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倦む
倦んだ日々へとひとときの幕をおろし
リビングのソファーに腰かけるわたし
とともに体が沈みと視界は黒色に沈み
さっき黒衣を垂らして隣に座った死神
はもっている鎌には一つの毀れもない
と自慢していたけれど今はもうテレビ
を付けていてでも何一つの言葉もない
電気代がと思わなかったわけではない
けれどそれは雨音と水漏れの音の違い
ほどのことだったしそもそものはなし
あのテレビがいつからあったかを思い
出そうとしてもそれは顔の蚤のように
自然とあるものだとどこからか声がし
たしかにと頷かなかったわけでもない
生命は海に浮遊することからはじまり
わたしも寄生虫もいるのだなとさとり
取り留めのないことばかり目を横切り
やはりどこまでも沈んでいけそうな気
がしたけれどもただの錯覚でしかない
とわかるころに丁度やってくる眠気に
欠伸したのはわたしだけだったらしい