第弐幕:勇者カナの旅立ち
翌朝、私は誰にも告げずに城を脱け出した。
グイッ
「どこいくの?」
突然隣から裾を引っ張られた。
「ッ」
たたらを踏んで止まる私。
私の裾を掴んで離さない幼女の姿がそこにはあった。
私の困った顔を見るとクリューも困った顔をした。
幕間:メイド長不在
メイド長クリューのいなくなった場内は騒然としていた。
「静かに!緊急事態です。
クリュー様に代わり僭越ながらこの場は私、サリューネ・アーヴァネストが預からせて頂きます!」
ざわざわ
未だ治まりきらないホールを見渡して、各々に指示を出していく。
そうして、ある程度場内に落ち着きが戻ってきた頃、
「副長!サリューネ副長!」
二階テラスから身を乗り出すようにして、自分を呼ぶ同僚の姿に気づいた。
頷き返して二階へ上がると、
「良かった。クリュー様の執務室にこんなものが」
差し出されたのはくしゃくしゃに丸められた紙。
破かないように丁寧に広げると、
「さがさないでください クリュー」
何度か書き直した跡を見ると、
_伝えるか迷ってたな?
丸めた紙を丁寧に伸ばして突き返し、
「暫く任せたわよ?」と現場を離れる。
_勇者に着いてったな?
当然バレていた。
メイド長クリューの動向は簡単に読むことができた。
普段の素行に合わせて勇者カナを見る目が人と違うように見えた。
たしかに勇者はいい人だ。
_でもソレとコレとは違うだろ?
仮にも「長」がそんなことでは示しがつかない。
そう思ったサリューネは連れ戻すことを決意するのだった。
再編長らくお待たせしております。ありがとうございます。
では解説を。
メモのくだりに不自然さを感じ、少し変えてみました。
序盤で急展開が連続しますが、後の展開に必要なシーンと考えています。
クリューがメイド長なのも、サリューネが副長なのも伏線です。
回収するつもりで話していきます。
よろしければおつきあい下さい。