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外側から見ていたらこうなりました

作者: あにゃん

登場人物


目線>>>>

メアリ:名前はラストまで出て来ないが彼女目線で物語が進む。大きな秘密を抱えた男爵家お嬢様付き侍女


お嬢様:この世界の乙ゲを攻略した事のある転生者。我が儘お嬢様の割に男爵の洗脳が行き届き立派な後継者へと教育済み。(ここだけの話)


男爵様:通り名は色々、社交界[沈丁花]、裏の王族[真王(魔王)男爵]

普段はにこにこにこにこにこに・・・げふっ、



その他は名前出てきますがサラッと読んで頂いて大丈夫です。





皆様の暇つぶし程度に読んで頂けたら感謝です(´∇`)


私はただ見ていました。


顔の整った性格の良い王族や高位貴族の子息様を手玉に取り、婚約者だった令嬢様や妹君を屈服、蹴落とし天下を取った様なドヤ顔で高笑いをしている素朴で可愛いらしい顔をした男爵令嬢を・・・・・見ていたのです。





「見事な悪事の数々でございましたお嬢様」


「口を慎みなさい、モブメイド」


恐らくは1番近くで見ていました。

そして今もわけのわからない言葉を発しているお嬢様を。


「お嬢様の仰るげぇむ・・・とやらはお止めになったのですか?」


ふと私の顔を見て不機嫌を隠そうともせず閉じた扇子を口元に当て考え込んでしまいました。


「全て終わるのよ」

「はい?」


「ハーレム築いてラストのスチルは大団円でエンドロールは幸せに暮らしました、先のストーリーなんて知らない。それに・・・どう幸せに暮らしたら良いの?」


何だか全く理解出来ない言葉で何か困り果てている様子のお嬢様を見て、取り敢えず幸せになる気である事は理解出来ました。

本当に神経の図太いお人なのだと認識しました。


「・・・・・・お嬢様、お嬢様の頭はすでに湧いておりますので幸せかと存じます」

「モブメイド、今日から暇を出します」


私の名前はモブメイドではないのだがお嬢様が仰るならモブメイドなのだろう。

しかし、

「私の雇い主は男爵様にございます、高貴な御子息様方を拐かし貴族のお嬢様方の並々ならぬ努力を後から来て平然と掠め取るお方には何の決定権もございません」

「・・・私に仕えるのを辞めて頂けるかしら?」

「公平な勝負の結果、外れクジを引いたのは私です。私が責任を持ってお嬢様にお仕え致します」


「罰ゲーム??」


お嬢様が養女に迎えられ教養をある程度学んだ後、学校に通う際に侍女が集められクジを引かされたのです。

その時から男爵様が居ないところでおかしな発言や行動をするお嬢様を皆避けていたのに全く気にも留めていなかったせいでクジのイカサマに気付かず引いてしまい押し付けられました。



「今日で2年生も終わりだわ、そしてゲームも終わるのよ」

「今日の出来事をご存知なのですか?」

「えぇ、今までハーレムルートを爆進してきたもの。ラストは派手にライバル達の断罪よ」


「・・・・・・?」


お嬢様の言うライバルとは婚約者の令嬢様や妹君の事。

お嬢様が得意げに断罪はハーレムルートでないと起きないイベントだと説明しています。





・・・・・断罪。


断罪の意味をお嬢様はきっと深く理解していない。



一言に断罪とは言うが、断罪とはされた者は死刑を宣告されたも同じでご令嬢ならば先の結婚など望めず良くて好色貴族の玩具になるか誰も見向きしない醜男貴族のとりあえずの愛人になるしかない。

