第拾九幕:トラットリア家の始祖<輝石のはじまり>
私達トラットリア家は代々王家に仕えた者の家系だった。
女子が生まれると必ず王家に上がることが決定され、人としての生を失う。
そんな中で生まれた最初の女性がシル.A.トラットリア、王家には執事として仕えたそうよ?
_あれ?
輝石の勇者は?
ある日シルが刻の皇女を連れて城を脱け出す事件が起きたの、、、
_その話長いかな?
皆真剣に聞いているので、横やりは入れないでおこうかな?
その話では森の奥に冒険だと言い出す皇女を止めるため、足早にシルは追いかけたそうよ?
当時は魔王全盛の時代で今よりずっと厳しい環境だったそうよ。
今の魔王はまだ優しい方なんだよ?
先代はもっと魔王らしかったようですね。
_あ、代替わりしてるんだ。
案の定、皇女は森の罠にかかって下級悪魔に捕まり、、、
シルも立ち往生。
でも、そんな時目の前に光る石が現れて悪魔に当たり、皇女は助かった。
シルがあっけにとられている内に、翠色に光る石はシルの胸に光を当ててこう問いかけた。
「汝、輝石を求め、輝石に求められる者か」と。
_!?
私が聞いた言葉だ。
はい。と答えたシルは最初の輝石の勇者となり、下級悪魔を撃退、難を逃れた。
その後生まれたシルの妹たちは早い遅いの違いこそあるものの次々に輝石に選ばれ、それが最初の勇者と合流したの。
「って話をずっと絵本で読み聞かせられて育ったの私たち」
頭の後ろに手を回してうんざりしたように言う萌木。
「純粋に憧れてたのは子供の頃だけで、大人になるにつれて薄れていったわ」
_普通そうなるよね。
赤毛の言葉に深く頷く山吹以外のクリュー達。
「でも、クリューは違った」
お姉さんに水先を向けられるクリュー。
「さっきも言った通り私達は本名を名乗れないの」
察しの通りクリューにも本名がある。と赤毛は言った。
「本名は本当に愛している人にしか明かせない」
しかも、自分の口で語ることはできないそうだ。
「私達にはまだいないけど、ルゥになら或いは、、、」
_誰?
ルゥはクリューのことだと教えてくれる萌木色。
ミドルネームのようなものね?
私はラ、私はティと順繰りに教えてくれるが一辺には覚えられないよ?
あとから現れたのを指してあっちがウェイとロー。
_無理だってば。
因みに髪はレモン色と藍色だった。
「私達はこのミドルネームで呼び合うの」
お互いを区別するためにね?
そして誰からともなく手を繋ぎ始めるクリュー達。
ルゥが出遅れていた。
「ルゥ、私達がここに来た理由、わかってるわよね?」
しぶしぶラの手をとるルゥ。
どうやら、輝石の勇者の使命は事前に教わっているらしい。
「輝石の勇者よ。汝、この先に臨むか」
『はい!』
綺麗な声が揃った。
それぞれの胸に光るネックレス、その窪んだ部分に輝石が入り込み、何もなくなったはずの龍の瞳が光る。
「承知した!その覚悟今一度試させてもらう」
声と共に五人が龍の像に吸い込まれていった。
輝石の勇者には勇者のサポート以外に二つ、使命があります。
ALVIS<アルヴィス>ゲートの管理とラストダンジョンの開通。
お楽しみに。
輝石の勇者は祭壇に召喚される形で輝石の龍近郊に跳ばされました。