表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オレととあるマヨラーの日常シリーズ

オレには理解できないとあるマヨラーの言い分

作者: グランロウ

 ある日、実家から山ほどキャベツが送られてきた。

 大学へ通うため上京しているオレへの仕送りらしい。


 オレの実家は農家でキャベツも作っているからな。

 たまにこういうこともある。


 だけど、これを全部オレ一人で食べろと?


 いや、同封されていた手紙には、隣近所におすそ分けしなさいって書いてある。


 でもな、お袋よ。

 都会じゃそういうことはあまりしないもんなんだよ。

 田舎とは違うのだよ、田舎とは!


 ……なかには、マメにそういうことするヤツもいるだろうけどさ。


 仕方ないので、おれはアイツを呼んだ。

 とりあえず、今夜は千切りキャベツを山ほど食べさせてやるって。


「おまたせー。とりあえずスーパーでレトルトのハンバーグを買って来た。あと総菜で鶏カラも」

「お、いいじゃん。もうご飯は炊いてあるぜ。キャベツの千切りも、ほら!」

「うわっ、何この量。山盛りじゃん」

「これでも一玉だよ。まだ二十個以上あるぜ。よかったら、帰りにいくつか持ってけよ」

「そりゃ助かる」


 レトルトのハンバーグをお湯で温め、鶏カラと一緒に二つの皿に盛りつけ、ご飯もよそって、テーブルに運ぶ。


 オレは冷蔵庫から胡麻ドレッシングを取り出した。


「オレはいつもの胡麻ドレッシングだが、お前は?」

「ふっふっふ。ちゃんと持参してあるって。ほら!」


 そう言ってコイツはバッグからマヨネーズを取り出した。

 マイマヨネーズというやつだ。


 たまにオレのウチで、こうやって一緒にご飯食べることがあるんだが、オレのウチには胡麻ドレッシングしかないって分かっているからな。

 コイツはいつもマヨネーズを持参してくる。


 マヨネーズこそ至高の食品と言ってはばからない。

 いわゆるマヨラーってやつだ。


 いつものことなんで、オレは頷いてテーブルの前に座った。


「んじゃ、いただきまーす」

「いただきまーす」


 一つの皿に山盛りになっているキャベツを箸でつかみ、自分の皿に持ってきて胡麻ドレッシングを少しかけた。


 オレはドレッシングの中じゃ、これが一番好きなんだよね。


 でも、コイツは違う。

 オレと同じようにキャベツを自分の皿に載せ、そしてマヨネーズをかけ……


 あれ? かけない?


「って、何やってんだ! お前!」

「ん?」


 コイツ、マヨネーズをかけて食べず、キャベツを口に入れてからマヨネーズを吸いだした。


「何が?」

「何がじゃねぇ。なんでマヨネーズをかけないで直接吸っているんだ!」

「ああ、この食べ方? 最近気付いたんだよ。マヨネーズをかけて食べるとさ、どうしても皿に残ったりしちゃうだろ? マヨネーズが。それはとっても勿体ないことなんじゃないかと」


 何言ってんだ、コイツ?


「だからね。マヨネーズは直接吸うことにしたんだ。皿も汚れずに済んで一石二鳥じゃないか!」


 ホント、何言ってんだ、コイツは!


「あ、別に既得権を主張するつもりはないよ? いくらでもマネしてくれちゃっていいよ?」


 ――するか!


 っていうか、頭痛ぇ……


 なんでオレはコイツと……


「あ、そうそう! 一つだけ忠告しておくと、異性の前では止めといた方がいいね。ボクは気にしないけど、やっぱ嫌がる人は多いから。モテなくなっちゃうよ?」


 ――お前が言うな!


 お前、女だろ!

 オレは男だろ!


 そして、お前はオレの彼女だろ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の一文でクスッときました。 特に修飾が少なくたんたんと読み進められる短い文章であることが最後を魅力的にしていると思いました。
[一言] 落ちが予想外だったw よくできた落語を聞いたような読後感ありがとうございます
[一言] ぶははははははははは!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