ちょび幕間 another story ボディ子の過去
「おい!世紀末だ!世紀末が来たぞ」
廊下を歩いていると人が避けて道ができる。そんな日常はいかがですか?
わたしはただ、身長が190センチあり、握力が全盛期で120kgあったかわいい女子高生だった。
嘘です。かわいいなんて、全く思ってない。顔には猫を助けた時についたひっかき傷があるし。男の人だと何かを成し遂げた時に傷を負ったら、勲章にしますよね?わたしもそのように誇らしく思ってたから。
この傷のせいで教師になる夢を諦めようとか、そういうのは全然なかった。
高校一年生の時、もうわたしの将来の夢は教師と決まってた。授業でわたしが進路を発表した時はクラスの誰もが笑ってた。
だけど、その中で深刻そうな顔で休み時間に訪ねてきた人が一人。
「あのさ、俺も教師になりたいんだけど、どうやったらなれるかな?」
その人が笠井流星くんでした。
「やっぱり国公立目指さないとなれないのかな?私立じゃダメ?」
「私立でも大学に学部があれば大丈夫だけど・・・」
流星くんは本当に悩んでいるようでした。
「いや、うちの3つ上の兄貴が大学に行ったんだけど、何学部だと思う?」
「うーん、医学部ではなさそうですよね。経済とか、法律とか、福祉とか?」
「それがさ、新しくできた産業革命学部なんだってよ。革命だぞ?革命」
「それは・・・何について学ぶの?」
「わかんねぇ、兄貴は産業革命はアナザーワールドだ!とか言ってる」
「え・・・?大丈夫?」
「兄貴が就職失敗しそうだから俺がしっかりしなきゃ・・・しなきゃ・・・」
流星くんの悩みは、怪しい新規設立の学部に行ったお兄さんにあるみたい。
「気になるなぁ、産業革命お兄さん」
「会ってみる?あ、知り合ったばっかでごめんね。兄貴は女性にヘタレだから心配しなくていいよ?」
久しぶりに他人に女性扱いされたなぁ。嬉しいなぁ。
今まで世紀末だとか筋肉おっぱいとかたくさん言われてきたから泣きそう。
わたしが黙ってしまったのが悪かったのか、流星くんが慌ててしまう。
「ご、ごめん、悪かった!そんなに怒らないでよ!」
怒ってないんだけどなぁ。
怒ってないことを伝えるために笑えばいいのかな?
ニッコリ
その後流星くんは失禁してしまった。
ーーー
そんなこんなは置いておいて、流星くんのお兄さんは実際には大学に行っていないようだ、と流星くんに言われたのだ。
大学生になったら当たり前だけど、授業が無ければ大学に行かなくても良いし、自宅でリモート授業だってある。そんな自由な大学生活をしらない高校生は大学生の真面目具合を疑うしかできない。
「なんか夜中に兄貴の部屋からカーンカーンって音がするんだよね」
流星くんの自宅は一軒家みたいだけど、さすがに夜中に鉄を打つような音なんて近所迷惑になるに違いない。
流星くんの家に入っていくわたし。ご両親は不在で、お邪魔します、と言ってそのまま流星くんと二階に上がる。
「兄貴、入るよ?」
ガチャッ
「で、できた。第二次世界大戦で水虫に悩まされたドイツ兵が超絶喜ぶ靴が!!!」
そこにいたのが笠井晴人先輩。
この人より強烈な初対面の人に、わたしは出会ったことがない。