第1話
「霧かよ、珍しいなぁ、つか前見えねぇ!!」
家を出て最初に発した言葉はそれだった。
一応、俺の住んでる所は都心部と自然が溢れる境目なんだけど、こんなに濃い霧なんて初めてだ。
だってさ、1m先が見えないってどんだけだよ?
えっ?いや、お前は誰かって?
俺は『キョウヤ』。
名字?面倒くさいから言わないよ?
それより今はこの濃霧でどうやって学校行くか、なんだよ。
「今ならまだ家に帰って学校サボれるけど………、しかぁし、俺はそんなにズルい男ではないのだよ、ワトゥスン君。
誰かは言った。
『自らの地平線を目指して、臆せず進め!!その足、動く限り』と。
だから俺は進もう、例え、これから行く戦場(学校)に仲間(生徒)が居なくとも、俺一人で戦おう(勉強しよう)。
まぁ、通いなれてる道だから迷いはしないだろうしね。」
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…十分後…
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見事
「ま、迷った!?」
迷いました。
足はコンクリから土に変わってるし、うーん、多分近くの山だろうね。
来た道を引き返して学校に行こうっと。
あー、うん。
完璧に迷ったわ。しかもここ圏外だから電話出来ないし、壊れたのか携帯と時計の時間進んでないし。
「完璧に迷い子だわぁ。このまま迷って明日の地方欄は
『濃霧に学校行こうとした高校生、○○○山奥で保護される。少年は
「来た道を引き返せば帰れると思った」と証言した。』だったら面白いけど笑えねぇ!!」
さぁ、どうする俺?
このまま霧が晴れるのを待つか?
否、待ってるだけじゃ始まらない。
進んでこそ意味があるんだ!!
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一時間後
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慎重に進んでは休憩し、慎重に進んでは休憩しを繰り返して一時間、霧が少しは薄くなってきたけどまだまだ先は見えない。
「なんかもう、霧よ、晴れろ!!みたいな感じで言ったら晴れないかね。」
その瞬間、俺を覆っていた濃霧は左右に消えていき、視界を遮るものは無くなった。
「おー、晴れた、晴れた。でもってここ何処だ?」
辺りを見渡した所、見えるのは木、木、木、木、木、木。
どうやら山か森の中まで来たらしい。
目印になるものは見当たらないので、一段とデカい大木を見つけたのでそこに向かう事にした。
「……………。」
開いた口が塞がらない。
声を出そうとしても口をパクパクと動かすだけでまったく出ない。
その理由は目の前にある大木だ。
「デ、デ、デ、デケェー!?」
見上げてたら首が痛くなりそうなほど大きい。
大木と言うより巨樹だ。
ゲームのユグドラシルとかはこんなんだろうね。
「こんなにデカいのが家の近くにあったなんて……。
それにしてもこの大きさはギネス級だろ?」
そんな事をぼやいていると後ろの小さな木々が音を立てて揺れた。
風は吹いていないから動物だろう。
と、そんな事を言うが嫌な予感がしたのでそちらを見るとそこには俺と同じくらいの大きさの山犬?がいた。
さらに口からは今にも何かを吐きますよ。的な色付きの息も出していた。
「うん、ヤバくね?」
逃げようと思い、動いた時
ヒュッ、ボン!
と音がした。まるで何かが軽く爆発したような音だ。
カバンを見ると、燃えてる!?
「ちょっ、えっ、待っ、待った!?」
急いでカバンを投げ捨て、足で踏んで火を消す。
それを見下すように見ている実行犯。
まるで
『最初のは威嚇だ。次は当てる。』
とでも言いたい感じだ。
それを見ながら消火活動を終えるとすぐに二発目が飛んでくる。
「のぉわっ!?」
ギリギリで避けるけどそれが何発か続けて飛んでくる。
全てを避け終わったけど制服が少し焦げた。
それより
「山火事になるじゃん!!」
後ろを見てみると何発かが地面に落ちて軽く燃えている。
しかし、相手はそれをお構いなしにどんどん撃ってくる。
どんだけだよ。
しかし、それは突然の出来事で終わりを告げた。
ドゴン
と突然、地面に穴ができ、その中に犬が見事にはまる。
「タァアアアアア!」
声が聞こえ、その方向を見ると………!?
お、女の子が降ってきた!?
しかも、手には剣を持って。
ズドン
そのまま犬の眉間に剣を刺し、犬は絶命した。
そして俺の前には返り血を浴びた、白銀の髪の少女がこちらを………見つめています。