if story 決戦 ④
ボディ子視点です。
「二次会に行きたい舞さんを許しちゃう彼氏さん優しいんですね!」
一次会が終わり、すっかり出来上がった女衆。帰る人もいれば、明日は土曜日で休みだから飲みたい人も多い。
一次会で上手く自分の位置を確保してホッとした顔の舞さんが近づいてきた。
ほう、自分から来るとは好都合。
「珍しいですね。今日は飲みたい感じですか?」
「あんなに盛り上がってくれたら行くしかないでしょ・・・」
「舞さんの新しい彼氏記念にお祝いするよー!」
「おおー!!」
まぁ確かにこのノリで舞さんが帰るなんて言えないかなぁ。
「で、あなたも来る?わたしのボディーガードとして」
意外だった。先輩と距離が近かったので、なんだかんだ警戒してくると思ったんだけど、わたしを無害認定してのその発言ですか?
そんな能天気なことを言う舞さんに殺意を覚えたのですが、わたしの顔に出ていないでしょうか?
ニコニコと笑う舞さん。
あなたは先輩の家族だから助けていただけであって、今となっては最大のエネミー。
ですからわたしは努めて、舞さんの最後のお見送りをする義務を果たせればよいのです。
「ご同行してもいいですか?舞さん」
「もちろん、ーーーハルトの件もあるしね」
うっざ。
あなたの思わせぶりに付き合うのは勘弁ですが、カボチャの馬車役を最後まで演じなければなりませんから。
先輩が経験したように暗闇の中に取り残されてください。
ーーー
現在20時半です。
二次会はカラオケやら居酒屋を考えていたけど、まさかの猫カフェ。まぁ女子グループなのでたくさん飲む感じじゃないのは知ってたけど、まさかのまさかだった。
アルコール臭いのは猫は嫌がらないのかな?
わたしの頭に白い猫が乗ってる。首を傾けても微動だにしない。全く降りそうになくてちょっと困った。
「うちの彼氏猫好きなんだけど、一軒家建てたら飼おうって話してるんだぁ」
ノロケかい。
「舞さんそれプロポーズじゃないんですか!?」
「わたしも彼氏か猫欲しいー!」
猫は飼ったら彼氏できなくなるから危ないって誰か言っていたような。
わたしはもう自分がなれるからいいや。
「ボディ子も一人は寂しいんじゃない?」
「そうなんですよー。誰かいい人いないかなー、なんて」
わたしがこんなこと言わないキャラなのは自分でもわかってる。わざとやってるんだ!わざと!
みんなに心の声聞かれてるから。大事だから二回言ったよ。
「そういえば、ハルトの靴、ずっと履いてるんだね。・・・もしかしてハルトのこと好きだったりする?」
「何言ってるんですか。物を大切にしてるだけですよ」
この会話に周りが反応する。
「そういえばボディ子、笠井先輩と仲良いよね?」
「マジ?じゃあ二人の事情を知ってるとか?」
だー、もう、面倒くさい。
「わたし、舞さんからも笠井先輩からも、何にも聞かされないで、最初流星くんから聞いたんです。完全に蚊帳の外でした」
まぁその後先輩に問い詰めて全て吐かせましたけどね。
「そうなんだ〜」
周りがトーンダウンしていく。
舞さんがぽつりと言う。
「やっぱり、学生恋愛で結婚まで行くのは無理だったな」
何それっぽいこと言ってるんですか。はったおしますよ。
「わたし、ふたりは結婚すると思ってました」
せめてもの嫌味を言っておく。というか、これ言うのわたしじゃなくて先輩だ。先輩のばーか。
「わたしもそう思ってたんだけどな」
まじこの女信じられないホントシンジラレナイ。