第拾肆幕:旋基暴発
向こうに帰る方法はあるんだよね!?
じゃあ、帰して!
「それがそうもいかないんだよね?」
「私達は人間の敵だもの」
何で!人間でしょう!?
「そうなんだよ。人間だから人間の敵になれるんだ」
魔王側の陣営にも召喚された人間がいたらしい。
「何だよ簡単じゃねぇか」
お前ぇら倒してとか言わないでよクロエ?
「悪いけど、お前んとこのアルヴィスゲート使わしてもらえねぇか?」
ばっかやろう!いいよって言うと思うか!?
「いいだろう」
マジッすか!?
「但し」
デスヨネー。
「私達に勝てたらネ?」
「さぁ遊びは終わりだ!」
戦闘に入る。
まずは緑髪が叫びとともにナイフを投げてきた。
咄嗟に私はテントから出てナイフを捌く。
カンッ
キンッ
クロエに命中するそれを弾き落とす。
が、勿論それを目眩ましにした緑髪は脇差しに手をかけて、走り込み私の懐に、、、
「やらせねぇよ!」
クロエの大剣がそれを弾き、火の精霊がクロエに加勢して私を助ける。
「クァァァァッ」
手を出すなと言わんばかりに不死鳥は攻撃的に火を吹いた。
_クリューは?
こんな時真っ先に出てきそうなクリューがいなくなっていた。
自分の顔が青ざめていくのを感じていた。
「可愛いわね。この娘?」
「離せッ」
呪紋を帯びた声が私から放たれた時、
『!?』
その場にいた全員が驚いた。
私だってびっくりした。
精霊の声を人は話せない。
精霊の声、つまりは旋基だ。
それが私の口から放たれた。
難しいことはわからない。
でも、出るワケがないことは漠然とだがわかっていた。
「どうやったの?」
呆然と力の入らなくなった喪女の腕の中でクリューまでも唖然としていた。
「何でもいいがチャンスだろうが!」
最初に正気を取り戻したのはクロエだった。
細かい暗器類を投げて、それに紛れるようにして懐へ潜り下から掬い上げるような蹴りを浴びせたクロエは見事に緑髪の延髄捉えた。
「ッが」
昏倒寸前で踏み留まった緑髪は、次に暗器に襲われるかに見えたが、、、
「惜しい」
冷ややかな笑みを浮かべて雲を散らすように消えていく姿が見えた。
「外したかッ」
_外したの!?
そんなことより、
「何やってんのクリューはこっちでしょ!?」
「お前どこ見てんだ!緑髪だけ影がなかっただろうが!
ありゃソーマでその呪力をお前がさっき相殺したんだよ!
そのせいで実体化したアイツを倒そうとしたんだ!」
でも逃げられたと?
「うっせぇ」
「おかげ様で私のメンツ丸潰れ」
とあっさりクリューから手を離す喪女。
「だからちゃういうねん」
ちょくちょく素に戻る喪女はうっすらと笑って自らも消えようとする。
拾参と拾肆のロケ地は四合目です。属性は森です。
ここで野営予定だった勇者カナ一行を追いかけていた人間チーム。
なかなかファンタジー出てきませんが、大丈夫ちゃんと出てきます。
あと緑髪の刀は刀匠「吉乃」が打った元世の業物「流れ星」と言います。
「惜しい」と消えたのは流れ星の能力です。
あ、オリジナルなので調べても存在はしません。
現実の刀でこんなことできませんからね。