ほのかちゃんとみつばちと桜の木
ほのかちゃんはママが作ってくれるホットケーキとおじいさんのはちみつがだいすきです。
今日も朝食にママがホットケーキを作ってくれました。
ほのかちゃんは大よろこび。
「いただきまーす」
ほのかちゃんはホットケーキを食べようとして、あることに気付きました。
ホットケーキの上に、はちみつがかかっていなかったのです。
「ママ、はちみつは?」
ほのかちゃんがママにきいてみると。
「ごめんね。はちみつ、なくなっちゃったの」
と、ママはあやまります。
「でも、はちみつがなくても、ママのホットケーキはおいしいわよ」
「いやいや。ほのか、はちみつがないとホットケーキ食べたくない」
ほのかちゃんのわがままに、ママは困ってしまいました。
そこで、ママは考えました。
「そんなにはちみつがほしいのなら、おじいさんのところに行って、はちみつをもらって
きてちょうだい」
はちみつがどうしてもほしいほのかちゃんは、ママの言うとおり、おじいさんのところ
へはちみつをもらいに行くことにしました。
おじいさんの家は、ほのかちゃんの家の近くの丘の上にありました。
「おじいちゃん、おはよう!」
ほのかちゃんは元気よく、おじいさんにあいさつします。
「おはよう、ほのか」
おじいさんはえがおで、ほのかちゃんをむかえてくれます。
おじいさんはパンにたっぷりのはちみつをかけて食べていました。
「今日はどうしたんだい?」
「あのねあのね、はちみつがなくなちゃったの。ほのかね、ホットケーキだいすきだけど、
おじいちゃんのはちみつがないと食べたくないの。だから早くはちみつちょうだい」
せっかちなほのかちゃんは、まだパンを食べているおじいさんを急がせます。
だけど、おじいさんはほっほっほと笑いながらパンを食べています。
「早く早く!」
ほのかちゃんは、足をバタバタさせます。
「いそがんでも、ホットケーキはにげはせんよ」
おじいさんはパンを食べおえると、ゆっくりと立ち上がります。
「今からみつをあつめるから、ここでまってなさい」
「ほのかもおてつだいする」
早くホットケーキが食べたいほのかちゃんは、おじいさんのあとをついていきます。
おじいさんはたくさんある巣箱の中から、巣枠を取り出します。
ほのかちゃんは、おじいさんのしごとをじっと見ていました。
「ねえ、おじいちゃん。みつばち、おこらない?」
「みつばちははたらき者でおとなしいからおこったりはしないよ」
「ふーん」
ほのかちゃんは巣箱をのぞきこみました。
すると、巣箱から一匹のみつばちがでてきました。
「わっ」
びっくりしたほのかちゃんは、おじいさんのうしろにかくれます。
「だいじょうぶだよ。ほら、ほのか」
ほのかちゃんは、おそるおそるおじいさんのうしろから顔を出します。
みつばちのチビはぶんぶんと、ほのかちゃんの前を元気よくとびまわります。
「はじめまして、ほのかちゃん」
最初はこわがっていたほのかちゃんでしたが、いつのまにかチビと仲良しになっていま
した。
ほのかちゃんは、レンゲ畑でチビとあそぶことにむちゅうになって、すっかりホットケ
ーキのことをわすれていました。
ほのかちゃんは、レンゲで花輪を作って、自分のあたまの上にのせます。
「ほのかね、おじいちゃんのはちみつがだいすきなの。だって、すごくおいしいんだもん。
ねえ、チビはいつもどこであんなおいしいはちみつをとってくるの?」
ほのかちゃんがそうきくと、チビはとくいそうに答えます。
「本当はひみつなんだけど、ほのかちゃんはとくべつだからおしえてあげるよ。レンゲも
おいしいけど、ぼくのおススメは桜なんだ」
「桜?」
「うん。じゃあ、これからほのかちゃんをあんないしてあげるよ」
ほのかちゃんは、チビにあんないされて桜をみにやってきました。
「わあ、きれい」
まんかいの桜をみたほのかちゃんは、とてもよろこびました。
ほのかちゃんがよろこんでくれて、チビもとてもうれしそうです。
チビは桜のはなびらへととんでいくと、みつをとってきました。
「はい、おいしいよ」
ほのかちゃんは、チビからみつをもらうと、ペロリとなめました。
「おいしくないよ」
「ほのかちゃんはまだこどもから、このおいしさがわからないんだよ」
「そんなことないもん!」
ほのかちゃんは、ぷぅとほっぺとふくらませます。
そんなほのかちゃんをみて、チビはクスクスとわらいます。
ほのかちゃんは、ますますほっぺをふくらませます。
「ごめんごめん。本当はね、まだじゅくせいしてないから、あまくないんだよ」
「じゅくせい?」
「そうだよ。すぐ食べちゃうより少しじかんをおいて食べるほうがあまくなっておいしい
んだよ」
「ふーん。じゃあ、ほのかがいつも食べているはちみつはじゅくせいしてるってことね」
ほのかちゃんは、チビからはちみつについていろんなことをおしえてもらいました。