悪ければ家から断絶され娼婦か野垂死ぬしかないのだ。


断罪した者にも咎は来る。

仮にも彼らは王族や高位貴族と侮るなかれ、これは法廷を通さない断罪。

つまり私的な行動なのだ。

彼らの言葉は効力は発揮される。

しかし断罪をした者は私的に残酷な死刑宣告をした者となる。

誰がそんな非道な真似が出来る者に嫁ぎたいと思うのか。

次は我が身と思えば例え王族だろうが貴族だろうが政略的な家同士の結婚だろうがいつ掌を返されるか分かったものではない、及び腰になる。



つまり、誰も得をしないどころか家に泥を塗り悪名高くなるだけなのだ。

そこに王族が混じっていたのなら民からの支持は地に落ち、王家存続の危機にもなりかねない。


そんな緩みきった国など他国に付け入られるのも時間の問題だ。




その原因が男爵家の養女となれば・・・・

やはり当主の男爵様はきっと無事ではないでしょう。





学生鞄に学校指定の制服を着こなし少しヒールの高い学生靴で自室を後にします。

貴族の子供を預かっている学院は護衛、侍女のいずれかを1名付けて良い決まりとなっております。

お嬢様の付添は、私。


「行くわよ、モブメイド」



言葉が、出てこなかった。


私の普段見せない動揺に侍女仲間が気遣わしげに声をかけてくる、護衛が普段見せない戸惑いの表情を浮かべ着地点を見失った手が悲しげに浮いている始末。

ふと皆の後ろに男爵様の姿を見つけます。

気配を消し成り行きを見守っていたのでしょう。

視線が一瞬だけ重なり男爵様はニコリと微笑み姿を消しました。


お父様、お母様を早くに亡くし10歳足らずでその地位を継ぎ誰にも文句を言わせない手腕でたった1人でこの家を守っているお方。


髪は透き通るほど美しい銀の色。

この世界で銀髪は老人だけだが彼はそれほどまでに苦労とか苦しみなんて言葉が甘ったるいほどの経験をされてきているであろう事が容易にわかります。

瞳は淡い碧の輝き。

見る角度やタイミングによって若者、青年、壮年、どれにも取れる整った少し不思議な顔立ち。

れっきとした27歳、社交界の沈丁花と呼ばれています。

国の為と王家すら把握し切れないほどの膨大な仕事をこなし暗躍する裏の王族。

静かに優しく微笑むその姿からは想像出来ません。





そして、そんな男爵の館。

2人でここを通るのは最後になるかもしれないと男爵家を後にした。




学校に着き、まず豪華で大袈裟な正門を抜け学び舎が現れます。

王城の次に大きい建物だと言われている4回建ての校舎は白を基調とした清楚で丸みを帯びた造りをしています。

その右側の緑に囲まれ厳かな雰囲気に包まれた講堂。

今日はそこで終業式が行われる予定。



教室に入り、まずは冷たい視線の嵐。

お嬢様は何にも気にしてないし気付いていないが高貴な方々を狂わせたとして「魔女」呼ばわりされています。

「皆さん、おはよう」

朗らかな木漏れ日の様な笑顔が教室に差し込む。





バシィィィイン


その瞬間、教室に木霊する何かを叩く音。


美しい瞳に涙いっぱいの少し釣り目がちのキツめな少女がツカツカツカとお嬢様に近付き力いっぱいの平手打ちをかました。


「わたくしは認めなくてよ、泥棒猫」


品性の欠片もない。

平手打ちとか大声を張り上げるなど爵位が上のお嬢様のする事ではありません。

お付の侍女も同様にお嬢様を睨みつけるなど、恥知らずですね。


お気持ちは察しますが・・・・淑女が民衆の前で醜態を晒すなど正気の沙汰ではありません。


「・・・誰が、認めなくても良い。記憶保持者には記憶保持者の矜恃があって私は私なりのやり方で今日まで生きたんだから」

残念ながらお嬢様の御髪が乱れ表情を読み取る事は出来ません。


それでも私は憎しみの目を真っ向に受けるお嬢様を見ているしか出来ないのです。




いよいよ始まる断罪が幕を開けようとしています。


粛々と進む式の最中、最後の答辞が王家の者より述べられ、

「ここにお集まりの幼き紳士淑女の諸君。未来は君たち自身がここで学び得た知識、経験で切り開いて行くものだ・・・・・・」

長々と始まる第一王子の演説。

この国を代表し生徒の観点からもわかりやすく進級の祝辞を述べられます。

そして終盤にかかり王子の声音は一変。


「しかし、門出を祝うにあたり、それに相応しくない者がいる。今から名を呼ばれた者は壇上へ、」


シンっと静まり帰った建物に全体にハッキリと木霊します。

お嬢様の顔を見やれば、乱れた御髪を正そうともせずやはり顔色は見えません。

泥棒猫呼ばわりした令嬢を見やれば顔を真っ青にガチガチと震えております。

お達しはあったのでしょう。


