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異世界で普通なオレにできること  作者: 籠 侑
1章
2/2

暗がりの中を光が包む

狭間川には多くの野次馬が集まっていた。

"世界の終わりが近づいてる"だとか"宇宙人による先制攻撃だ"とか、中には"実はこれ俺がやったんだよね"などと言う輩も現れている。


野次馬が多いせいで、正人はまだ件の巨大な穴を見ることができていない。


「くっそ〜。全然見えねーじゃん」


そんな独り言をつぶやきながら、正人は巨大な穴が見える位置を探すためにあたりを見回す。


すると視界に大きな橋を捉えた。

高さ20Mはある綺麗なアーチが印象的だ。


「あそこなら上から穴を見下ろせるな」


しかし、それはとても危険な行為だ。

皆それを理解しているから、特等席があるというのにそこには行かない。


人混みをかき分け橋まで足を進める。

橋に辿り着くと点検用の梯子が付いていることに正人は気付いた。


「お、ラッキー!以外にイージーだな!」


正人はすぐに登り始めて、1分もしない内にアーチの天辺までたどり着いた。


そこから見下ろす景色は神秘の一言に尽きる。

蒼く綺麗な水の流れ、それを飲み込む巨大な穴、その穴から溢れ出す神々しいまでの光彩。


「綺麗な光だ………」


その光に魅入られた正人はそう言葉を溢す。


「………………………んー?光?」


正人は何か違和感を感じ、顔を顰める。


違和感を感じるのは当然だ。

何せテレビでは発生原因が不明の巨大な穴としか報道されていなかった。

突如現れた巨大な穴、そこから神々しいまで光が溢れていたらメディアが取り上げないわけがない。


なら何故。

正人は一つの結論に至る。


「俺にしか見えて……ない?」


正人は先ほどの野次馬を思い出す。

野次馬達は穴にこそ騒ぎ立てて、有る事無い事仮説を立てていたが、穴から溢れ出す光については何も触れていなかった。

メディアも気付いてない。野次馬も気付いてない。

俺が上から見下ろしているから見えてるだけなのか、と正人は思考するがその考えも直ぐに否定される。

上を見上げるとメディアのものと思われるヘ

リコプターが上空で2、3機ホバリングしていたのだ。


「俺しか見えてないとか一体どうなってーー


ビュゥゥ!!


突如、台風でも来たのではないかと思わせるほどの強風が正人の体を襲う。そして宙に押し出す。


「うぉぁぁ!!!」


体の防衛反応として一瞬目が閉じる。

だがその防衛反応は何も守れてはいない。

目を開けると、あの原因不明の巨大な穴、神々しい光を放つ巨大な穴が鼻先にある。


ーーー死んだ


正人は直感でそう悟る。

目を瞑り、少しでも死に対する恐怖を拭おうともがくーー










++++++++++++++++++++


目を瞑ってどのくらいだったろうか。

自分は死んでしまったのだろうか。

だとしたら死因は何なのだろうか。

あの穴がマントルにまで続いていたとしたら溶死、それとも穴にはちゃんと底があり底に溜まった水で溺死。

そんな考えが正人に過る。



だが、そのどれもが違う気する。

目を瞑ってから痛みも苦しさも感じていない。

感じられるのは浮遊感というか、落ちているような感覚だ。


「……まだ落ちてる!?」


正人はパッと目を見開く。

暗く、冷たく、静かで、酷く不安を煽るような状況だ。

本当にどれだけの時間落ちているのだろう。

まだ助かる可能性はあるのだろうか。

命が助かったとしても救出されるだろうか。


全てが不安と疑問に押し潰される。


「そういえば、あの光は?」


ふと、橋のアーチから見下ろした光景を思い出す。

あの時、神々しく溢れ出す光が確かに見えていた。なのに、今は闇しかない。

穴に落ちる寸前までは光を確認できていた。


「ーーなんだよ。全部俺の妄想かよ」


平和で退屈な生活に突然現れた神秘。

そこに自分の妄想が織り合わさって招いた悲劇。

そう、自分の浅はかさを泣きながら自嘲する。


だが、正人の予想は外れた。

突如暗闇の中が光に包まれる。

穴に落ちる前に見た神々しい光だ。



『どうかお願い、世界を……この世界を救って!!』



耳に、脳に、心に、その声が響く。


周りが光に包まれて、音も視界もすべて遮られる。


--なんだこれ、俺死ぬのか?


意識が遠のき、ついに途絶える-----



やっと2話目の投稿です。

なかなか文字数が増えませんね(笑)

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