生きる理由はすぐそこにあるよ
これは私の気持ちや現状をフィクションにしたものです。私と同じ考えの方がいましたら。これを見て少しでも元気づいてくれれば嬉しいです。
またうつ病について少しでも理解していただけると書いた甲斐があります。
どうして死んではいけないんだろう。
ふと私はそんな事を考えた。
私みたいな駄目人間死んだって誰も悲しまない。
私がいることで嫌な思いをする人はいるけど、私がいなくなることで困る人はいない。
むしろ喜ぶくらいだろう。
私は世間で言う所謂うつ病だ。
そのため仕事も出来ず、生活保護を受けながらのうのうと生きているいわば社会の寄生虫みたく呼ばれる存在なのだ。
「怠けているだけ」「そんなの甘え」
様々な言葉が私を射抜く。
その通りかもしれない。
皆は辛くても我慢してそれでも歯を食いしばって生きている。私が気力が出ないから何も出来ないなんて言うのは周りからすれば馬鹿馬鹿しいだろう。
でも、本当に辛いの。生きることに希望を見いだせない。
私自身に価値を見いだせない。
だって、今まで努力はしてきたけど結果は出なかった。
努力した過程ではなく、結果を見る社会では私の結果を伴わない行動は無意味でしかない。
努力しても報われない。
助けを求めても突き放される。
理解なんてハナからしてもらえるわけがない。
人を殺すのは駄目なのは分かる。だってその人には未来があるから。
でも、どうして自殺は駄目なの?
私に未来はないの。いても他人に迷惑をかけ続けるだけ。私の死で喜ぶ人は一杯いるはずだよ。
私はその疑問を解決する為、私が友達と一方的に思っている人に電話することにした。
プルルルル
「・・・もしもし?京子?今大丈夫かしら?」
「あっ、千夏どったの急に?すっごく昏いよ?」
私とは正反対でとても明るく人懐っこい性格だ。私もこんな素敵な人だったら・・・。
「ごめんね、仕事終わりで疲れてるのに」
「いいって気にしないで。私と千夏の仲じゃない。それで?どうしたの?」
彼女はいつもそう言ってくれる。誰に対しても分け隔てなく明るく接し、全てを包み込むかのような包容感のある人。
神様は意地悪だ。私はこんな卑屈なのに彼女は太陽のように眩しい。どうしてこんな人に生まれさせたの?
ううん、悪いのは全部私。神様は悪くないよね。
「ねぇ京子。・・・どうして自殺したら駄目だと思う?」
「そんなの、周りの人を悲しませるからだよ」
「私の死で悲しむ人はいないし・・・私なんていなくていいじゃないそんな人も自殺は駄目なの?」
「私は悲しい。千夏とは親友だと思ってるし、それに私以外にもいるよ」
「誰?他の人って・・・、それにどうして私なんかを親友なんて思うの?面倒なだけだよ・・・」
「私は千夏のこと面倒なんて思ったことは一度もないし、一緒にいると楽しい」
「どこがよ・・・迷惑ばっかりかけているじゃない・・・、京子は優しいから気を使ってるんでしょ?」
「バカ言わないでよ!私も怒るよ?いい、私はあなたの欠点も含めて好きなの。他の周りにどう言われたかしらないけど。欠点も認められない人なんて友達じゃないよ」
「そんなことない!私は欠陥だらけの人間なの!生きてちゃいけないの!」
「どうして信じてくれないの?私はあなたのことすっごく大切に思っているのよ?うつ病だって焦って治す事無いじゃない。それに、さっき言ったでしょ他にも大切に思っている人がいるって」
「そんな人いるわけない・・・!私は皆に迷惑をかけて生きてきたんだから!恨まれる事はあっても好かれる訳無い!」
「いるわよ。優介はあなたの事大好きなのよ?世界で一番愛してるって言ってた」
「そ、そんなわけない。だって優介さん私と話すとき目も合わせないんだよ!?」
「それは千夏が可愛いくてまともに見れないからだって言ってたよ」
「そんなわけない!そんなわけ・・・ないよぅ・・・」
違うそんなこと無い。優介さんと両想いなわけない。
でも本当だったらそう思うと涙が出てきた。
「でもっ!それが本当なら、私なんかと一緒にいたら優介さんが不幸に・・・」
「あー、今優介に連絡したからきっと直ぐにそっちに行くと思うわよ。真実は本人に聞いたら?」
「もうっ!余計なことしないで!」
勢いに任せて私は電話を切った。
今のできっと京子にも嫌われただろう。気を使ってくれた相手に対してあんなことを言ったんだから。
でもこれでいい、私を嫌ってくれれば京子も私という呪縛から解放されるはず。
うつ病の相手なんて疲れるだけ。
もういいや死のう。さっきので私は本当に孤立無援になった。
私は重い体を持ち上げキッチンまで向かう。
包丁で手首を切るためだ。
・・・痛いんだろうなぁ。でもこのまま生き続ける苦しみから解放されるなら安いものかな。