次々に呼ばれていくのはやはり婚約者だったご令嬢や妹君。


「高位貴族のお前達は結託し下級貴族のご令嬢を苛めていたとの報告があがっている」


「・・・・・・」


「エリーゼ」

正統派王子系の第一王子が妹君を威圧します。

恐ろしかったのでしょう、肩を震わせ可憐な少女は俯いています。


「本当なのか?クリステル?」

眼鏡っ子属性の候爵子息が元婚約者を心配そうに見つめます。

先程お嬢様を引っぱたいたご令嬢が彼を涙いっぱい見つめ返します。


「愚かな事を、アリス」

どS属性の伯爵子息は婚約者を責めます。

負けていないご令嬢は「愚かはどちらでございましょう?」とか何事かを言い返しておりました。


「シャルロッテ、ゆくゆくは騎士の妻になるであろう女性が弱い者イジメとは何事か!」

堅物真面目属性の騎士様も同様に婚約者を静かに怒り始めました。

ご令嬢は物静かに、けれど強い眼差しで騎士様を見上げます。





「お嬢様」

「・・・何よ?モブメイド」

「何の茶番ですか?」

「・・・お黙り」


この異様な状況にザワザワと周りも気付いて来た様です。

ねぇ、これって、とか、え?もしかして?とか言っております。





「報告の真偽を確かめたい」



何が起ころうともあってはならない未来を知りながら見ているしか出来ない。


きっと、お嬢様の言う主役や脇役が本当に存在するのなら私はそれにすら値したいちっぽけな存在なのだろう。

だから口を出す事も手を出す事も止める事すら出来ずただ唇の奥を噛みながら黙って見ている事しか出来ない。


お嬢様と出会うまでは聡明であり、体の弱い妹君想いの優しいお兄様と専らの評判だった王子。

それぞれがそれぞれに評判の良い彼らはお嬢様と出会ってから大切な者を履き違えてしまったらしく彼女たちを追い詰めていてしまった事さえ気付いていないのです。


王子様の視線がこちらを向き手を招きお嬢様の名をお呼びになるほんの手前。




「とんだ茶番を見せられたものですね」


ここに聞こえるハズのない涼やかな声が皆を黙らせます。


長い様な短い様な静寂。


声のする方に一斉に視線が移動します。

私には振り返らずともどなただかわかります。


「・・・お父、様」


お嬢様が呟きます。




「第一王子とあろう者がこんな大切な舞台で喜劇をされるご趣味がおありとは私も驚きました」

ニコリと底意地の悪い笑顔をのぞかせるあたり男爵様は最初からこの様子を見ていたのでしょう。



真王(まおう)男爵」


王子様が動揺し過ぎたのか男爵様の裏の通り名を呼んでしまいました。

「まおう男爵?王家にそう呼ばれるとは光栄至極に存じます」


王子様の口が僅かに動きハッと意識を戻し男爵様に向き直ります。

「これは失礼ブルクハルト男爵、貴殿もいらしていたのなら好都合だ」


「はい?好都合とは何やら言い回しが穏やかではありませんね」


「そなたの養女の事だ」


「なるほど、躾が行き届いておりませんでしたので何か失礼でも?」


お嬢様の肩が僅かに震えました。

男爵様はと言えばお嬢様をチラと見る事もなく王子様と対峙しております。



「これより行う断罪に置いて、男爵を正式な見届人として要請する」

「戯言を・・・行われる断罪などありはしませんよ王子」

「申し訳ないが男爵、これは依頼(・・)ではなく命令(・・)だ」


「まさに愚鈍。これでは国を取り仕切るなど出来はしないでしょう・・・・・セシル!」



男爵の高らかな宣言と同時にお嬢様がスカートに隠し持った手枷、足枷の様な物を大量に取り出し凶悪な笑みを放つ。


「皆様、お覚悟は宜しくて?」



それからあっという間に間合いを詰めたお嬢様は王家の印がある封書を取り出し王子様に突き付け驚愕と言った表情をしてる間に人数分の枷を嵌めます。

その所要時間約1分。

早業でございます。


「ハニートラップですわ元王子様(・・・・)、一国を治める王が女に惑わされるなど言語道断!!小説や空想の世界ならいざ知らず現実にあってはならぬのです。

国が滅ぶ時その王の傍らには傾国の美姫あり、私は未来を憂いました」


何故でしょう。

お嬢様が少し他人に見えます。


「私が選ぶ道さえ間違えなければ貴方たちは私に焦がれ目の前のものを捨てる。

それは婚約者であったり血縁であったり地位や名誉さえも・・・そして、この1年は私が思う通りに事が運びましたわ。

ざまぁwwwwですわ国を疎かにする恋愛脳のバカ様方」


あ、知ってるいつものお嬢様が舞い戻ってまいりました。

しかし男爵様が少し頭を抱えております。


すぐに立ち直り壇上に上がり一礼し

