんどん上がっていった。
_まぁ障害物もないしね?
でも、魔物はいる。
普通ホームタウン近郊ても魔物くらいは出る。
自分の部屋から着の身着のまま出てきたため、武器は勿論防具らしきものもなかった。
_雑魚でも倒されるかもしんない。
_学校指定の制服で何ができるの?
なんて考えながら歩いているとあっという間にクリューを見失った。
走る。
陸上部のスニーカーなので走りやすいが、辺りは砂混じりの草原なので若干足をとられ勝ち。
それでも歩くよりは早く、すぐに追いつくことができた。
「クリュー待ってよ」「ここ」
ハモった。
クリューが指した方を見ると、、、
いきなり遺跡ですか!?
もうちょっとレベル上げとか装備整えたりとかは、、
「剣がある」
ほぼ丸腰じゃん!
それにしても近かった。
徒歩5分駅近。じゃねーよ。
まぁ近いところに遺跡があるってのもあるよね。
しかし肝心の街が見当たらない。
「ここはじめの街」
ふぇマジッすか。
見た目、世界遺産級の岩山。
深い岩窟のような入口はまるで鍾乳洞だ。
その姿はどう間違っても「はじめの」ではない。
鍛工も兼ねた街だから装備も揃う。
実は城に装備を卸している得意先なのだとか。
_クリューが何だか自慢気だけど、頼んでるのキミじゃないんでしょ?
たしかにメイド長にはそれくらいの権限はあるが、発注するのは年齢制限の壁に阻まれるらしい。
当然ながら皇室の口利きだった。
はい。最初の街です。
皇室御用達が序盤の街です。
この後どうすんの?
いくつか候補はありますが、見劣りしますね。
でも、がんばります。