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詩集<独白>  作者: インジュン
詩編(1)
85/95

剪定


繰り返される奇蹟の剪定。

無造作に投げられた肥料袋の中

目一杯に、名のかけらもない痩けた原住民。

命を表象した符号がうねる交差点。


ときおり霞むような速さで、伐採、

あるいは収穫をおこなう、交信中の仔羊の散瞳。

肥えた、戦禍で編んだスーツを着た逃げ惑う老いぼれと

その指からこぼれたショッポの吸い殻。


それを路地裏から見ている、右腕の欠けたわたし。

逆光と、けたたましい金切り声へと、

吸い殻だ、それでも袋詰めにはなりたくないと

駆け出したわたし。


街路樹の根にすわれる、希釈された葡萄酒、

黒ずんでひび割れたのどを濡らした奇蹟、

それは雑踏の腹いせにふんづけられる、血、

たしかになによりも赤かった、わたしの血。


時代の谷間に、憎々しいほどに拓けた青。

握りしめた指のように白むわたしの空へ、

誰かが投げ捨てた真っ白な包帯を巻いた右腕。

老人の煙草をしゃぶる、血統書つきの赤子。


嘲笑うように羽ばたきを繰りかえすカラスと

夢を貪られて吐瀉物にわらうゴミ袋。

それに群がる半世紀前の幻影たちだって、

ねぶるものをなくした胎児。


太陽を、生きとし生けるものすべてが一度は仰いだ太陽を、

貪るように劈いていく真っ黒なカラス。

誰もが縛られているコールタールの泉の洗礼名。

袋のなかから微笑みかけた骸を抱えた鏡の中。



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