if story 1.婆ちゃんとの約束
アクションより先に復讐に目どころが立ったので少しずつ出します。
ーーー個室の病室には花が窓を覆い尽くすぐらい飾ってある。綺麗に包装された籠の中には大きなメロンが入っていた。
他の人は大体6部屋で入院しているのだが、お金があるからこの対応なんだろう。それ以上に、家族に大切にされてるんだなと感じた。
「ああー、ハルトさんかえ?」
ベッドで起きている婆ちゃんはこちらを見ると昔と変わらない笑顔で迎えてくれた。
昔、というのは、俺が舞と別れる前の話だ。
「ご無沙汰してます。入院されたと聞いて飛んできました」
「あらあら、どうやって入ってきたと?」
「従兄弟って説明したら通してくれて」
「説得力ある顔立ちしてるもんねぇ」
褒められたのだろうか?まぁ不審者に思われるよりはマシだろう。
「これ、小さいですがお見舞いの品です」
饅頭の箱をベッドの上に置く。
「本当に、まっすぐで、いい人なのに」
心臓の奥でズキッと音がした。だけど、この痛みが来ることはわかっていた。ここに来ると決意した時点で。
「初美さん、俺はあなたに謝らなければならない。今から舞にひどいことをしようと思う」
「あんたの勝手にしなさい。あの水害であんたに助けてもらって今があるのに、わたしもあの恩知らずには相当怒ってるよ?」
舞の家系は両親が教員で初美さんは違う。初美さんが教員をしていたら、十中八九家族の味方をすると思っていたけど、そうではないのを俺は知っていた。
教員家族は教員家族のルール?雰囲気?があるらしい。
知らんけど、知りたくもないけど。
「ごめんよ、気分を悪くさせて、こんな所まで来てもらってね。義理堅いあんただから来るだろうとは思っていたけどさ。あたしはあんたの味方だって言うのもおこがましい。でもね・・・」
「初美さん、俺新しい彼女できたからいいんだ、もう」
「・・・!!あぁ!そうかい・・・そうかい!!良かった・・・良かったねぇ・・・!」
初美さんは俺の手を取って上下にブンブンと振る。目に涙を浮かべて、嬉しそうにしてくれた。
やっぱり今日、来て良かったな。
「入院の理由を聞いてもいいですか?」
「軽い肺炎さ。もうすぐ退院ださね」
「・・・お大事になさってください」
「あんたも、一番幸せになりなよ。・・・彼女と一緒にね」
「そのつもりです、では・・・お元気で」
これから舞に何をするかを俺に聞いてはこないところに、初美さんの俺に対する信頼を感じることができた。
初美さんの中で、俺はもう家族だったのかもしれない。それを口に出しても説得力が無いから、俺の心の中に留めておくけど。
手を振る初美さんは最後まで俺に笑顔だった。