「今は幼き未来を担う紳士淑女の皆様、これはあなた方への餞だ。

私利私欲に溺れ国に脅威を齎す者、仇なす者や陥れる者を良しとはせず必ず排除する貴族がいる事を忘れてはならない」


短い演説は充分過ぎるほどにここにいる者達に伝わった事でしょう。


すぐに式は解散となり別室に移り国の幹部が取り囲む中呆然とする元王子様方。

お嬢様と言えば彼らにはすでに興味をなくし恋敵だった彼女たちの元へ向かっておりました。


「どうぞ、お好きな道を選びなさい」


この空間にいる貴族の中で1番地位の低いはずのお嬢様がまるで女王様の様に尊大な態度を取っております。

まずは震えるエリーゼ様を背後に護るように騎士様の妻になる筈だったシャルロッテ様が口を開きます。


「私の役目を王家を護る夫を支える事、その為に教育を受けて参りました。早々に心を入れ替えて頂き彼が騎士として国や王家のため立派に勤めを果たせるように支えますわ」

「・・・シャルロッテ」


騎士様を見る事も無くこれが義務なのだと割り切っておいでの強い眼差し、

逞しい奥方様になられる事でしょう。


「クスッ、この私を断罪しようなどど愚かな事を致しましたわね。伯爵夫妻とは養子縁組し婿を貰い男児を産む約束のもと既に話がついておりますの、お兄様(・・・)、陥れようとした罰として私自ら貴方の首に枷を嵌めて一生飼い殺しにしてやりますわ」

「アリス、謀ったな」

「まったく、性格が捻くれこじらせた人間など底が知れますわ」


こちらはご兄妹になられたばかりで舌戦を繰り広げておりますが結末は決定している様です。


そしてシャルロッテ様の後ろに護られていたエリーゼ様が動きます。

「あぁ大好きなお兄様、王家とあろう者がよく何の証拠もなく王の許可もなく私的に断罪など畏れ多い行いができたものです。それも1人の女にのぼせ上がるなど・・・あの瞬間まで優しいお兄様に戻ってくれる事を願っていた私も愚かでした。

第一王子は王位継承権を正式に剥奪されましたわ」

「・・・・・そうか、」


静かに受け入れる元王子様に妹君は涙を堪えながら死刑宣告。

お互いに幼く愚かだった自分を恥じ悔い改めて頂けるなら或いは王家の未来は明るいかもしれません。


最後に眼鏡っ子候爵子息とクリステル様はと言えば、

「すまなかったクリステル、貴女は何を望む?」

「貴方はいつもそうやって私に判断を委ねられますのね。ご存知ではありませんか、私が望んできたのはいつも一つでした」

「・・・いいのか?」

「えぇ」

「僕は後継者から外されるだろう、それでも?」

「どうやら幼い頃よりずっと共に過ごした日々は私に正しい(・・・)判断というものをさせてくれませんのよ」

「・・・・・すまない」








えぇ、わかります。

そのお気持ち。

時に甘く、人生を狂わせる感情。


その昔、正統なる王家の血(・・・・)を引く姫がいました。

彼女は高飛車で自分の可愛らしさを鼻にかけて傲慢でした。


「痛いわ!私の髪に触れておいて引っ張るなんて何事ですの?」

「申し訳ございません、御髪が乱れておいでで少々絡んでしまいました」

「なんですって?私の髪がいけないの?」

「っ、いえ」

「お前はいらないわ」


文字通り手に入らないものは何もなかった。


「今日はローレンス様がデザインなさった花飾りを所望するわ」

「あのドレスは1度着たものだわ、マダムを呼んで新しいものを作らせて」

「こんなの犬の餌よ!作り直して」


何故でしょう、涙が出るほど腐った性格をしていました。

本人は気付いておりませんでしたがみんなからは陰ながら[魔女王]と呼ばれておりました。


ただ彼女も人の子。

年頃と呼ばれる10の頃に恋をしました。


それはとある事情により爵位を継いだ者が王家に挨拶に見えた時、その透き通る薄い茶の髪に淡い碧の瞳を持った少年。



ドクリと跳ねた鼓動は一生忘れる事はないでしょう。


しかし彼の瞳は今この風景を一切映してはおらず記憶に残しても心には残さない様に見て取れました。




・・・彼女は思う。


手に入らないものは、ない。



彼女は狂い次第に溺れゆく中で破滅の足音を聞く事になりました。


背後を取られた事にも気付かず堕ちゆく時に涙も見せず気丈に振る舞い「貴方も堕ちてくれば良い」と彼に向かって微笑みました。






私は見ている事しかできなかったのです。


名ばかりの魔女王付き侍女。


私は年の頃も近い彼女を溺愛しておりました。

彼女の我儘は誰かを陥れたり命を奪うものではなく蝶よ花よと甘やかされ育てられた子供の他愛のない飯事だと思っていたから教養を身に着け一人前となればいつしか変わっていく、そんなものでした。


