モーニングスターな俺、オワタ
モーニングスターって知ってるかい?明けの明星を意味するんだけど、朝星棒とか星球武器なんて呼ばれ方もする。
要は「星形の武器」だ。別に、夜の星でもいいのに、なんで明けの明星なのか、俺は知らない。知っているのは、一見さわやかな呼び名のこの武器が、星形のトゲトゲ鉄球を鎖付きの棒を持って振り回す、えげつなさでは超ド級の凶悪な武器で、寝起きの悪い奴の目覚ましとしては使い手にとって最高(そして使われる方にとっては最悪)だってことだ。
なんで急にこんな事を言うかというと。
気がついた時、俺はモーニングスターだった。
何を言ってるのか判らないとは思うが、俺も何をされたのか判らない。
とにかく言えることは、俺が気がつくと、台座の上に置かれた俺がモーニングスターでモーニングスターが俺だった。
違う、別に入れ替わっているんじゃない。とにかく俺の意識がモーニングスターのなかにあるってことだ。そしてそれ以外のことは何にも覚えていない。元々の名前もどこの誰であったのかもだ。
手も脚もないし目もない。目もないのに、自分の意識がモーニングスターとその周囲に張り付いているって言うのかな、意識するだけで360度見る事出来るようだ。でも動くことは出来ないのね・・・・・・動けたら、いわゆるアニメート・ウェポンってものになるんだろうに。空中をふわふわと漂ってさ、出っくわした冒険者相手に襲いかかるんだ。
「アニメート・ウェポンが現れた!」って感じにね。
それはさておき。自分がどれだけ動けるのかの確認を続ける。どうやら、モーニングスターのトゲトゲだけは動かせるようだ。伸ばしたり、縮めたり。全部収納して丸坊主も可。
ってか、いちいちモーニングスターって言いにくいよな。略してモニスタで良くないか?どうせなら、モニ☆スタにするか、うん。
台座が置かれているのは、どこかの神殿っぽい感じの部屋だった。だだっ広い空間の周囲は、白亜の円柱が立ち並んで天井を支えている。天井は細かな、天使達のレリーフが彫り込まれ、あちこちに光るのは水晶か何かが埋め込まれているのだろうか。窓がない部屋だが室内はその光によって明るい。
床は良く磨かれた大理石のようだ。入り口はこの台座の反対側に、両開きの扉がある。もしかしてこれって、どっかのダンジョンにある宝物庫状態?
誰か取りに来るまで動けないのかよ~、つまらんな。
それどころか、俺の知識によると、大抵のゲームじゃ勇者は剣使うものであって、いくら攻撃力のある棍棒とか手に入れても、鞄とか倉庫の肥やしだと思うんだが・・・・・・なんで剣じゃないんだよ。俺、オワタ。
記憶がないのに知識があるってのも変だよな(笑)
とりあえずやることがないので寝よう。俺はトゲトゲを全部引っ込めて丸くなって眠りについた。