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寝取られ後の幸せ  作者: とろにか
39/42

レベル1でラスボス

本編 カイルとの邂逅に戻ります

「お父様、容赦はしません。『八手先の鏡』」


アイシャは手に赤色の鏡を取り出してカイル様を写し出す。えっ、これで、何が変わるの?


「これでお父様の攻撃が八回どこに来るかわかります。お父様の攻撃は初見殺しなのでご注意を」


カイル様は全身に剣を纏ってる。何本だ?ありゃ?


「先輩!全部で10本、来るにゃー!!」


にゃーってなんだよボディ子!おまえキャラ変わってるぞ。


ぞくっっっ


と背中から刺されるのが視えた。


アイシャが言ってるのはこれかっ!!


俺はとっさに地面に伏した。


カイル様から放たれた剣が欠けている月のように深く抉れて俺のいた場所を通り過ぎ、


ぞくっっっ


ーーーっ、一回避けただけじゃダメか。


綺麗に軌道を変えた刃が伏せていた俺に迫ってきた。


だがーーー、


「これでも喰らえー!!」


俺の前に移動したボディ子が手から火の玉を出して投げようとしてる。その玉はただの野球ボールくらいだったのがみるみる内に人の頭くらい大きくなる。


ズガーン!!!


刃と火の玉がぶつかり、跡形もなく両方消え去っていた。




ーーー「先輩、しっかりするにゃー!!自分の身は自分で守るにゃー!!」


惚けていた俺をボディ子が鼓舞してくれる。


やらなきゃ、ダメだ。


俺は足に、正確に言うと自作ブーツに意識を込めた。


「俺のブーツは世界一だよな!?」


「何を言ってるにゃー!当たり前にゃー!」


「じゃあーーー




世界一、速く走ることも可能だよな?」


「へにゃ?」


ボディ子の思考停止顔を見届けた俺は駆け出した。


風を切れ、


たどり着け、


誰よりも、速く、


どれだけの速さなのかはわからない。


だが、たった五歩でたどり着いたその速さに、カイル様の目の細かい血走りが見えた。


「うおおおおおお!!!」


十の剣に対して八手先を読み、アイシャが八つを魔法で止めていてくれている。


九つ目はボディ子が止めた。


十番目の剣はカイル様の目の前に現れ、俺の蹴りを受け止める。



ガギィィィン!!



あと一手が足りない。


何か、何か無いか。


ーーーあるじゃねぇか、もう片方!!


「ボディ子ロボ計画進めてて良かった」


「にゃんですかそれぇ!」


俺は右脚を受け止めた剣の横に左脚を添えた。


「ロケットキック!!」


踵を切り離しカイル様の顔面向かって発射!


「無茶苦茶だな」


踵が届く寸前に一本の剣が追いつき弾き返された。


「ハルト様、すみません、剣の攻撃を停止させることはできても、防御に使われると止められなくて・・・」


「アイシャはよくやってるからよし!!」


「そうにゃー!アイシャはほとんど止めててすごいにゃー!」


「不思議な武器だ。格闘技の延長でもなく、ただの靴がここまでの脅威とはな」


ブーツを褒められて嬉しいが、カイル様の言葉に余裕が感じられる。


「まだ終わりじゃないんですよ、これ」


ボディ子の言葉通り、俺は警戒を緩めない。


カイル様の前で二本の剣がクルクルと踊っている。


その二つが俺に迫ってくる。


だが、俺はつま先だけになったブーツを左手にはめて動く剣を叩き落とした。


そして右脚で地面を蹴って離脱。


「チートだよあれ。攻守どっちも隙が無いよなぁ」


「こっちもブーツ五足用意したいくらいだにゃ」


「両手両足にはめて戦えってか?」


「それはダサいにゃ・・・あっ、逃げられたにゃ」


ボディ子が相手していた一本とアイシャが止めていた七本がカイル様の元に帰っていく。




「キリ、キリ、ヤーヤー、キリ、ヤーヤー」


カイル様の言霊で雰囲気がガラリと変わる。


カイル様に集まった剣は俺に向かって飛び出す。


三つはブーメランのように回り、四つは刺突しようと加速する。


避けきれず、ひとつが俺のブーツを履いている側の足首を目掛けて突き刺さったかのように見えた。


ーーキィィィン!!


だが弾く!