大人の階段を踏むこともなく彼女の足元は崩れてしまったけど、私は彼女に忠誠を誓っておりました。


生涯の忠誠。


復讐を誓い王室を去り男爵家へと潜り込んだ矢先すぐに出逢った少女は私の溺愛した姫の生き写しでした。

彼女が生きていたならばこんな成長を遂げていたでしょう。

その顔もさることながら高圧的な態度がさらに古い記憶を蘇らせます。



『メアリ、行くわよ』


大草原を背景に幼い姫が駆け出す情景が胸を焦がします。



忠誠と復讐を胸にこれからも男爵様に雇われお嬢様に仕えていくのでしょう。

お嬢様がこの先、魔女王と呼ばれ恐怖され国を陰ながら支える存在になっていくのだとしても私は傍で見ております。







「ところでメアリ、僕の娘の調子はどうだい?」


ある昼下がり男爵家書斎にお茶を運んだ私に男爵様がいつものニコニコとした笑みで訪ねます。

「はい、教育課程も全て終了しいつでも婚約者様をお迎えできる状態にございます」


「婚約者、かぁ」

「はい」


「君はどうなんだい?」

「はい?」


「あの子が結婚し、君の復讐が終わり全てが片付いた後に・・・君はどうする?」


僅かに肩が跳ねた。


「気付いていらしたのですか?」


「・・・・・僕の記憶と情報は王家を凌ぐものだという事を忘れてはいけないよ。

10年前我が屋敷に仕えたいと経歴不詳の元貴族の出だと言う女性が門を叩いた。

僕の記憶によれば彼女はその8年ほど前に会っているのにも関わらず会った事はないと言い張ったんだよ」


その面接は覚えています。

10歳足らずの少年が覚えているわけがないと知らぬ存ぜぬを貫き通した。


「どこで会ったかも覚えているよ」

「・・・・・・」

「ある少女を温かく守るような優しい瞳をし横に静かに付き従っていた」

「・・・っ」

「僕はどうやら彼女(・・)によく似た人種の様だ」

驚きのあまり声が出せず顔を下げていると目の前に陰りが差した。

指でクッ上げられた顎が固定され私の瞳に男爵様の顔が至近距離で映る。


「僕はずっと君が欲しかった、長年かけて全力で追い詰めた君がここにいる。

銀髪になるほどの苦労も、いつかの姫君の断罪も復讐も養女も表や裏の仕事も僕の人生かけた茶番だよ。

ただ父母を亡くし爵位を継ぎ挨拶に伺った王家で出逢ったあの優しく無垢な瞳をした少女がどうしても欲しかった」







狂気を湛えた瞳に囚われ身動きが取れず押し黙っていると耳の奥からお嬢様のいつかの言葉が聞こえてきた。







『全て終わるのよ』



「今日はローレンス様がデザインなさった花飾りを所望するわ」

「そうですね、あの様なデザインが似合う大人の女性になってからお願いしてみましょう」


「あのドレスは1度着たものだわ、マダムを呼んで新しいものを作らせて」

「マダムは姫様と違いお忙しいので昨日のドレスを着るかあのドレスを着るかお選びください」


「こんなの犬の餌よ!作り直して」

「姫様は猫の餌をご所望ですね、かしこまりました」




そんな日常が男爵に見初められたばかりに・・・




ちなみに男爵は元は後を継いでもやる気はなかったのだけど

メアリを逃がさず囲い込む為だけに死ぬ気で頑張り裏社会の王となり姫を徹底的に操り陥れ復讐の為近づく事を計算に入れた上で姫似の転生者を見つけ出しタイミング良く養子縁組した。



途中に出てきた断罪シーンの眼鏡候爵のやり取りは墜ちていく覚悟の2人を見て最期の姫を重ねた。




ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!

本当にただ書きたいものを書いた感じです(๑>﹏<๑)

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