はちみつのことにくわしくなって、ほのかちゃんはちょっととくいげでした。
と、そこに。
「えーんえーん」
どこからかだれかが泣いている声がきこえてきました。
気になったほのかちゃんとチビは、耳をすましました。
「えーんえーん」
なんと、泣いていたのは背高のっぽの桜の木だったのです。
「どうして泣いているの?」
ほのかちゃんは、桜の木にききます。
すると、桜の木は泣くのをやめて言いました。
「ぼくのあしもとをみてよ」
みてみると、空カンやお菓子のふくろや食べのこしのお弁当がありました。
ほかの桜の木の下にもゴミはたくさんちらかっていました。
「どうしてこんなにゴミがいっぱいあるの?」
「花見にやってきた人たちのゴミなんだ。みんながぼくたちをみてよろこんでくれるのは
うれしいけど、ゴミを片付けないでそのまま帰ってしまうのが、ぼくはかなしいんだ」
そう言って、桜の木はまた「えーんえーん」と泣きだしてしまいました。
「このゴミ、ぼくたちで片付けようよ」
と、チビが言いだしました。
だけど、ほのかちゃんはいやだと言います。
「どうしてほのかがそんなことしなくちゃいけないの?」
「だって、桜の木が困ってるんだよ。助けてあげなきゃかわいそうじゃないか。このまま
だと桜の木は病気になって、おいしいみつがとれなくなってしまうんだよ」
おいしいはちみつが食べれなくなる。
それは、ほのかちゃんにとって大変なことでした。
「でも、いっぱいあるよ。こんなにたくさんのゴミ、ほのかとチビだけでやるの?」
チビはとくいそうに、むねをどん!とたたきます。
「ぼくにまかせて」
そう言って、チビはどこかにとんでいきました。
ほのかちゃんは、ずっとチビをまちました。
だけど、チビはなかなかもどってきません。
ひとりのこされたほのかちゃんは、さみしくなって桜の木といっしょに泣きだしてしま
いました。
すると、どこからかぶーんぶーんをいう音がきこえてきたのです。
たくさんのみつばちたちがこちらに向かってとんできます。
「おそくなってごめんね、ほのかちゃん。仲間をつれてきたからもうだいじょうぶだよ」
チビはほのかちゃんのあたまの上にのっかります。
「さあ、みんな。ゴミをひろって、桜の木を助けよう」
「おー!」
チビのかけ声で、みつばちたちが桜の木の下のゴミをひろいはじめました。
「ほのかもがんばる」
ほのかちゃんは泣くのをやめて、チビたちといっしょにゴミをひろいます。
だけど、ゴミがたくさんありすぎて、なかなかなくなりません。
そこに、大人たちが花見にやってきました。
「おじょうちゃん、なにをやってるんだい?」
ほのかちゃんたちに気付いた大人たちがきいてきました。
「みんながゴミをちらかしたままにしてるから、桜の木が泣いてるの。だから、ゴミをひ
ろってるの」
「そりゃ大変だ。みんなでひろってあげよう」
そう言って、大人たちもいっしょにゴミをひろい始めました。
みんなで協力すると、あっという間にゴミはなくなりました。
「ありがとう、ありがとう」
桜の木は大よろこびで、ほのかちゃんたちにお礼を言いました。
「いいことをするときもちがいいね」
ほのかちゃんもうれしくなりました。
大人たちもみんなニコニコ顔をしています。
「桜の木さん、もう泣かないでね」
そう言って、ほのかちゃんは桜の木に手をふって、チビたちとおじいさんのところに帰
りました。
「おかえり、ほのか」
おじいさんはえがおで、みんなをむかえてくれます。
「あのね、おじいちゃん。今日ほのかね、桜の木さんとおともだちになったの」
「そうかいそうかい。おともだちがたくさんできてよかったね」
「うん。チビたちともおともだちになれたし」
ほのかちゃんがそう言うと、チビたちはうれしそうにぶんぶんと、ほのかちゃんのまわ
りをとびます。
「はい、はちみつだよ」
「ありがとう」
ほのかちゃんはしぼりたてのはちみつを、おじいさんからもらいます。
「チビ、またあそびにくるからね」
ほのかちゃんはなんどもなんどもチビたちに手をふって、お家に帰りました。
お家に帰ったほのかちゃんは、今日あったできごとをママに話しました。
「よかったわね、ほのか」
ママはほのかちゃんのあたまをなでました。
ママにほめてもらえて、ほのかちゃんはとってもごきげんでした。
「はい、ホットケーキよ」
ママはごほうびにやきたてのホットケーキをだしてくれました。もちろん、おじいさん
のはちみつがたっぷりとかけてあります。
「いただきまーす!」
ほのかちゃんは大きな口をあけて、ホットケーキを食べました。
「おいしい!」
はちみつがたっぷりかかったホットケーキが食べれて、とってもしあわせなきもちに
なれたほのかちゃんでした。
おしまい
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