A true brave hero 〜正統なる後継者〜
加筆、修正しました。
「ーーー先輩、先輩!!」
ボディ子の声で目が覚めた。
暗闇に呑まれたはずの俺たちは今、快晴の空の下、太陽に照らされて倒れていた。
眩しくて思わず腕で顔を覆う。
「アイシャは?」
「ここにいます!」
「うごっ!?」
アイシャが覆いかぶさるように太陽を遮って、寝ている俺の胸に飛び込んできた。
「先輩、起きました?」
「バッチリ起きたよ!ちょっとアイシャ、くっついてる場合じゃないだろ?」
「嫌ですぅ!このままお姫様抱っこして立ち上がってくださいね」
この体勢からどうしろと!?
「頭の良い娘だと思っていたが、直感で動く阿呆に育ってしまったとはな」
声が砂埃と共に響いた。
カイル様は白い壁に囲まれたこの場所の中心に立っている。
この建物の造り、コロシアムっぼいんだけど、もしかして俺ら戦わなきゃいけないんですかね?
俺は落ち着きを取り戻すと、アイシャを自分の胸から下ろして立ち上がった。
「ここはわたしの作った異空間だ。安心しろ、店は無事だし、現実世界の時間は止まってる。名を聞こうか」
「笠井晴人です。単刀直入にお聞きしますが、なぜアイシャを連れて帰るのですか?」
「アイシャの持つ力が危険だからだ。その力はこちらの世界のみで使わなければならない」
「彼女が使う、心を読む魔法のことですか?」
「魔法が使えないこちらの世界からすれば、魔法を使えるという事実は脅威だろう。しかし、今はそのことを問題にしていない。アイシャしか使えない力がある、と言えばわかるか?」
「アイシャしか使えない力?」
ぎゅっ、とアイシャに袖を引っ張られる。
「アイシャしか使えない力があるのか?」
隣に来たアイシャは俯いていた顔を上げ、俺の目を見る。
「はい、わたしは人に勇者の力を授けることができます」
「まじか」
「アイシャちゃんマジプリンセス」
勇者の力をこっちの人間に授けまくったら強いやつがたくさん出てきて戦争とか普通に起こりそうだよな。
だから呼び戻したい気持ちはわかる。
「それがアイシャを迎えに来た理由ですか?」
「貴様には関係の無いことだ」
えっ、なんか急に喋らなくなったぞ。
アイシャが言いにくそうにちょっと顔を赤らめている。
「わたしには勇者の力を授ける力があります。一つは、子を産み男児を授かること。それで勇者の力が子に与えられます。女児なら、わたしと同じ力を持つようになります」
あー、それですぐ結婚って話になってんのか。国にとっては、若い勇者の後継ぎができるのは良さそうだもんな。
「そして、15歳を迎えたわたしは心に決めた殿方を勇者にすることができます。生涯に一度だけ、ですが・・・」
チラッ、チラッと申し訳なさそうに俺を見てくるアイシャ。お、おお・・・それは重大だね。
なんか外堀から埋められてる気がする。何がとは言わない。
「もう一つの方法は・・・・・・わたしの命を犠牲にして誰かに勇者になってもらう、というものです」
「は?」
俺はひとつの仮説を立てる。
「その力が親から子に受け継がれるのはわかった。じゃあ子を産めない女性は今までどうしてたんだ?」
「・・・・・・」
「じゃあ質問を変える。アイシャが婚約してた勇者は正統な血族の勇者なのか?」
「・・・いいえ」
誰か勇者に力を授けるために死んだやつがいる。
おい、カイル様よう。
「娘に向かって、帰って来なければ母親の命が無いぞ、と脅すのか?」
「!!」
アイシャの顔が真っ青になる。
「・・・なぜそう思う?」
「そ、そんな・・・。お母様は、大丈夫、弟を産むからって・・・」
ずっと嘘をアイシャについていたんだろう。十五年間産んでないのに、それを信じてるアイシャもアイシャだが。
「母親が男子を産めれば後継ぎ問題は解決するはずだ。産めないから全く関係ないやつを引っ張ってきて勇者にしている。そして、あんたはアイシャは産んでくれるだろうと期待していたが、勇者に難があって逃げられた。もし娘が帰って来ないのであれば、母親が命を犠牲にしても勇者を『造る』だろうよ」
「そうなのですかっ!?お父様!?」
だいぶ女性に左右される力だなぁ。男を産んだって一代しか続かないから女性が産まれたほうが先々考えるといいんだよな。
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