第0話 「プロローグ」
夏、それは子供達にとっては『夏休み』というものがあり、勉学から開放され自由に遊び放題な時期で、殆どの大人達にとっては暑さに見舞われながら家族のため、社会のため、もしくは自分のために働いているのだろう。そして、その中間でもある『学生』は子供と同じような『夏休み』が存在しているのであった。ある者は普段の勉学も放っているにも関わらずに「遊びのシーズンだ」と騒ぎ立て問題を起こし、普段の勉学から開放され休養したり自分の趣味に打ち込んだり、さらなる勉学に励む者もいる。その他にも尋常じゃない暑さだったりクソッタレな蚊共が徘徊してたりするが、いわば子供以上学生未満にとっては一種の区切りであろう時期だ。
その中間である『学生』に属しているこの俺立花海斗も例外ではなかった。俺の住処は都会から少し離れた辺鄙な町の大学の近くにあるアパートである。学生寮もあることはあるのだが規則や門限などの制限があるためそっちには行ってない。というか真面目な奴でなければ基本的にはあそこに住まないだろう。少し離れた所には小さめのショッピングモールがあり食料の買出しはそこで行っている。アパートの近くにもコンビニがあるし部屋自体もこのアパート内では大き目の部屋をとっている。リビング、自室を含めて余裕を持って5人、ギリギリで8人くらいは寝泊りできる広さだ。・・・このような環境でのんびりとした学生生活を送るのは何とも贅沢なことだ。一種の背徳感すら覚えてしまう。だが、一つだけ問題がある。そう、それは・・・
「ヘイ海斗、アタシのためにアイス買ってきてくんない?もちろんダッシュで」
この居候が俺の安寧を苗床とし俺以上の怠惰を貪っていることだ。
「ふざけんな、だれがテメェのためにアイス何ざ買いに行くか。そんな食いてぇんなら自分で行けよ」
「えー・・・こんな暑い日に出かける馬鹿なんて何処にもいないっしょ」
「そんな暑い日にパシらせようとした屑ならここにいるけどな」
そう返したらソイツは「ちぇっ」とかいいながらリビングに敷いてある布団の上で再び漫画を読み始めた。紹介が遅れた。コイツの名前は天野陽子。訳あって俺の家に居候している女だ。見た目はアジア系の整った顔立ち、肩まで伸びた芸術品のような黒髪に細いが健康的な体つき。とここまで説明すれば美少女であると想像できるだろう。だがしかし、その実態は俺の・・・つまり男物のTシャツとジャージで布団の上で漫画をゴロゴロ読み、一切働きもしない立派な干物女だ。しかし天野にはある秘密があった。そう、
天野陽子があの【天照大神】・・・日本神話において太陽を作り出したといわれる神が人間として転生されたものである、という事だ。
・・・いきなり突拍子も無い戯言を言って可哀想な奴だなと思ったそこのアナタ。気持ちは良くわかります。そんな人が現代の言葉を容易に操り、あまつさえも俺の家でだらだらしている奴が神様の生まれ変わりなんて、とても変な話でしょう。だがしかしこれは全て本当のことでありあらゆる手段をとり確定をとった・・・いや、その事実にとらざる終えなかったのだ。その話はおいおいするとして・・・
この物語は平凡な学生であるこの俺、立花海斗とズボラな元カミサマである天野陽子の・・・慌しい日常を描いた物である。しかしこの物語は序盤ではない。いくらか遡るとしよう。まずは・・・
「海斗ー。ちょっとコンビ二いってくるわ」
「あ?あぁ・・・けどお前金ないのに何しにいくんだよ」
「お金?ここにあるよ?」
「あっテメ・・・俺の財布じゃねぇか!このっ、返せ!!」
「グッバイ海斗ー。アイスたんまり買ってくっからー♪」
「・・・・・・この・・・クソニートがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
・・・まずは、俺と天野が出会ったときの話をしようか。