鍛冶神 ダソヌマソ
次に気がついた時、俺は、ゴツイおっさんの手に握られていた。
ちょっと、そこの棒しっかり握られると変な感じなんですけど。なんかこう、脇の下に腕入れられて、胸部をがっしり抱きかかえられているような、ウホッ、密着してるぅって感じで、暑苦しい。
おっさんは、身体がデカイ。白髪の長髪に白髭、顔の彫りは深く、褐色で筋骨隆々な体躯に、白い布巻上着を着ている。
周囲には、薄衣を纏った金髪のキレイなお姉さん達が4人控えていて、彼女らはおっさんの世話をする戦乙女達らしい。
どうもこの人達の会話を聞いていると、この人は鍛冶の神様で名前はダソヌマソ。四六時中モノを造っていないと気が済まない、いわゆるクラフトジャンキーってヤツのようだ。
「ダソヌマソ様ぁ、どうしてこんな、今時誰も使わないような殴殺鈍器造ったんですかぁ?」
「ん~、単なる暇つぶしじゃ。たまには毛色の違う武器を造らんと腕が鈍るでのう。勝手に動く武器を造るのも面白いかと思ってな」
「へぇ~!そんなのも造れちゃううんですか!流石神様、カッコイィ!」
なに、この媚び売ってる戦乙女。なんかうぜぇ。
「勝手に動く武器ってどうやって造るんですかぁ?」
「なに、簡単じゃ。魂市場に行って、その武器の扱いに慣れた、イキの良い魂を買ってな、それをぶっ込むんじゃ。あとは、そいつに「空中浮遊」と「飛翔」の魔法を覚えさせれば完成じゃ」
おお!俺って空飛べるんじゃん!
「まだこいつには覚えさせておらんがな」
ありゃ!?
「それに、モーニングスターの扱いに慣れた魂は無くてなぁ、結局入れたのは一番イキが良いだけの魂じゃ。伝説級の武器にはならがお買い得だったのでのう」
な、なんか悔しいですっ!俺の価値ってそれだけかよっ!
っと、それ以前に重大な情報だ。俺はやっぱり魂だけの存在だったのか。市場で売られていたイキの良い新鮮な魂だったとはっ!
知識はあっても記憶がないなんて・・・・・・生前の記憶なんて判らんのだろうなぁ。しかし、お買い得って、どんな理由だったのか知りたいような知りたくないような。
俺がそんな事を考えていると、おっさんの従者の戦乙女が、ペットを連れてきたようだ。おっさんはペットと、俺を使って遊ぶ気らしい。
ってか、俺、ヴァルキリーさんに棒のとこ、握られたいなぁ。鎖のとこで柔肌すりすりしてもらっても良いんだけど。それに、こんな撲殺武器使ってペットと遊ぶって何をする気だ?
『さっきから五月蠅いのう。お前の考えていることは持ち手に筒抜けな仕様なんじゃ。もう少し静かにしたらどうだ。』
えっ、筒抜け!そしたら、さっきまでの全部ダダ漏れって事?
『そうじゃ。よりによって創造主たる我をおっさん呼ばわりするとは無礼な奴じゃ。やはり安物の魂だったかの?』
そもそも、なんで人の魂、勝手に武器に入れてるんだよ!しかもモニ☆スタなんかに!
『魂市場で売られ取る魂なんぞ、前世の行いがロクなものではないわ。新たな生が得られるだけありがたいと思うのじゃな。それはそうと、最近、人格を加えた動く武器の製作にハマッていてのう。武器と使い手が一つになって敵を討つ!美しい光景だとは思わんか?』
そういうのは武器技能もった奴の魂突っ込んで言えよ! 俺はモニ☆スタなんざ生前使った覚えはねぇ!少なくとも何も知識がねぇぞ!
『モニ☆スタ技能を持った魂なぞ売ってなかったのだ。仕方がないからイキの良さで選んだ』
新鮮な魚かっ! それに、そうだろうよ、こんな不人気武器の技能極めた奴なんてそうそういねぇよ! ってか、おっさんが☆使うな!
『まぁ、こうなってしまっては後の祭りじゃ。大人しくモニ☆スタとしての生を全うせい』
最後のダジャレかっ!
俺のツッコミを無視して、おっさんが何か念じると、俺の中に俺の使用説明書みたいなものが転送されてきた。
何々・・・・・・
“この武器は星球部と鎖部がアダマンタイト製、柄部はオリハルコン製です”
無駄に豪勢だな!鍛冶における最終金属じゃねぇか!
“使い手にこの武器の人格が持つ知識が投影され、使い手は莫大な英知を得ます”
俺の知識ってなんだよ!莫大な英知・・・・・・エッチなら、まぁ・・・・・・て、オイ!
“この武器の最終兵装を解放すると、星球部が分解変形して使い手の防具として装着され、星球部に神・力・光球が発生します”
なんかこれは凄そう。でも、わざわざ神と力の間に“・”入れてるのがウザイな。
“この武器の名前は、「モニ☆スタ」に決定しました”
それでいいのか、オイィ!
俺の中でドッと疲れがでたが、おっさんが立ち上がる。向かう先は、戦乙女の連れてきたペットだ。
おっさんとの掛け合いに夢中になっていたが、部屋に入ってきたのは10匹の猫。
おい・・・・・・まさか、な。まさかこれって・・・・・・
途端に俺は揺すられ始めた。何て言うんだろう、バンジージャンプが終わった後のぶら下がった状態で、上下に揺すられたり回されたりしている感じ。俺の身体は持ち手の棒の方に感覚があるのに、頭の感覚だけは鉄球側にある。
やめろ、ふりまわすな!気持ちわるっ!ってか、猫よ、引っ掻くな!これって。
猫じゃらしかよっ!!!
それからしばらくの間は、最悪の気分だった。鉄球なので傷つかないとは言え、俺の目線には猫の牙と爪と肉球がタシタシと叩き込まれる。
肉球アタックの時だけはちょっと幸せな感じがするが、事態は切迫してきた。
おっさん、だんだん興奮して手が汗ばんできた・・・・・・
俺の棒周辺がヌルヌルしてくる。まるでマッチョなアニキにサウナで抱きつかれているかのような・・・・・・
俺はそのまま気を失った。