第5話 新しい名前
なんでもこの世界での名前を付けて貰わないと、私に何か大変なことが起こるらしい。大変な事ってなんだろう。よくわからないけどちょっと怖い。シュバルツさんはすっかり考え込んでしまって一人でブツブツ言っている。
「……よし。では私がお前に名前を付けてやろう。俺の手を握れ。よし、お前の名前はディアマンテ、ディアだ。……自分で名前を言ってみろ、ディア。」
シュヴァルツさんは強引に私の手を握ると、真剣な目で私の顔を正面から見た。
「えっと、私の名前はディア……です?」
「……? 駄目だな。ではお前の名前はリヒト、言ってみろ。」
「……リヒトです」
「これも駄目か。うーん……ではリーリエはどうだ。」
「……リーリエです……あのー、これって何か意味あるんですか?」
「ちょっと待ってくれ、頼むから」
シュヴァルツさんは私の手をにぎったまま眉間にしわを寄せて何やら真剣に考えている。
きっと人間の時だったらこんなカッコいい人に至近距離で手を握られたらどきどきしちゃうだろうけど、竜になった私は全然平気。うん、こういうのって役得って言うんだよね! むふふー
「……ではこれはどうだ、ユーリヴァイス」
「……私の名前はユーリヴァイス……」
私が最後まで言い終わらない内に、私とシュヴァルツさんの周りが一瞬眩しい光に包まれた。
「えっ? 何?」
「よし、これでお前の名前はユーリヴァイスになった。前世の名前は人前では絶対に口にするな。普段はユーリと名乗れ。いいな。」
「えっと……はい」
そう言ってシュヴァルツさんはようやく私の手を離した。
どうやら私の名前はユーリヴァイスになったらしい。っていうかこの人説明少なすぎだよね? 今のがなんなのか、ちゃんと教えてくれないと分からないんですけど!
「……まあ色々言いたそうなのはよくわかる。とりあえずお前は体を治せ。飛べるようになれば私が色々教えてやるしいい所へ連れて行ってやろう」
そう言うとシュヴァルツさんはニヤッと笑った。
「あの、シュバルツさんはどうして竜のことに詳しいんですか?」
「さんはいらんしルツでいい。ルツと呼べ。それに私も竜だ。同胞だと言っただろう?」
「ええっ!? 嘘!」
「嘘とはなんだ、嘘とは。」
「だってどう見ても人間……でしょ?」
「竜の魔力を持ってすれば望みの姿に変わることな造作もない。ユーリ、お前も望むなら人の姿になれるぞ。」
ルツはそういうとまた私の手を握った。
「目を閉じて自分の手に意識を集中しろ。だんだん暖かくなっているのがわかるか?」
「……うん」
言われた通りにすると、不思議なことにさっきまでは冷たかったルツの手が少しずつ暖かくなっていく。
「これが魔力だ。ユーリの中にもある。少しずつ魔力を流してやるから暖かさを辿っていくんだ」
暖かい何かは私の手から腕を伝わり、体の中を満たしていく。なんだかぽかぽかして体が気持ちい好い。
「……なんだか体がぽかぽかして、気持ち良いです」
「私の魔力によってユーリの体の中の魔力に熱が伝わった。これで自分の中に魔力が満ちているのがわかるだろう。この状態のまま、人間になった自分の姿を想像してみるんだ。」
人間になった自分の姿……?
「目を開けてみろ、ユーリ」
予約投稿というのをしてみました。どきどき