腕狙いと首狙いの刺突、蹴落とす!


「ーーーー!?」


カイル様の眼に僅かだが動揺が窺えた。


「解せないか?」


「貴様の靴は、何だ?」


「はぁ、はぁ、企業秘密だから教えねーよ!」


「ハルト様!こちらで一本押さえてるので、はやく・・・!」


アイシャが頑張ってる今が好機!


俺は姿勢を低くして直線的に駆けた。


「ダメにゃー!!あと三本、わからないにゃ!」


俺の動きに合わせたボディ子が剣を払いながらそう叫ぶ。


「はぁっ、はっ!!」


体が、保たねー。息が・・・でも、ここで止まるわけには・・・!


「貴様は勝手に強くなったと勘違いしているようだ。まだ力も知らぬ勇者よ」


間合いに入った。あとは顔面に蹴りを入れれば・・・!


入れれ・・・ば・・・!


その一歩が、ーーー果てしなく遠い。


「ーーー!!!」


俺は何かヤバいものを感じてバックステップした。


ブーツ無しの足で。だから回避としては弱い。




ゴウッッッ!!!!


それは斬撃。大きなひとつの刃だった。


二本の剣が同時に放った斬撃が俺のブーツを掠める。


カイル様の目の前、俺が踏み込んだところに一メートルくらいの大きな溝ができる。


「攻撃が通らないのは驚いたが、こちらの守備は万全だ。当てるには足りんぞ?」


「ぜーっ、ぜーっ」


「先輩!ブーツの持ち主なのになんで体力ないんですか!」


「こんなっ、はあっ、無茶苦茶なっ、使い方しないっだろッ!」


ブーツに走らされてる。片足だけでもこの息切れ。やばい・・・


「先輩はダメにゃ・・・例えるにゃらレベル1で最強の装備してる状態にゃんだ・・・」


わかりやすい絶望感ありがとよ!


「もう遊びは終わりにしよう」


カイル様の十本の剣が集まり、竜のような形が朱色に浮き上がる。


繰り返す円状の波が更なる圧力となって、突風とともに俺たちに叩きつけられる。


その竜の頭が完全に上から俺を見下ろしていた。


それは、想像しうる最悪の現象。必然の死がこれから襲うだろうと告げていた。


「へへっ」


笑うことしかできない。


今までのやり合いが遊びだと、おまえは敵わないだろ、夢を見るなと、カイル様の目を見るたびに思い知る。


「おとう・・・さま?」


アイシャの顔がみるみるうちに青ざめていく。


「ダメです!なぜハルト様にそこまでッ!」


カイル様はアイシャを見ない。こいつは本気で殺す気満々なやつだな。







「通せるのか?貴様に」


カイル様はこちらに剣先を向けて問う。


「貴様は勇者だ。第一に勇者は強くあるべきだ。だから娘は婚約したのだ。別の男とな」


ズキッ。


「うるせーよ」


「貴様には強さすらない。だが理想を振りかざす。その理想を通したいのならーーー」


「ーーー勝つしか、ない、・・・だろ?」


考えろ、勝つために。

ーーーしにたくない。

生きてたって無駄だ。どうせ裏切られる。ーーーそうじゃない。

並び立つんだ、アイシャと、二人で生きるって決めた。


ーーーダメだ、敵わないかもしれない。





「ーーーにゃあ、先輩?いいこと教えてあげます」


「なんだ?今忙しいんだけど」


精一杯の虚勢だった。お返しの軽口でボディ子を焚き付けることもできない。


「先輩はさっき、風になれてたにゃ。めっちゃ早かったにゃ。でも風になれたくらいじゃカイル様はたおせにゃいにゃ」


「んなことはわかってる」


「カイル様はわざと竜を出してるにゃ、竜は風が無ければ飛べにゃいにゃー。逆に考えれば、風を集めれば、押し込むことも、できるんだにゃ!」


「んで、風になれってか?」


「そうにゃ!晴人ではなく風に立つ人、つまり颯人はやとになればいいにゃー」






「・・・えっ、まさかの改名?」




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― 新着の感想 ―
[一言] 出すならば、舞や靴の話を終わらせてからか、その前に異世界の話を完結している方が良かった。 そのせいで、話の中心?主題?がグダグダに成ってしまっている気がするかな?
[一言] この父親登場展開が萎える……(汗)
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