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名前の樹
まず全てが満ち満ちて
それから名前が出来て
すると樹が庭に在った
不思議に感じた子供に辞書を与えた
わざと、人と猿を互いに書き換えて
すると、ああ、なんということだろう!
あれだけ、愛嬌をふりまいていた幼子を
瞬く間に異質な剛毛が覆い、そして私も
急に立つことが辛くなって、庭に聳える
定義された樹へと走り出してしまった!
そして二匹のヒトはサルという名
を貼られ、与えられ、体現して、
鉄格子の中に息衝くこととなった
週末には家族連れに囲まれながら
地に、誰もが知らぬ間に落ちた辞書を、
今もまだ、風が優しく撫でているそうだ
コトバ、それ自体の管理を忘れたままに
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