そう思い引き出しから包丁を手にしたとき。
ピンポーン
家の呼び鈴がなった。
本当に優介さんが来てくれたの?どうして・・・。
「おい、千夏!俺だ優介だ!頼む話を聞いてくれ!」
ドア越しに優介さんの声が聞こえてくる。
最後に話だけ聞いてみようと思い、包丁をキッチンテーブルに置き玄関に向かう。
ガチャ
「はぁ、良かった。自殺してないか本当に心配だったんだぞ?あんまり心配かけないでくれよ」
優介さんは元々京子の友達で、その際に紹介された人だ。京子の友達だけあってとっても優しい人でその上アイドル並にかっこよかった。
私は分不相応にも優介さんを好きになってしまった。今まで色々な人から虐げられ、家族にも見放された私を、あの二人は嫌な顔をせずに付き合ってくれた。
でも怖かった。今まで付き合ってきた人達みたいに掌を返して離れていくのではないかと、あの二人を疑ってしまった。
「・・・どうしてっ・・・来ちゃったの・・・?こんなめんどくさい女の所に・・・どうしてっ!」
私は泣いていた。来てくれたことが嬉しかったからだと思う。
子供みたいに泣きじゃくっていた。
「京子から聞いてな。千夏が自殺しそうだって。ごめんな、俺が千夏を不安にさせたせいだ」
「ちがっ!違う!優介さんは何も悪くない!悪いのは全部私なの!こんな人間のことは忘れてっ!」
「千夏は何も悪くない。悪いのはロクに目も合わせなかった俺だ。本当にすまない。だって、あまりにも千夏が魅力的だったから、恥ずかしくてつい」
「っ!?」
信じられない言葉が聞こえた。こんな人間が、私が魅力的?
「そ、そんなことないもん!私は嫌な人間なの!せっかく優しく接してくれた京子と優介さんに裏切られるんじゃないかって・・・疑っていた女だよ!?それのどこが魅力的・・・」
そこまで言って言葉を遮られた。
不意に優介さんに抱きしめられたからだ。
肌で感じる優介さんの温もりは何よりも穏やかで、優しいものだった。
「好きだっ、千夏。俺と・・・、俺と付き合ってくれ」
「そ、それは・・・できない。私といたら優介さんにいっぱい迷惑かけちゃうから」
優介さんの言葉で意識を取り戻し、必死に声を紡いだ。
「そんなこと無い。千夏と一緒にいると俺はすごく幸せな気分になれたんだ。可愛らしい笑顔。さりげない気配りができて、何よりもたった今も自分以外の人間に気を使えるじゃないかその優しさが魅力的なんだ。それとも、千夏は俺のこと嫌いか?」
「き、嫌いじゃない!むしろ大好きだよだから・・・優介さんには幸せになって欲しいのっ!」
「じゃあ、俺の幸せは千夏とずっと一緒にいることだ。その願い・・・叶えてくれないか?」
これ以上ないほど幸せだった。大好きな人にここまで想われているなんて。まるで夢でも見ているかのよう。
もう頭が真っ白で何も考えられない。
「ふ、不束者ですがよろしくお願いします・・・」
きっと顔は真っ赤だったと思う。恥ずかしくて、嬉しくて、泣きすぎて。
「こんな俺だけどこれから宜しくな」
頭を撫でられてふわふわした気持ちになる。誰かに撫でられるのってこんなに気持ちいいんだ・・・。
私は嬉しくってついギューッて強く抱きしめた。
「千夏が死んだら俺も京子も悲しむから、自殺なんて考えないでくれよ・・・」
優介さんが泣いているのが震えた声から分かった。
「でも、私さっき京子と喧嘩しちゃったよぅ。せっかく私に気を使ってくれたのに・・・絶対嫌われてるよ・・・」
「そんな事ないよ。ちょっと電話して確認してみたらどうだ」
言いつつ話してくれたのでポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけてみる。
「・・・もしもし・・・京子、さっきはごめんねせっかく心配してくれたのにあんな怒鳴って」
「なぁーんだそんなことかいいって、気にしてないよ。それよか、優介はどうした?」
「家に来てくれた・・・」
「なんて言ってた?」
「・・・好きだ、付き合ってくれって・・・」
思い出すだけで涙が零れる。
「ねっ?言ったでしょ?優介と幸せにね。それと、これからもよろしく千夏」
電話越しでも京子が明るい笑みを浮かべているのが分かる。
「うんっ!」
私は人生で一番の明るい声でその返答に応えた。
そのまま京子とは一度電話を切った。
私は今すごく幸せだ。
こんな私でも生きていていいんだ。
誰かに必要とされるんだ。
それがすごく嬉しかった。
そしてその気持ちを今最大限に表すことにした。
「優介さんっ!」
叫ぶと同時に優介さんに抱きつく。
この人となら、ずっとやっていける。どんな苦難も乗り越えられる。そう思った。
だから。
「大好きです!これから、よろしくお願いします!」