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手を、どうすればいい、母よ
私が幼子を絞め殺したのは、
私に微笑んで向けた
瞳があまりに、
つぶらであったから。
薔薇が、ただ一輪の薔薇が、
赤く肉感に溢れていたのは、
あまたの同胞の、
血を啜っているから。
この心に掲げた理想が、
ただ一筋の誉れであるためには、
あの未熟な蕾を、
手折る他なかったから。
知ってはいけなったのだ。
あまりにも高すぎる純潔など、
たとえ額縁のなかであってさえ、
目に灼きついてしまったらば。
ましてそれが愛の、この身に受けた愛に埋もれた、かつての純白な羽根であったとしたら、母よ。私はあなたに何を手向けられるか。
冷たく弛緩した過去と、その返り血の通った手を、あなたへと差しのばさねばならないのか。