第拾参幕:第三勢力
っていうことで
「終わりだ。そろそろテント戻るか」
私は傍らに立て掛けておいた剣を片手に立ち上がった。
何か重要なとこを聞き逃した気がする。
_クロエが焚き火に水をかけた。
「俺はクリューと見張りをするよ」
え?という顔をクリューがする。
_聞かされてなかったんだね。
「そんな、悪いよ!」
私が食い下がっても、
いや、気にするな。
ちょっと別件でな。
来た道を振り返りながらクロエが言うので、
_?
「任してッ!」
_何のことかわかってんの?
気合い抜群のクリューの姿がさらに不安を煽った。
それに肝心な時に勇者カナが動けませんじゃ話になんないだろ?
その言葉に私は渋々テントに引き下がった。
私が下がるのを見計らったように
「終わったかい?仲間想いだね」
テントの隙間から見えたのは亜麻色の髪の少年?少女?
中性的な顔立ちの人物だった。
見たことのない人物だった。
しかし、
_どうして。
こんなに近づかれて気づかなかった。
一度もそんな気配は感じなかった。
ボス、、なの?
「そんなワケないでしょ」
ボクたちは部外者だよ?
「キミたちと同じねッ!」
キンッ
少年の攻勢を捌いたクロエの大剣は素材でも違うのか、いきなり欠けた。
「私達と同じ」
私はテントの隙間から呟いていた。
綺麗な亜麻色の髪の少年はそれには答えず斬りかかってくる。
キンッ
「てめぇ、俺達と同じってことはこの世界じゃよそ者じゃねぇか。何で邪魔すんだよ?」
ッ
少年はクロエを鼻で嘲笑った。
「アレ?知らないんだ?この世界を救う意味がないこと」
_?
意味がない?
「気づいてると思ったんだけどなぁ」
呆れた表情をこれでもかと見せびらかし、
「キミらが勇者やってる間にあっちは大変なことになってるんだよ?」
ヴヴヴヴヴヴヴ
忘れていたかのようにクリューの手元でタブレットが鳴り出す。
_いや、何コレ助けて!
_可奈ちゃん助けて!
_死にたくないよ!
「キミらのせいだよ?」
何がなんだかわからなかった。
殺到する元世からの動画には魔物に襲われる同級生の姿が映され、
それぞれ助けを求めるものばかりだった。
「説明いる?」
「いるに決まってんだろッ!」
クロエが跳びかかっていった。
「せっかちねぇ」
少年の後ろからこそっと現れる喪女。
「誰が喪女やねんッ!」
知らない人にツッコまれた。
魔法と思われる見えない力でクロエを撃ち落とす喪女。
「ちゃういうとるやろ!」
「僕の方から説明するよ」
三人目の緑髪。
「キミらが召喚されたあの日。
僅かながらこの世界と元世の空間に揺らぎが生じた。
本来この手の術式はことが過ぎれば閉じるものだ。
だが、使い込まれた魔法陣、久しく使い手のいなかった古代魔法。
使い手の技術不足、知識不足、ソーマ不足。
それらも重なり言わば半開きの状態を維持してしまった。
さらにマズイのは誰もそれに気づかなかったことだ。
結果、この世界から帰る方法ならいくらでもあった。
それが今回の事態を引き起こしている」
「おかげ様で私達も元世から来ることができた」
つまり魔物が向こう行って悪さしてるってこと?
「正解だよ?」
説明いる?いるに決まってんだろッ!
はい。ということで解説に入ります。
魔族側に味方する人間、が出てきました。
彼らは元世生まれのファーリア人です。
なので地毛がありえない色をしています。
亜麻色の髪の少年の武器はこの世界の上流鉱石で鍛えられた長剣です。
本気でやったら今のクロエなら倒せます。
しかも魔法陣開きっぱなしなんですって!?
戸締まりはしっかりしましょうね?
次に参ります。